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よう知らんけど日記。 東京で暮らす小説家・柴崎友香が大阪弁でぼちぼち綴る、日々のあれこれ。「よう知らんけど」は、関西人がさんざん全部見て来たかのように喋った最後に「絶対にそうやって!……よう知らんけど」と付けるアレですよ。
第99回 ドキュメンタリーが好き。

3月☆日
今年1年間、『共同通信』にドキュメンタリー番組のレビューを書いています(共同通信が配信する記事を利用している新聞に載ります)。もともとドキュメンタリー好きやねんけど、新聞のテレビ欄ということで、地上波+BSのみ、CSやWOWOW、テレビ東京など限られた人・地域しか見られない局は除外。NHKを1回取り上げたら次の回は他局(NHKばっかりになるからね)というルールがあるので、今まで見てなかった番組も録画したりして見てる。せっかくなので、記事で紹介できなかった番組を。『ザ・ノンフィクション 「上京物語」~その後 ボクと父さんの8年)』(フジテレビ)。沖縄でお父さんと2人で暮らしてた18歳の男の子が、東京で鮨職人の見習い修業をするのを追ったシリーズ。大きなチェーン店で住み込みで仕事しながら勉強する、そういうのがあるんやねえ。この男子、コミュニケーションが得意じゃない、無口で、気弱なタイプ。いかにも要領よさげな後輩になめられて、そのことでさらに上司に怒られてしまう、とか、ああ、こういう子おるよなあ、こういう子がほんまはいい人生になってほしいねんけどなあ、と思いながら見る。この番組では、この男子を何年かにわたって取材してて、この日が放送3回目やったんかな。途中で、子供の頃に別れたきりのお母さんの居所が分かる。近所の人づてに番組を見たらしいと連絡が入る。突然お母さんを訪ねていって、15年ぶりの会話をするのとかすごくいいねんけど(しかも場所は沖縄の海辺やし)、お父さん、突撃で訪ねていくし仕事続かへんみたいやし、ちょっと大変そう……。そして、東京に出て4年、5年と経ち、男子は仕事のほうも困難の連続。「職人」て無口でもいいイメージがあるけど、お客さん商売なのでもっとコミュニケーションとれないと続けられないと、上司から辞めるのをすすめられたり。なんでもコミュ力やなあ、世知辛い……。そうこうするうち、突然、ニューヨーク勤務の話が。一方でお父さんは仕事を辞めて家も立ち退きの危機。どうなるのー、と思ったら半年後、男子は名古屋の店で、お父さんは福島で働き始めた、というところで終わり。あまりに不器用な親子の姿がそのままとらえられてたのもよかったし、海外に店もある鮨店がこういう世界もあるんやなあ、となんかおもしろかった。続編はあるのやろうか。

3月☆日
ドキュメンタリーもう1本。『BS世界のドキュメンタリー』枠で放送された「母と私」(BS1)。台湾の女性監督が自分の母親との関係を追ったドキュメンタリー。中学生くらいから母子家庭で育ってんけど、お母さんが同性愛者を公言してる。女性監督は自らもシングルマザーになって母と娘と暮らすことになり、ずっとぎくしゃくしてきた母との関係を見つめ直す。このお母さん、見た目はちっちゃいおっちゃん系なんやけど、めちゃめちゃモテる! 歴代の恋人がインタビューに答えてるねんけど、みーんな美人! そして、あの人はこんな事もしてくれたあんな事もしてくれた、と甘々エピソードの連発(取材していた娘、微妙な気分なのでは……)。
ここまで見た限りやと台湾では同性愛はわりに受け入れられてるのかなと思ったけど、やっぱり世代で全然違うようで、実家に取材に行くと、母の兄弟たちはそのことについてはとにかく話を避ける。そして、兄弟の薦めによって嫌々結婚した夫(監督の父親)によってひどい暴力を受けていたことがわかってくる。このお母さんにとっては、同性愛での差別より、夫に暴力を受けていたことを恥だと思う気持ちが強いみたいで、さらに女性監督も父親から暴力を受けていたと打ち明けるところはほんまに胸が痛んだ。人が生きていくって難しいな、それぞれが、自分らしく生きていけたらいいのに、と思わずにいられへんかった。あと、このお母さんの仕事が、お葬式の盛り上げ劇団(中国は泣き女とかいるよね)なのも興味深かった。

