関西人による、関西が好きな人のための、関西を24時間遊べるウェブマガジン Lmaga.jp


トップ > 連載(エルマガ books) > よう知らんけど日記。
よう知らんけど日記。 東京で暮らす小説家・柴崎友香が大阪弁でぼちぼち綴る、日々のあれこれ。「よう知らんけど」は、関西人がさんざん全部見て来たかのように喋った最後に「絶対にそうやって!……よう知らんけど」と付けるアレですよ。
第100回 フラゲって何?

4月☆日
仕事をしてると家から出ない。以前は外に出ないと買い物できへんかったけど、今はつい見てしまう通販サイト。いや、「通販サイト」と限らんでもたいていのサイトは買い物につながってる。ほんで、最近ついつい読んでまうのが「コメント欄」。現実的に参考になるのもあれば、今どきの感覚がわかるようなのもおもしろい。ファストファッションのサイトで。「素材が安っぽい」て、そら1,900円のワンピースやもん!
あと、現代の買い方やなあと思うのが「色ち買いしました」(同じデザインを別の色で複数買うこと)「全色買いました」「リピします」のコメント。同じ洋服を何枚も買うとか、昔はあんまりなかった。いわゆるファストファッション、日本やとやっぱりなによりユニクロが服の値段の感覚、買い物の感覚を変えたんやなあと思う(送料や配達の感覚を変えたんはアマゾンやね。ほかの通販サイトのコメント欄で「送料無料じゃないなんて」「配送に時間がかかりすぎ」とかよく見かける)。わたしが学生のころ(=お金がなかったころ)は、安い服はいかにも安い服で、一目でわかるもっさり加減やったから、1,900円でこんなそこそこのワンピース買えんの!? って思うけど、この価格に慣れてしまって慣れて「安っぽい」って思うのやろうなあ。「安っぽい」やなくて「安い」のや。自分が今若かったら、GUとかH&Mとかでそこそこのおしゃれできて楽しかったやろな、と思う一方、値段が下がったのに反比例するように要求が上がっていくのは複雑な気持ちやね。

4月☆日
そして前に「コーデ」ってファッション誌でしか見たことないって書いたけど、ファッションブロガー的なとこでは見る。そしてだんだん現実に発音してる人もいるように思う。「リピします」「コスパ」「ヘビロテ」とか、独特の用語ってみなさんさっくり使てはるけど、わたしは口っていうか喉っていうか食道っていうかそこらで何重にも引っかかってなかなか言われへん。そもそも流行に疎いとこがあるので「フラゲ」とか「???」てなる。

4月☆日
ちょっと前の話になるけど1~2月にやってたドラマ『逃げる女』(NHK総合)にはまって、めずらしく毎週見てた。殺人の冤罪で服役して出所してきた女(水野美紀)と彼女につきまとう謎の女(仲里依紗)を中心にした逃亡劇。過酷な時を経た女をほとんどノーメイクで演じる水野美紀の迫力と歳の取り方もすばらしかったし、仲里依紗の狂った危うさに夢中になってしまった。ちょっと『テルマ&ルイーズ』を思わせるようなところもあり、水野美紀を裏切った同級生役の田畑智子も含めて女たちの関係性がおもしろかった。最近ようわかってきてんけど、女優とかアイドルとか昔から好きでエッセイを書いたりしてきたけど、心惹かれるタイプを一言で表すと「外見が好みで中身が心配」やなと。もちろんしっかり安定した、たとえばケイト・ブランシェットなんかも憧れるけど、無性に気になってしまうのは、不安定なところがあったりどこかに暗さを感じたりする人なんよね。中森明菜もそうやし。実際つきあったら振り回されて疲弊すると思うから、対象が女優とか画面隔ててる人でよかったと思う。というか、そもそも「そんなイメージ」であって、実際のその人がどんな性格かなんかわからんのやけどね。

