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Check Clip to Evernote 2011.09.22up
『モテキ』に見る・・・童貞・サブカル・映画!

目下、熱狂的な盛り上がりを見せている『モテキ』。モテない男子に突然モテ期が来てワッショーイ! な、オバカ話かと思いきや、この(一部の)異常な加熱っぷりから察するに・・・どうやら、ただのドタバタ・ラブコメじゃないみたい? 映画版の公開を目前に、やたらと鼻息の荒い野郎(主人公と境遇が似すぎの、32歳・童貞系・サブカル好き映画ライター:田辺ユウキ氏)が「これは“俺”の映画だゼ!」と声高に名乗りをあげた。では説明してもらおうじゃないか、童貞が観ても、サブカル好きが観ても、映画人が観ても納得の『モテキ』の魅力っていったい何だ!

まずは押さえておきたい。
セカンド童貞
いったんは脱チェリーを果たしたものの、次の女性経験までの期間が長く続いている状態のこと。
ナタリー
音楽を中心としたポップカルチャーを扱う、実在のニュースサイト(ただし劇中に登場するオフィスは、美術セットだとか)。主人公・幸世はここにニュースライターとして就職する。劇中では墨さん(リリー・フランキー)が編集長。
リア充
現実の世界で充実した生活を送っている人のことを指す。映画の中にもたびたび台詞として登場。
『進撃の巨人』
人喰い巨人と人間の激闘を描いた諫山創の漫画。2011年「このマンガがすごい!」第1位に輝く。
『俺はまだ本気出してないだけ』
「体は中年、心は中2」な漫画家志望のダメ中年(とその家族)の奮闘をオフビートな笑いで描く、青野春秋の漫画。
『ランニング・オン・エンプティ』
彼女が誘拐されてもマイペースなゆとり世代の青年の青春を追う、佐向大監督の2010年公開映画。
岡村靖幸
男のモラトリアムな部分を鋭く突く世界観と、甘くて軽快なメロディーセンスで「天才」と称されるミュージシャン。
ももいろクローバーZ
アクロバティックなダンスで人気のアイドルグループ。真利子哲也監督『NINIFUNI』に出演するなど映画界でも注目株。
『友達じゃがまんできない』
音楽家の前野健太が作詞作曲した傑作ソング。「あなたの恋人になりたい」という歌詞が物語とシンクロしてグッとくる。劇中歌として登場。
ガールズバー
カウンター越しに女性店員とおしゃべりを楽しむバー。キャバクラに及び腰な草食系男子にとってお手軽な場所。
セカチュー
難病に侵された少女と、彼女を愛する少年の悲恋を描いた行定勲監督の大ヒット作。
  • 俺に語らせろ!童貞的観点で観る『モテキ』

    俺がなぜ、映画『モテキ』を熱烈に愛しているのか。それは、主人公のセカンド童貞、藤本幸世・31歳(森山未來)への共感が人一倍強いからだ。いや、もはや幸世=俺と結びつけても異論はないだろう! ナタリーの新入社員なのにエンタメ業界人を気取っちゃうところや、Twitterでの膨大なつぶやき数に反してフォロワーが3人という影響力・発信力のなさなど、劇中エピソードに思い当たるフシがいくつもある。でも、まぁ自分で言うのも何だが、俺は決してモテないわけじゃない。合コンで知り合った初対面の女子を何度となく自宅へお持ち帰りもした。んっ? 「なんだお前、リア充じゃん」って? いやいや、ところがそこからが童貞系男子の非力さよ。本作前半、美女・みゆき(長澤まさみ)と飲みに行った幸世も、「『進撃の巨人』がさぁ~」などツウな話題で盛り上がり、お持ち帰りに成功する。だけど、手をつないでキスをして胸まで触り・・・とイイ歳した大人なら絶対にヤレちゃう流れで、その先へ進むことができない。確かにじれったい。実はこのエピソード、俺の25歳の頃の思い出とまったく同じなんだよ! 何なら、家にやってきたみゆきが「Tシャツとハーフパンツ貸してくれる?」と部屋着に着替えるところまで一緒だよ!! もはやコレって俺の自伝映画?

    そもそも俺たち童貞系男子は、優しさと意気地のなさをはき違えて生きている。押し切れば相手をオトせる状況なのに「俺はこのコを大事にしたいんだ」とか変なところで器のデカさを発揮しちゃって静観、結果何もできないのがお決まりパターン。要は臆病なだけ。告白すらロクにできない。だから、確実にヤレちゃうような状況でデキずじまいな幸世のダメさ加減を、俺はよ~く理解できる(で、後日、相手のコに「男として見れない」とフラれちゃったっけ・・・)。フツーの男は(と線引きするところが、いかにも童貞系臭い!)きっと女の子を上手にモノにしてきたはず。でも『モテキ』に心底共感を得る童貞系男子はそうじゃない。ほんの少しの勇気が足りなくてチャンスを逃し続け、「あのとき、ああしておけば・・・」と後悔が抜けきらず、何年も悶々としている者たちなのだ!

