渋谷すばる×歌×味園、山下敦弘監督が撮る「大阪の映画」
俊英・山下敦弘監督が大阪を舞台に撮り上げた映画『味園ユニバース』。主演は関ジャニ∞の渋谷すばるに二階堂ふみ。渋谷のうたう魂の“歌”をモチーフに、猥雑だがエネルギッシュで、どこか一本気な物語が展開されていく。山下監督が学生時代から敬愛するエンタテインメントバンド・赤犬も全編に絡み、山下監督にしか撮れない大阪がここに生まれた。
取材・文/春岡勇二 写真/渡邉一生
「大阪で映画を撮るのをずっと避けてきた」(山下監督)
──山下監督らしい、ちょっと風変わりだけれど、とてもシンプルで映画的な面白さにあふれた作品に仕上がりましたね。
前作『超能力研究部の3人』が、あれはあれで楽しんで作ったのですが、いわば極端な変化球だったので、今回はストレートに劇映画をやろうって気持ちで仕事に臨みました。
──大阪、味園ユニバース、歌、渋谷すばる、二階堂ふみ、そして赤犬、と。大阪の映画ファンが泣いて喜ぶ要素がてんこ盛りの作品ですが、もともとはどこから立ち上がった企画だったのですか?
プロデューサーの方から、関ジャニ∞の渋谷すばる主演で、音楽を絡めたオリジナル作品を撮らないかというお話をもらったのが始まりです。彼がすごい歌い手だというのは知っていたので、渋谷くん主演で歌を生かすなら大阪を舞台にした物語かなとすぐに浮かんだのですが、実は僕は大阪で映画を撮るのをずっと避けてきたので、ちょっと躊躇したんです。
そうしたら、ちょうどその頃、赤犬のリシュウさんと『釜山映画祭』でたまたま会ったりして、「そうか、大阪で音楽映画を作れば赤犬に出てもらえるんだ」という考えが頭をよぎって、今がいいタイミングなのかもと思ったら、作品の空気感というか全体像が漠然と見えてきて、いけるかもって思ったんです。
──赤犬とは旧いお付き合いなんですよね。
僕は学生時代から10年ほど前まで大阪に、新世界の方に住んでいたんです。そのころ、今回も使わせてもらった「ラブラボ」っていう音楽スタジオとかで練習している赤犬を見に行ったりしていて、よくわからない人たちだけど面白いなって話させてもらったりしていたんです。
──監督の大阪芸大卒業制作作品『どんてん生活』の音楽も赤犬ですものね。
そうです。学生時代から言うと、今回音楽を担当してもらった、あらかじめ決められた恋人たちへ(池永正二を中心とする音響ユニット)の池永正二くんもその頃から知っていて、大阪にいたころは自分の周囲にも音楽が普通にあったなって今回改めて思いました。
──これまでどうして大阪での映画作りを避けてきたんですか?
なんなんでしょうね。ひとつには阪本さん(阪本順冶監督)が新世界を舞台にした面白い作品をたくさん撮られていることかな。井筒さん(井筒和幸監督)もそうですよね、『岸和田少年愚連隊』とか大好きですし。そこに引きずられるのが怖いというのがあったのかもしれません。
もうひとつは、大阪にいた頃、すごい低予算で映画を作ることになって街の人に協力を呼びかけたら、僕らを助けてやろうと大勢の人が集まってくださって、その勢いに僕らが呑まれちゃったんです(苦笑)。なんとか映画はできたんですが、大阪で撮るには自分の力不足を思い知った経験でした。
──なるほど。でも、今回の映画では、誰にも引きずられていない、山下監督ならではの大阪が見事に切り取られているように思いました。
実はプロデューサーと脚本の菅野(友恵)さんと3人で、2014年の頭かな、シネハン(シナリオ・ハンティング)したんですよ。あべのから天王寺、西成、ジャンジャン横丁とか含めて難波あたりまでぐるぐる回って。「スーパー玉出」とかに連れていって「すごいでしょ」なんて言って(笑)。リヤカー引いてるおじさんは必ず犬を連れていて、家族として犬に普通に話しかけてるとか説明して。
さらに、今でも飛田から少し奥の方に行くとピリピリする気配がしたり。そうやって、ぶらぶら小路を眺めながら歩いていたら、自分の中から記憶と言うか、かつての感覚みたいなものが出てきたんです。それを菅野さんにうまく採りこんでもらって。
──シネハンで回られてみて、他になにか思ったこととかありますか?
大阪には歌が合うってことですね。天王寺動物園の前に行ったとき、「青空カラオケ」ていう看板出して、レーザーカラオケでがんがん歌ってるおじさんやおばさんがここにいたよなって。着物着て、ビールのロング缶持って(笑)。今回映画にも使わせてもらったんですが、大正区に「K2」ていう歌声喫茶みたいなお店があって、そこでは昼間からおばちゃんたちが歌っていて、それをタクシーの運転手さんが仕事サボって観ていたりする。
こういうのって東京にもあるのかもしれないけど、あまり見ない。でも、大阪は普通にある。あと、ロケ中に釜ヶ崎の三角公園近くにスタッフと飲みに行ったら、めちゃくちゃ安い立ち飲み屋さんなんだけど、奥に立派なステージのあるお店があって、「ここにまで音楽があるのか」って。あれはちょっと感動しましたね。
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