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Check Clip to Evernote 2011.07.27up
進化するプリミティブ、藤本一馬のソロ作。

関西発の人気デュオ・orange pekoeのギタリスト兼コンポーザーとして、数多くのジャジーで洒脱な名曲を放ってきた藤本一馬。6月にリリースされた初のソロ名義作『SUN DANCE』は、岡部洋一(打楽器)と工藤精(b)という2人の名手を迎え、アコースティック・ギターを手に全編インストで独自の音世界を自由に繰り広げたアルバムとなった。硬質な現代南米ジャズを思わせる、25分以上に及ぶアッパーなグルーヴで圧倒する大曲から、フォーキーなハワイアン、アーシーなカントリー~ブルース調まで。ギタリストとしての才を存分に発揮した彼に話を訊きました。

Profile

藤本一馬
(ふじもと・かずま)
ギタリスト、作曲家、サウンドクリエイター。兵庫県宝塚市出身。1998年、ナガシマトモコとorange pekoeを結成。2002年にメジャーデビュー。翌年発表された1stアルバム『Organic Plastic Music』は30万枚以上のセールスを記録。その後も、様々な音楽を独自に昇華したサウンドで高い評価を獲得。現在では、ニューヨークや韓国など、海外へも活動の幅を広げている。2011年6月8日には藤本一馬名義の初ソロ作『SUN DANCE』を発表した。
http://kazumafujimoto.com/

──ソロ名義では、今回の『SUN DANCE』が初のアルバムになりますけど、実はorange pekoeで『Grace』(2005年)を出した頃からソロを作ろうという動きはあったそうですね。

「そうなんですよ。『Grace』を作っていた頃からソロもという考えはあって。その頃にorange pekoeのレコーディングやツアーに参加してくれていたジャズ・ベーシストの杉本智和さんと2人で、連名でライブもやったりはしていたんですけど、なかなか定期的に活動を続けるところまではいけなくて。で、2009年に『Crystalismo』を出した後に絶対にソロをやると決めて、ちょうどその時のツアーに参加してくれていたのがパーカッションの岡部洋一さんとベースの工藤精くんで、2人に相談してトリオでソロを作っていくことになったんです。2人とも素晴らしいプレイヤーで、触発される部分も多かったので」

──じゃあ、結果的にかなり長い時間をかけて一馬さんのなかで練り込みながら、ようやくカタチになったソロでもあったというか。

「そうですね。曲も5~6年前にすでに作っていたものから最近にできたものまでと、実は幅も結構ありますし。でも、今回のアルバムのサウンドが完全にイメージできたのは、ソロをやると決めた2009年くらいで、それ以前はまだ明確にコレだというモノが見えるところまでは行けていなかったのかもしれないですね。で、去年の5月に渋谷のJZ Bratでトリオでライブをやったのが実質的なスタートで、11月にレコーディングをしてと・・・カタチにしていくのにも時間がかかりましたけど、結果的にいいタイミングで出せたと思います」

──なるほど。だから、片手間にソロもやってみました的なレベルのものとは、まったくクオリティが違う作品になってますね。

「ありがとうございます。本気感というか、これからもパーマネントに(ソロ活動も)続けていこうという意志を持って作っていったアルバムなので」

──でも、orange pekoeの一馬さんしか知らない人は、最初は驚くでしょうね。曲作りに関しても、完全にインストゥルメンタルということでorange pekoeとは根本的に違う感覚で臨んだものでしょうし。

「やっぱりorange pekoeではまずボーカルがあって、それを引き立てたりサウンド全体を見るのが自分の役割なんですけど、ソロでは自分がフロントに立って、存分にギターを弾くというのがコンセプトでもあったので。なおかつ、orange pekoeでは僕が作った曲にナガシマが歌詞を付けて歌うことで、彼女の言葉によるメッセージが強く反映されるんですけど、今回は僕が曲のタイトルなども含めて最後のところまで、自分が日々に思っていることだったり個人的に感じていることを綴っていく作り方だった点も違いましたね」

──そうですね。インストなので言葉を伴ってダイレクトには表現されていないんですけど、曲ごとの本人解説を読むと、メッセージ色が強いというか。現代の生活に対する疑問などが曲のバックボーンにあることに、少し驚かされました。