  • 俺に語らせろ!サブカル的観点で観る『モテキ』

    コミックやドラマ同様、映画版『モテキ』も多種多様なサブカルチャー・ネタが散りばめられている! まず目を引くのが冒頭。散らかった部屋に寝転がる幸世の頭上にチラッと見えるのが、モラトリアムな童貞系のバイブル、青野春秋のコミック『俺はまだ本気出してないだけ』だ。40歳を過ぎてリストラされた中年バツイチ男が漫画家を志し、厳しい現実に跳ね飛ばされながらも「まぁ、本気出してないし」と中2病的なことを言いながら人生の再スタートに挑む物語。恋や仕事に対して言い訳ばかりの幸世そのもの! さらに、上司の素子(真木よう子)に「しっかりしろ」と叱咤された幸世が、ラストでみゆきを追いかける重要な場面がある。その展開や構図は、映画『ランニング・オン・エンプティ』を想起。サブカルに対するセンサーが鋭い大根仁監督だけあって、このミニシアター系の隠れた快作にも影響を受けているかもしれない。
     そして『モテキ』の世界観に大きな影響を及ぼしているのが、 岡村靖幸の音楽。ドラマ第4話で流れた「はっきりもっと勇敢になって」しかり、岡村ちゃんの歌は、好きなコに向き合えない幸世のメンタルそのもの。映画でも「あの娘ぼくがロングシュートを決めたらどんな顔するだろう」がハイライトのひとつとして使用されている。みゆきのTwitterのタイムラインを細かくチェックし、知らない男とのツーショット写真を見つけた途端「俺なんか太刀打ちできない・・・」と恋をあきらめようとする幸世。男なら、好きなコの前でロングシュートを決めて自分をアピールするもの。

     

    しかし幸世のようなイマドキの草食系男子はシュートすら打とうとせず、すぐあきらめモードに入っちゃう。映画を観ていると、岡村ちゃんの歌うラブソングがひと昔前の恋愛模様のように聴こえて、ちょっと切なくなる。そのほか、各分野で熱視線を浴びる ももいろクローバーZの「走れ!」を、幸世が動画サイトで聴いてテンションを上げたり、前野健太の珠玉の名曲をナキミソがカバーした「友達じゃがまんできない」が、みゆきとの曖昧な関係に悶える幸世の苦悩を表現していたり。サブカル系音楽の数々が『モテキ』のストーリーを絶妙に形作っている!

  • 俺に語らせろ!映画的観点で観る『モテキ』

    「童貞」「サブカル」という偏り気味なテーマが敷かれているが、しかし映画的な深みもきっちりと織りこまれているのが、本作のスゴイところ。たとえば、女性のリアルな心情を映し出した点。ドラマ版は、モテ期を経験した幸世が男としてどのように一皮むけるかに焦点を絞り、自己完結的な意味合いも強かった。しかし映画版は、幸世を囲むヒロインたちの「女の幸せとは何か」にまで話が広がる。女性には出産という大仕事がある。そして歳を重ねるごとに、出産に対するプレッシャーは重くのしかかる。だから、仲里依紗演じる★ガールズバーの店員・愛の「女にはリミットがある」という言葉が、映画版『モテキ』でもっとも重要になってくる。幸世にとって周りの女性たちは、モテキというアバンチュール期間のなかのひとり。しかし女性たちにとっては、幸世とて自分を幸せにしてくれる可能性を秘めた、人生のキーマンなのだ。そういった妙齢女子の生々しい問題が、現実的な視点で語られている。また『モテキ』は、恋愛映画としても秀逸。森山未來、長澤まさみが共演した ★セカチューこと『世界の中心で、愛をさけぶ』など2000年代の日本の恋愛映画は、男女が互いに肩を並べて毎日を過ごすのではなく、どちらか一方が先に行(逝)ってしまう物語が多かった。

    だが『モテキ』はそうではない。なんたって主人公は、約30年間彼女ナシ、生まれたときからロンリー・マンだ。そんな彼が女性と一緒に人生を歩もうと必死になっていく。自分のもとから走り去ろうとするみゆきをしつこく追いかけ、しがみつこうとする。往生際は悪いし、格好良くもない。でも、好きな人になんとか追いつこうとするその情熱は、ケータイ小説の映画化など邦画バブル期に量産された恋愛映画とは違う、新鮮でパワフルな印象を与える。そう、『モテキ』は、男女が並び立って毎日を送るすばらしさを、現代に改めて伝える作品でもあるのだ!

文/田辺ユウキ

Movie Data

『モテキ』

TOHOシネマズ梅田ほかにて
2011年9月23日(金・祝)公開

監督・脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ「モテキ」
出演:森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、
仲里依紗、真木よう子ほか
配給:東宝

モテない男に、突然モテ期がやってきたら・・・? 世の男たちに勇気と希望を与え、180万部を超えるセールスを打ち出した神的コミックス『モテキ』(久保ミツロウ/講談社イブニングKC)。テレビドラマ版も話題の本作から、原作者・久保ミツロウの書き下ろし&完全オリジナルストーリーによる映画版が登場! 恋愛偏差値の低い男(金なし・未来なし・31歳)に、突然訪れた夢のような展開。美女からの意味深なアプローチで、翻弄されたり、妄想したり、成長したり(しなかったり)。果たして本当の恋愛(と、H)に辿り着くことはできるのか?

©2011映画「モテキ」製作委員会
http://www.moteki-movie.jp

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