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トップ > 音楽 > 岡村詩野の、京都「音楽」歳時記 第5回
Check Clip to Evernote 2014.09.11up

東京で音楽ライター業をスタートさせ、現在は京都在住の岡村詩野がお届けする連載『京都“音楽”歳時記』。東京にいたからこそ見つかる、ホントの京都音楽シーンの面白さを徒然なるままにお届けします。
【岡村詩野】『ミュージック・マガジン』などの音楽メディアで活躍するほか、京都精華大学の講師なども務める。ラジオ番組『Kyoto Jumble Street』(KBS京都・日曜20:00~)のパーソナリティも。

ビルの1階にある可愛らしい看板、ここから階段で地下へ降りるとレコーディング・スタジオ[SIMPO]

愛されキャラのスタジオ・オーナー、小泉大輔くん。若いバンドマンたちにとっての良き兄貴分です

コンソールルームで作業中の小泉氏。プロトゥールズと向き合いながらも生の感覚を大事にします

録音で来訪したくるりご一行のサイン。「スタジオ“ちんぽ”様」とのサインに仲の良さがうかがえます

レコーディングに来ていた大阪を拠点に活動中のPURPLE HUMPTYの4人。実はもう結成8年目だとか

PURPLE HUMPTYのレコーディング風景。コンソールルームの窓から覗いたところ、リズム隊が本番中!

Studio Data

[music studio SIMPO]
住所:京都市中京区釜座通三条上る突抜町793
MAVIXビル B1
電話:075-212-3228
URL:http://studio-simpo.com

第5回 [SIMPO]のお話

 前回の更新から間が空いてしまいました。扁桃炎にかかり一時期は声が出なくなったのですが、その後もなかなか咳がおさまることなく、咳止めが手放せない日々が続いています。こないだまで猛暑だったのに突然涼しい日々が訪れるなど気候が何かと不安定な昨今、どうか皆様も季節の変わり目ですので、ご自愛くださいね。

 さて、前回の更新でご紹介した京都のレコード・ショップのお話、ありがたいことにあちこちで話題になりました。もちろん、京都のレコ屋がどこも商売繁盛でウハウハだ、ということを伝えたかったわけではありません。店長一人で仕入れ、買い取り、店番などあらゆる作業をこなしているところも多いように、ギリギリのところで続けているのが本音というお店もあると思います。ただ、それでも音楽好きの人々に未知の音楽との出会いをもたらし、レコードやCDを介して繋がっていきたいという思いから今日もまたお店を開ける、ということ・・・。音楽業界がいかに冷え込んでいても、再生の目処が見えていなかったとしても、こういう現場の熱気の粒が今の京都の町中に小さいながらもたくさんある、ということを知っていてもらえたら、と思うわけです。

 さて、そんな京都の音の現場が面白くなってきていることを別の角度から教えてくれるのが、中京区にあるレコーディング・スタジオ[SIMPO]です。ここのオーナーでありメイン・エンジニアは、京都出身のバンド・ママスタジヲのリーダーだった小泉大輔くん。くるりやキセルのメンバーと同世代の彼は、同じく立命館大学在学中からバンド活動を始め、そのポップ・センスが買われてメジャー・デビューしたこともある腕の持ち主ですが、録音の現場で音作りの作業に惹かれていくようになったことをきっかけにライブハウスなどで修行を重ね、ついに一念発起、2009年8月に自身のスタジオを立ち上げるに至りました。今年で5年を迎えます。

 ビルの地下1階にあるスタジオには、ドラムセットやスピーカー、アンプなどが置かれた録音ブースと、コンソール卓のあるメイン・ルームのみというコンパクトさ。小泉くんが自前で用意した機材やコンピュータ、ギターなどの楽器類が並ぶ様子はかなり雑然としているし、4人も入ればかなりいっぱいです。ただ、それだけに雰囲気はアットホーム。自宅スタジオで録音しているようなリラックスした空気が、利用者の緊張感を柔らかにしてくれます。

 これまで、片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティLOVE LOVE LOVE花泥棒など関西を拠点とする多くのバンド、アーティストが小泉くんを指名。アルバム『坩堝の電圧』などを共に制作した旧知の仲、くるりの岸田繁くんもフラリと立ち寄ることがあるのだそう。最近では、“平賀さち枝とHomecomings”による話題のコラボ・シングル「白い光の朝に」がここで録音されたほか、京都精華大学の現役学生でもある女性シンガーソングライター・中村佳穂さんの作品も小泉くんの手によって完成されました。そのバンドの個性を生かした音作りをいちサポートしてあげるだけでなく、困った時のちょっとしたアレンジのアイデア出しなども瞬時にサササっと出来てしまう小泉くんの引き出しの多さが、新世代の京都、ひいては関西シーンの底上げに一役買っているのかもしれません。

 場所は阪急・烏丸駅、市営地下鉄・烏丸御池&四条駅から歩いていける、市内のど真ん中にあるので、スタジオの前にはレコーディングにやってきた若い京都のバンドマンたちの自転車がよく止まっています。他府県からのアクセスも抜群とあって大阪のバンドもよく利用しにくるそうで、私がお邪魔した時は、大阪拠点の4人組、PURPLE HUMPTYがレコーディング中でした(この日録音した音源は11月に出す予定なんだとか)。また、5周年を迎えた今年、主にマスタリングを行なうための2軒目のスタジオをライブハウス[nano]と同じビルにオープン。音の鳴る現場と一体となった活動が今後ますます期待できそうです。

 実は私は小泉くんとはママスタジヲが頑張っていた時代からの付き合い。バンド活動がうまくいかなくなった時、これからどうしようかと本気で悩んでいる時を知っているだけに、やっと天職をみつけたなあと感慨深いです。今や京都の若手バンドのお兄さん的存在。録音のことがまだあまりわからないような若いバンドマンはぜひ[SIMPO]の扉を叩いてみてほしいものです。


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