「そうですね。僕も毎日いろんなことを考えていて、例えば、この今の日本の生活がすごくいい状況だとは僕には思えなかったりするし、異常なまでの数の車が走っていて大丈夫なんだろうかとか…。ただ、だからこうしなきゃいけないなどということを僕から明確に発することもできず、うまく言葉にできないモヤモヤとした気持ちを音楽で表現する、というのが曲を作る動機になっていることが多いんですよね」

──特に、ネイティヴ・アメリカンの生活哲学や自然と向き合う上での考え方などに大きく共鳴したところから生まれた曲が多い点が印象的でしたけど。

「ネイティヴ・アメリカンの人たちの暮らしや考え方の中に、すごくヒントがあるように思ったんですよね。北山耕平さんの本がすごく好きで、ネイティヴ・アメリカンに限らず“ネイティヴ”という切り口で、日本の古代に住んでいた人たちも自然に対して同じような考え方を持って、同じような生活をしていたということも書かれていて。ネイティブジャパニーズに想いを馳せることで生まれた曲もありますし、僕にはナガシマのように言葉で喚起する才能はないので、インストが合っていたんだと思います」

──サウンド的には、バーデン・パウエルからエグベルト・ジスモンチあたりまで至るブラジル音楽、ジャズ、カントリーやブルースまでと多彩な要素が感じられる作品ですが、どこかサーフ・ミュージックに通じる心地よさもあって。そこは最近に葉山に移住して、サーフィンをやったりされていることも無関係ではないのかなと思ったんですが。

「サーフィンをしていると、気が付くと日が暮れるまで半日くらい海の中にいたりすることもあるんですけど、そんなに海とたわむれることってなかなかないじゃないですか? そこまでガッツリ自然と戯れていると、気分のリフレッシュのされ方も半端じゃなくて、疲れるよりも元気になるんですよね。そこでも自然の持っている力の凄さみたいなものを感じますし、人間も自然の一部ですから、音楽もある意味で自然の織りなす産物だと思うんですよね。やっぱり、すごく集中して演奏している音楽を聴くと、それと似たような感覚がありますし、自分の音楽もそういうところまで近付けるように・・・と言うとおこがましい話ですけど(笑)、そういう気持ちは持って、これからもチャレンジしていきたいとは思っていますね」

──最後に。今後のライブの予定などを聞かせてください。

「ソロでは、9月にアルバムの録音と同じトリオで関西でもライブをする予定です(※取材後に、9月10日に大阪・ダイニングカフェ+雑貨 martha、11日に姫路・HUMMOCK Cafeでのライブが決定!)。その他に、orange pekoeで10月ごろに去年に東京でやって好評だった18人編成のビッグ・バンドを伴ってのライブを大阪でも実現できそうですし、その後にはデュオ・ツアーというのもやろうと思っています」

取材・文/吉本秀純 写真/バンリ

Disc Data

『SUN DANCE』

2011年6月8日発売
DDCB-13018
2,800円
バウンディ
http://www.boundee.jp/


国境やジャンル、さらには時代までを超越し、自然からのインスピレーションをもとに制作された初ソロアルバム。人力トランスバンド・ROVOなどで活躍する岡部洋一、ジャズシーン屈指のプレイヤー・工藤精を迎えてトリオで作られた。ジャズからワールドミュージックまで、幅広い音楽エッセンスを湛えつつ、ネイティブアメリカンの儀式にインスパイアされたという「SUN DANCE」など、初ソロにして会心の仕上がりとなった全8曲を収録。

Live Data

「藤本一馬 "SUN DANCE" 関西・中国ツアー2011」

出演:藤本一馬(g)、岡部洋一(Per)、工藤精(b)

【大阪公演】
日時:9月10日(土)・19:15~
料金:前売3,500円、当日4,000円(要別途飲食費)
場所:ダイニングカフェ+雑貨 martha
(大阪市西区江戸堀3-8-16)
※チケットはfish for music(info@fish-for-music.com)まで
【兵庫公演】
日時:9月11日(日)・18:00~
料金:前売3,800円、当日 4,000円(1ドリンク付)
場所:HUMMOCK Cafe(姫路市的形町的形磯1864)
※チケットは079-254-1400(HUMMOCK Cafe)まで
http://hummock.blogspot.com

関連サイト

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