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安藤裕子

「どこか茶化したいんです♪」ファニーなピエロ、安藤裕子

2013年に、デビュー10周年を迎えた安藤裕子。浮き沈みの激しい音楽業界で自らの信念を貫いて10年にわたり活動するのは、決して容易なことではない。順風満帆に見えた安藤裕子も、実はだいぶ疲弊していたようだ。1月にリリースされた8thアルバム『あなたが寝てる間に』の取材の冒頭、「すごく風通しのいいアルバムになりましたね」という言葉に、「あぁ、よかった、よかった」と笑顔で答えた彼女。“ファニーなおちゃらけた感じ”というニューアルバムについてインタビューしました。

写真/渡邉一生

Profile

安藤裕子(あんどう・ゆうこ)
2003年にミニアルバム『サリー』でCDデビュー。2005年には「のうぜんかつら(リプライズ)」が日本酒のTVCMソングに起用され、話題に。近年は、TVドラマ・映画への書き下ろし依頼も多く、ニューアルバムには、NHKドラマ10「全力離婚相談」主題歌の「人魚姫」をはじめ、大阪ガス ダブル発電CMソング「レガート」が収録。ソングライティングのほか、ジャケットデザインなどのアートワーク、スタイリングも自身で手掛け、マルチな才能を見せる。 昨年は、大泉洋主演映画『ぶどうのなみだ』で、デビュー以来となるスクリーン出演を果たしヒロイン役をつとめた。

公式サイト
http://ando-yuko.com/

Disc Data

『あなたが寝てる間に』

『あなたが寝てる間に』

2015年1月28日発売
CTCR-14840
3,240円
カッティングエッジ

「ダークな時代は“終焉の曲”を探していましたね」

──今回リリースされた8thアルバム『あなたが寝てる間に』。2014年のアコースティック・アルバムを挟んだからか、『勘違い』(2012年)や『グッド・バイ』(2013年)と比べて、すごく風通しのいいアルバムになりましたね。初期・安藤裕子にも通じるポップさというか。

そこはすごく意識していたんです。シンガーソングライターって、どうしても私小説になりがちだと思うんですね。24時間、自分と対話みたいな感じで、どんどん深みにはまりやすくて。自分が疲弊していくことも多かった時期に、東北の大震災があったり、その直後に祖母が倒れて、亡くなったり。さらに、自分も子供ができたなかで、次の作品は明るいものにしたいという思いもあったので。

──激動の2011年だったと。

そう。わたし、ずっと子どもが欲しいって言ってて。で、子どもができたことと引き換えに、おばあちゃんが死んじゃったという感覚になって。ずっとおばあちゃんに面倒みてもらっていたので、精神的によくない感じになってたんですよね、すごく死生観というか、重苦しい雰囲気の曲がすごく増えていって。


安藤裕子「森のくまさん-YouTube ver-」

──アルバム『勘違い』のジャケットの、ブラックスワンに象徴されるように、そういった楽曲が増えてましたね、明らかに。

そう。だから、自分も苦しいんですよ。そういうところに居ると。で、疲れちゃったなぁて。で、今回のアルバム制作に入るときに、ディレクターらと「明るい曲をやりたいよねー」って話をしてて。わりとホントに意識して、サウンド重視というか。ちょっとこう、心象を描くというところから離れたいなと。

──前作『グッド・バイ』のインタビュー時には、私小説的になって自分がどんどん重くなると同時に、そういった曲を歌ったときのリスナーとの繋がりは悦びもあるとも言ってましたよね。

もちろんあるんだけど・・・。あると共に、みんなの悲しみも感じてしまうから、沈んじゃうんですよね。自分の奥に。だから、体力が持たないというか(笑)。もうちょっとカラッとした、音の楽しさに触れたいなって。

──実はそれに近いことは、2010年のアルバム『JAPANESE POP』のときも言ってたんですよ。
※関連記事 「安藤裕子が見つけた“JAPANESE POP”」

そうですね。『JAPANESE POP』のときも自分の状態は良くなくて。それこそ、もう辞めようかなってくらい。だからちょっとサウンドはカラフルなものを望んでいたところはあったし。気持ちが沈んでいるわりに、音楽的にはいい曲たちが出来た感じがあったんですよね。自分もリスナーのように、“いい曲!”って泣きながら聴いたりしてたんですけど。

──旅行にも自分のアルバムを持っていく、とも。

そう。旅行は自分から離れたくて。全然知らない人に触れてみたいと思って、サンフランシスコにホームステイしたんですよ。でも、わたしはファミリーの中に入りたかったのに、ギリギリで申し込んだせいか、ホームステイをオーガナイズしているひとり暮らしのおばさんの家に引き取られてしまって。その人、昼間働きに行っちゃうし、つまんないとか思って(笑)。

──ファミリーどころか、鍵っ子だったという(笑)。

もう、全然鍵っ子! ひとりでバスに乗って、ふらふらして(笑)。そういうときにひとりで聴いてて。なんか、風景を見ながら自分に投射して、いい曲たちだなぁって思いながら、わりと聴いてたんですよねぇ。だから、自分の曲作りに疲れ切ってたのが、2010年の『JAPANESE POP』くらいからですね。

