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トップ > 音楽 > 岡村詩野の、京都「音楽」歳時記 第3回
Check Clip to Evernote 2014.08.08up

東京で音楽ライター業をスタートさせ、現在は京都在住の岡村詩野がお届けする連載『京都“音楽”歳時記』。東京にいたからこそ見つかる、ホントの京都音楽シーンの面白さを徒然なるままにお届けします。
【岡村詩野】『ミュージック・マガジン』などの音楽メディアで活躍するほか、京都精華大学の講師なども務める。ラジオ番組『Kyoto Jumble Street』(KBS京都・日曜20:00~)のパーソナリティも。

本日休演、現在は4人で活動中

本日休演「すきま風の踊り子」

本日休演『本日休演』
2014年2月23日発売
1,200円/Miroku records
http://mirokuteki.thebase.in
http://honjitsukyuen.wix.com/qyen

ライブの様子

第3回 本日休演のお話

 東山通と今出川通の交差点、つまりは百万遍周辺を自転車で走らせると、独特のくすんだ薫りが鼻をかすめていきます。古本の焼けた紙の匂い、珈琲豆を粗く挽いた時の香ばしい匂い、数日間お風呂に入っていない体の汗臭さ・・・はさすがに最近は感じられなくなったけれど、それは、筆者が小学校くらいの頃から漠然と抱いていた京大生に対する憧れの薫りそのもの。中学生の頃にザ・ポリスの来日公演を見たくて入り口の目の前まで行ったものの恐くて中に入れなかった西部講堂、入学した者だけが住むことを許されるため、進々堂で買ったパンをかじりながら外観しか眺めることができなかった吉田寮・・・この中にどんなヒューマンなドラマが眠っているのか、今なお健在のそんな京都大学の象徴たる建造物の前を通るたび、胸熱な気持ちになります。

 そして時は2014年。そんな京都大学から新たな才能が誕生しました。“本日休演”という名前を冠したバンド。実に全員が現役の京大生です。京大出身アーティストと言えば、古くはジャズ・ミュージシャンの近藤等則、ボ・ガンボスの故どんとやDr.Kyon、00年代以降だとシンガーソングライターのゆーきゃん・・・といったところが思い浮かぶわけですが、今年春に自主制作で初のアルバム『本日休演』を発表した彼ら、京大軽音という由緒あるサークルの歴史をしっかりと受け継いだ上で、さらにコンテンポラリーな音楽として上書きしていこうとするモダニズムを持っているところが何よりの魅力。先頃ドラムのメンバーが脱退し、現在は在泉鯨(b&cho)、岩出拓十郎(g&vo)、佐藤拓朗(g&vo)、埜口敏博(key&vo)という4人で活動をしています。

 ドクター・ジョン、アル・グリーン、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、あるいはヴェルヴェット・アンダーグラウンド、スーサイド、トーキング・ヘッズ、初期アート・リンゼイ、ディス・ヒート、サン・シティ・ガールズ、あるいはウィルコやアーケイド・ファイア、大友良英や吉田達也のルインズなどなど様々な先達の影響を受けつつ、何にも屈することなく飄々とシームレスに音の隔たりをなくしていくようなその音楽性は、ファンク、ソウル、ブルーズ、フォーク、パンク、ニュー・ウェイヴ・・・などを柔軟に吸収してきた雑種性溢れる豊かな関西の音楽文化を実感させるもの。それこそ大学の先輩のどんとやソウル・フラワー・ユニオン、あるいは同郷京都のくるりらにも似た無骨さがどの曲からも感じられます。その一方で、ヒップホップやハウスにも寛容でクラブで大音量で音を浴びることも率先して楽しんでしまうような軽やかさもちゃんと兼ね備えています。そういえば、先日、京都メトロでこの本日休演のメンバーたちにバッタリ会いました。8月23日(土)には東京・代官山UNITで行なわれる『クラブ・スヌーザー』にシャムキャッツ、王舟と共に出演することも決定しています。

 吉田寮で一発で録音したという曲の数々は、国内最高学府の一つである京都大学の文化的側面の最新ページを今こそ塗り替えるものでもあると思います。と同時に、筆者は、日本の音楽文化に新たな息吹を吹き込んでくれるのでは・・・とかすかな予感もしているのです。


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