4月☆日
『逃げる女』は長崎の複雑な地形の風景が印象的やった。脚本は鎌田敏夫やってんけど、Wikipediaで今までの作品リスト見てたら舞台となる場所に力をそそぐタイプなんやなあと。『男女7人夏・秋物語』(あ、今うっかり「ひちにん」って入力してしまった・笑。大阪人や)でも、勝鬨橋のあたりや川崎と木更津を結ぶフェリー(なくなってて残念!)もめっちゃ心に残ってるし、『ニューヨーク恋物語』やしね。
わたし、小学校高学年から中学にかけて明石家さんまがめっちゃ好きやって、『男女7人』も穴があくほど見た。共演の大竹しのぶとの仲が最高潮に盛り上がってた映画『いこかもどろか』なんか北野劇場に同級生5人で朝7時から並んだもんね。さんまになんでやねん、ってつっこみ入りそうやけど、当時はアイドル並みに人気あったし、実際7時でもかなり行列できてたんですよ。ほんで近くに並んでたヤンキーのねえちゃん二人組にめっちゃ話しかけられて、しかも席とっといてくれたりして、ええ人やなと思ったら、映画上映中二人とも爆睡してはったなあ。当時は入れ替え制じゃなかったから、わたしらが帰るときに「おもろかった? わたしらこれから見るわー」って手を振ってくれた。ええ思い出やね。

4月☆日
『ゴロウ・デラックス』(TBS)の収録。2014年の芥川賞受賞後に出演させていただいたのですが、今回お花見スペシャルということで、朝井リョウさん、桜庭一樹さん、羽田圭介さんといっしょに呼んでいただきました。稲垣吾郎さん、『an・an』で10年以上続いてる映画評の連載も鋭い且つ愛があってよう見てはるなあって思うし、小説もとても真摯に読み込んでくれはるので、お話しするのはとても楽しい。『群像』2015年7月号での小野正嗣さんとの対談は、こんなふうに小説読んでくれはる人が増えたらええのになあと思った。『ゴロウ・デラックス』は朗読もあり、小説自体をがっつり紹介してくれる貴重な番組なんで、ぜひ全国で放送してほしい。
一昨年に賞をもらってからテレビやラジオに出さしてもらうことが増えたんやけど、事前取材があって構成があってスタジオの準備があってヘアメイクさんもいて、収録が終わったら、編集があって、と出演者、特にゲストであるわたしが関わるのはほんの一部分なんやなと思う。いろんな役割の人が時間かけて準備して、それが30分とかに凝縮されるのって充実感あるやろうな、と思う。もちろんすごくエネルギーも技術も必要で大変な作業やと思うけど。と、やっぱり「出演する側」じゃなくて「作る側」に対しておもしろそうやなあ、って思ってしまうな、わたしは。

4月☆日
恒例の、連休や長い休みはゆっくり仕事する方針、だんだん連休ってことも忘れて、あれ? なんか人が少ない、メールもけえへん、みたいな感じになりつつある。曜日や祝日が関係ない生活になってもう15年近く経つもんなー。

4月☆日
連休にまつわる思い出と言えば、わたし偏頭痛なのですが、いくつかある偏頭痛が起こる要素の一つに「緊張がゆるんだとき」というのがあって、せっかく仕事が休みになったときに頭痛で寝込む人は結構いる。わたしも今でも締め切り明けとかになるとき多いのですが、会社員時代にものすごくひどい頭痛でつらかったことが2回あって、それがゴールデンウィークの前の日とお盆休みの前の日。休み前日にもう緊張ゆるんどるんかい!って怒られそうやけど、休みの前にやっとかなあかん仕事があるから早退もできへんし、いやーしんどかった。会社で仕事してると鎮痛剤飲むタイミングが遅れがちで、それも頭痛悪化する要因やった。偏頭痛、つらいんですよ。わたしの場合、右目の上が激痛で、眼球取りたいって思う。歳取るとましになるっていうけど、ほんまかなあ。

5月☆日
痛いついでに、複数の人と話してるとき(飲み会とか)にときどき「今までいちばん痛かったことってなんですか」って聞くことがある。痛い話苦手で、中学の保健体育の時間に止血の話聞いてて貧血起こしたり、会社から帰るバスで昼間に聞いた話(書くとよみがえってくるので割愛)思い出して気持ち悪くなって降りたりするぐらいのくせに、なんか聞いてしまう。とりあえず、わたし自身のいちばん痛い経験は一昨年の尿管結石です。
そんな痛い話のあとにアレですが、この連載、今回でなんと100回達成です! 三日坊主以下、日記が一度も続いたことがないわたしが、「よう知らんけど」な適当さを許してくださる京阪神エルマガジン社さんと読んでくださる皆さまのおかげで、休んだりしながらもここまで続いています。まだまだ書いていきますので、よろしくお願いします。……100回記念でもうちょっと華のあること書いたらよかったかな。なかってんけど。

柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com

権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。
風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:http://naohirogonda.tumblr.com  風呂ンティア:http://frontier-spiritus.blogspot.jp/