──で、激動の2011年がやってくる。

そのあたりから、自分の終わりの曲を探している感じが強くて。今回のアルバムに入っている「都会の空を烏が舞う」は、『グッド・バイ』の頃に作ってるんですけど、まさに死がモチーフなんですよ。自分がみすぼらしく朽ちていく様が、自分の中で心地よく感じるときがあって。どこか嘲笑して眺めているような感覚というか。そういう、“終焉の曲”を探していましたね。疲れ切っちゃってたんだろうけど、ダークな時代といえば、ダークですね。『勘違い』とか『グッド・バイ』に収録されている曲は、やさしい曲が多いんですけど、静かに死んでいくみたいな感じになってたしね(笑)。

──そういうダークな時代を経て、今回の『あなたが寝てる間に』でそこから抜けることができた、と?

そうですね。ようやく抜け出るというか。もう、そういう暗いところから抜け出たいと。

──では、今回のアルバムはどこから曲作りを?

まず最初にやったのが、「Live And Let Die」。心も身体もだるい、そこから抜け出したいなという感じがすごくありましたね。で、それを目指して作ったのが「Live And Let Die」で。ディレクターが、ファレルの「Happy」みたいな曲にしようって。3人(安藤裕子、アレンジャー・山本隆二、ディレクター)でプリプロルームで聴く、みたいな(笑)。意外と音数少ないねぇ、とか言いながら。解体して、リズムトラック作って、サビから音を積んで作っていくみたいな。

──いわゆる、私小説的な作り方とは違う?

自分から出てくる言葉だから、最終的にはわたし自身に間違いないんだけど、わたしの中にも表面のわたしと、S状結腸くらい深いところから引っ張ってきたわたしがあって。同じ安藤裕子でも、やっぱり大きな違いがあって。ホント、耳ざわりの良さを中心に制作してました。と言いつつも、とってもシニカルな感じにはなってしまったけど(笑)。

──これをきっかけに曲作りは進んでいったんですか?


安藤裕子「人魚姫」

そうですね。4曲目「RARA-RO」も「明るい曲作ろうシリーズ」のモードの中で作りましたね。車を運転してたら出てきたんですよ。映画『怪盗グルーの月泥棒』に出てくる、バナナ人間(ミニオン)って分かります? あれがいっぱいスカダンスしながら、わたしに迫ってくるという映像のもと、運転中に曲が浮かんできたんです。バナナがふよふよ迫ってくるイメージだったのに、歌詞の重みもあってか、わりとロックになりましたね。

──全体としてはどうなんですか? アルバム通してのトーンというか。

最後に帳尻あわせをするのはいつも変わらないですね。でね、ジャケット・デザインはいつもわたしの担当なんですけど、その作業のときに、作品全体を俯瞰するんですよ。この前の『グッド・バイ』は、ホントに自分が消え入るような静かさを感じていたし、タイトル通り、このまま辞めてもいいかなって気持ちもどこかにあったんですね。でも今回は、やさしい曲も含めて、曲の輪郭がそれぞれハッキリ見えていたので、その元気の良さをファニーに作りたいなって。ジャケットも、“ファニーなおちゃらけた感じ”が出てると思うんだけど、わりと自分も楽しんでますね。

──その“ファニーなおちゃらけた感じ”って、イコール、安藤裕子ならではのポップさだと思うんですよ。初期の作品では、それが前面に出てましたし。

どうなんだろう。デビューする前に「ピエロでありたい私のために」という詩があったんです。「隣人に光が差すとき」のPVで最後に読んでるんですけど、そう、ピエロになりたいなって思ってたんですよ。曲を作り始めた頃って。辛辣な言葉なんだけど、それを「バカじゃないの?」って茶化したいというか。

──なるほど、茶化したいと。

そう。どこか茶化したいんですね、悲しい曲も。そもそも、そういうスタイルがわたしの根本にあるんですよ。2ndアルバム『Merry Andrew』(2006年)もピエロがテーマだし。ジャケットもタイトルも、道化者みたいな。その後の『shabon songs』も。たしかに、そういう茶化すということが全面にあったんだけど、4thアルバム『chronicle.』(2008年)あたりから、心象に深く入る曲作りが増していきましたね。

──単純に戻ったというわけではないですが、いろんな経験を経て、初期に近い手ざわりのアルバムになったなと。

そうですね、そうそう。だいぶフラットな状態に戻ってはいますね。

──で、アルバムを携えてのツアーも大阪[森ノ宮ピロティホール]を皮切りに、3月からスタートします。約1年半ぶりとなるバンドツアーですが、どうなりそうですか?

わかんない、まだやってないから(笑)。バンドでやるとなると、新たにメンバーを集結する感じなので、みんなでリハを重ねる中で答え探しをしていく感じですね。だから楽しみに待っていてくださいね。

Live Data

『安藤裕子 LIVE 2015 「あなたが寝てる間に」』

日時:3月22日(日)・18:00~
会場:森ノ宮ピロティホール
料金:5,800円(全席指定)※3歳以上チケット必要、3歳未満入場不可
電話:0570-200-888(キョードーインフォメーション/10:00~18:00)
URL:http://www.kyodo-osaka.co.jp/

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