3月☆日
民放の夜中や週末にやってるドキュメンタリー、もともとちょいちょい見てるんやけど、妙に印象に残ってるのがある。お母さんが出て行って、お父さんが息子2人か3人と暮らしてるねんけど、かなりほったらかしで、家は散らかり放題、中学生の長男がカップラーメンを弟たちに食べさせてる。そして3回目の放送(これがわたしが見た回で、途中までは今までの振り返り)長男が18歳ぐらいの回では、この長男が長女になってたんですね。新宿2丁目のお店で働いてた。最初に取材を始めたときに思ってたこととは違う展開やったと思うけど、時間をかけて一つの家族を追い続けているからこそ人の多様な面や紆余曲折が垣間見えたのやなと。その後どうなったのかは見てないねんけど、あの子、どうしてるかなー。もう10年ぐらい経つか。何の番組やったか覚えてないねんけど、もしかしたら最初に書いた『ザ・ノンフィクション』かも。何年にもわたって取材してる番組って好きで、手法が似てるもんね(違うかったらごめん)。これもたぶん同じ枠の「泣きながら生きて」っていう中国人のお父さんが娘をアメリカの大学に行かせるために一人で東京で働いてるやつがほんまによかってんなあ。娘のためにひたすら働いて、10年間でその娘に会えたのはアメリカ行きの乗り継ぎの1日だけ。親子ってなんなんやろう、働くってなんなんやろう、って衝撃を受けた。1回だけ映画館で公開しててんけど、ああいう番組こそ、多くの人が見られたらいいのに。

4月☆日
猫ブーム、ってワイドショーなんかでもやってますね。猫動画、猫本、猫番組、猫グッズ、ご多分に漏れずわたしも猫やったらとりあえず見とく、みたいな状況になってます。めっちゃわかる。が! そのテレビで紹介されるときに、犬より手間もお金もかからんていうのは気軽に飼ってしまってあとで不幸な猫が増えそうやからやめてほしいのと、猫の魅力としてよく言われる「自由気ままなのがいい」っていうのもちゃうような気がする。猫が自由気ままって、わたしはあんまり思わへんねんなー。猫は猫として「これやらなあかん」「なんかわからんけどこれをやってしまう」(動いてる物に手を出してしまうとか箱に入ってしまうとか街角でほかの猫に会ったらにらみ合ってしまうとか)ってことに必死やと思うねん。地域猫もスケジュールかなりはっきりしてるしね。気まぐれな面もあるにはあるけど、そんなにのんびり生きてないように、ま、飼うたことなくてひたすら猫動画観察したり飼ってる人の話聞いたりしていて思うんやけど。わたしは猫のその必死さが、めっちゃいいなあ、と思う。

3月☆日
もう季節変わるから今さらやねんけど、ローソンで売ってる鍋焼きうどんのシリーズが好き。アルミの鍋に凍ったのが入っててそのまま火にかけるやつね。キンレイが作ってるんやけど、鍋焼きうどん、カレーうどん、肉うどん、長崎チャンポンといろいろあって、どれもおいしい。昔からこのアルミ鍋のん妙に好きやねんけど、東京におると近所で気軽にうどん食べるの難しいから余計にありがたい。凍ったつゆがだんだんとけていく感触もなんかいいしね。春菊とか葱とかちょっと足して食べてます。

柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com

権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。
風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:http://naohirogonda.tumblr.com  風呂ンティア:http://frontier-spiritus.blogspot.jp/