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Check Clip to Evernote 2013.09.20up

口コミで広がる“紡ぐ歌”浜田真理子のブレない曲作り

チャート1位になったような曲はない。テレビ番組でお馴染みの顔でもない。けれど、彼女のコンサートはいつだって彼女の歌を求めてくる老若男女で満員だ。そんなファンたちを前に、彼女は穏やかな笑顔と凛々しい佇まいでピアノに向かいながらたおやかに歌を綴っていく。ピアノと歌。ささやかだけど真摯な言葉と、出しゃばらないけど魂のこもったメロディ。それが彼女の“紡ぐ”音楽。そう、浜田真理子はそんなシンガー・ソングライターだ。

取材・文/岡村詩野 写真/渡邉よしこ

Profile

浜田真理子(はまだ・まりこ)
1964年生まれ、島根県松江市出身。現在も松江市在住のシンガーソングライター。学生時代からバー、クラブ、ホテルのラウンジでピアノ弾語りの仕事をはじめ、1998年に1stアルバム『mariko』をリリース。わずか500枚のプレスにも関わらず、一部のメディアで絶賛。口コミで広がり、完売&再プレス。2002年には、マネージメント事務所兼レーベル[美音堂]を設立、2ndアルバム『あなたへ』をリリースする。2004年にはドキュメンタリー番組『情熱大陸』にも出演、大きな反響を呼ぶ。その後、大友良英プロデュースによる3rdアルバム『夜も昼も』を2006年に、4thアルバム『うたかた』を2009年にリリース。2011年には資生堂・アースケアプロジェクトCMに「LOVE YOU LONG」を書き下ろすなど、テレビやCMでも話題となる。今年7月、5作目となるアルバム『But Beautiful』をリリースしたばかり。

公式サイト
http://www.beyondo.net/mariko/

Disc Data


浜田真理子「森へ行きましょう」


浜田真理子「Love You Long」

But Beautiful
『But Beautiful』
2013年7月24日発売
SFS-016/2,625円
美音堂

“叩き上げ”だからこそのやさしさと強さ

 島根県松江市出身。実家が経営していたスナックに小さい頃から出入りしていたため、歌が大好きな少女だった。大人になってからは地元のバー、クラブ、ホテルのラウンジなどで歌い続け、歌謡曲やジャズのスタンダードなどに幼少時から触れていた経験が生かされていく。そんな浜田が初めて自主制作でアルバム『mariko』の発表したのが98年のこと。34歳という決して早くはないアルバム・デビューだった。2013年は、口コミで徐々に評判になり、その1stアルバムから15年目という節目にあたる。

「本当にアッという間の15年でしたね。最初は誰のためというより自分のために歌っていたし、アルバムもたった500枚しかプレスしていなかったんです。でも、今のスタッフも含めて自分の歌を必要としてくれる方々に出会い、助けられて今まで歌ってこられた。周囲の人達のサポートがあったから今の自分があるんですよね。他人の歌を歌いたくないと思っていた時期もありましたしね・・・」

 穏やかな笑顔の中に少々の憂いを覗かせながらそう話してくれる浜田。彼女のこれまでの半生が実り豊かなものではあったとはいえ、決して順風満帆ではなかったことを伝えていた。彼女は歌もピアノも一級品。だが、大学などで専門教育を受けていないし、高校卒業後に歌手を目指して上京する意志を固めたものの様々な事情で諦めた過去もあるという。けれど、彼女の歌にはアカデミックな音楽教育を受けただけでは得られない、若い時分に東京に出て成功した者には持ち得ない彫りの深い情緒がある。うららかな歌を歌っていても秘めたる翳(かげ)りが滲み出る。“叩き上げ”だからこそのやさしさと強さがあるのだ。

「『あまちゃん』の“天野春子”と同じなんですよ(笑)。私は東京に出ていってはいないけど、やっぱり一度挫折している。音大とかにも行っていないからそのコンプレックスがないわけでもないんです。でも、その代わりに地元島根で色んな歌を歌ってきた。その経験がアルバムを出してからの15年間に出ていると思いますね。一時期はジャズのスタンダードを歌ったり、リクエストに応えたりすることにも反発して、頑にオリジナル曲しか歌わなかったりもしました。そういう気持ちがスゥーッと自然に薄れていったのは本当にここ数年のことです。大友良英さんとの出会いも大きかったですね」

 ここ最近は『あまちゃん』の音楽担当としてにわかに話題を集めるようになった大友良英だが、浜田とはもう10年以上のつきあい。浜田の音楽に魅了された大友のラブコールにより交流がはじまり、 大友プロデュースによる作品も作られた(2006年の3作目『昼も夜も』など)。大友らが主宰する東日本大震災の復興支援プロジェクト『プロジェクトFukushima!』のイベントに参加するなど、今も大友とは懇意だ。その『プロジェクト~』で2012年に披露した「はためいて」も収録されているニューアルバム『But Beautiful』でも、もちろんギターの大友、ベースの水谷浩章、ドラムの外山明ら仲間たちがバックアップしている。コントラバスと二人だけで仕上げた曲、ストリングスを取り入れた曲、アコーディオンがノスタルジーを喚起させる曲などなど1曲ごとのアレンジは秀逸だ。しかしながら、プレイヤーたちは達者揃いながらも、演奏自体はその技術に決して頼ることはない。奥床しく限られた音数の中で、ピアノに向き合う浜田が凛々しい歌と言葉をたぐり寄せるように重ねていく。

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