『Meets』編集部の余談。

仏像を彫る。 八刀目

2020.6.24 13:00

カテゴリ:コラム

寺好きが理由で、縁の無い奈良に住む編集Oが、
一から仏像を彫ってみる無謀な体験記。
小学生以来握る彫刻刀の扱いに悪戦苦闘、
「ホンマに彫れんのか?」と不安を抱きつつ、
家時間の過ごし方としての新趣味開拓を目指す。
いたって真面目に、仏像に向き合います。


八刀目
見仏に出かける。

彫刻のペースが上がらない。

理由はいたってシンプルで、
週に一度しか彫刻刀を握っていないから。
よって、途中経過をアップしようにも、
さほど進展もなく、画的に変わり栄えがしない。
早くも行き詰まった感がある。。

重い腰をあげて、一応進めていこう。
前回の続きとして顔の立体感を出す作業。
額・鼻といった、顔の高い部分だけを残し、
その周囲を彫り下げていく。

彫刻は基本的に引き算で、
彫り過ぎたら周囲をさらに彫り下げるしかない。
なので、出来上がったら「予定より小さい…」
なんてことにならなければ良いのだが。

しかし、今日は作業に身が入らない。

こんな日はちょっと気分を変えよう。
“仏像が好き”という原点に還るため、
京都・奈良の府県境の当尾(とうの)にある、
[浄瑠璃寺]を訪ねることにした。

平安仏とされる九体阿弥陀如来坐像が現存し、
本堂や三重塔とともに国宝に指定されている。

個人的に一番好きな場所のひとつで、
人生で最も訪れているお寺だと思う。

自分が仏像彫刻を始めてからは、
主に慶派(運慶・快慶)を追ってきたが、
平安仏の柔和な作風もやはり捨てがたい。
よりプリミティブで、技術云々という以前の、
寛容で力強い美しさがある。

庭園、建物、そして仏像が構成する、
このお寺の空気感がとても好きだ。

当尾を訪れた目的はもうひとつ。
久々に磨崖仏(石仏)を見ておきたかった。

当尾エリアで最古級の「藪の中三尊磨崖仏」。

この当尾エリアは、
平安〜室町時代の石仏の密集地帯で、
散策マップなども作成されている。
装備を決め込んだシニア世代が行き交うなか、
革靴・ヒゲ面のむくつけき男(私)がウロウロ。
軽い不審者に映っただろう。

目的は「大門仏谷の如来形大磨崖仏」。
当尾エリア最大の磨崖仏で、
8尺(約2.4m)の座高があるという。
ちなみに今回のブログのトップ写真がそれで、
真下まで行けるだろうと向かったが、

・・・やめておこう。
夏の薮は危険が多い。
これは前部署で城の本を作っていたとき、
関西の山城に登って学んだ。

磨崖仏だけ心残りだったが、
見仏で少しリフレッシュできた。
今週はイレギュラー回でほぼ彫っていないが、
これから最低2日は彫ろう!

しかし、寺と花と磨崖仏ウォーキング、
定年後の初老のブログみたいになってきた。


◎過去の記事は
仏像を彫る。 七刀目
仏像を彫る。 六刀目
仏像を彫る。 五刀目
仏像を彫る。 四刀目
仏像を彫る。 三刀目
仏像を彫る。 二刀目
仏像を彫る。 一刀目

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MeetsRegional編集室 1989年創刊以来(今年で31年目突入!)、関西の街をフォーカスし続けるリージョナル・マガジン。編集部員をはじめ、誌面に携わるさまざまなスタッフが自分の足で探してきた店や人、モノやコトを、私感たっぷりにご紹介。街や酒場の“ゴキゲン”を言い訳に、どうにも飲める(飲み過ぎる)スタッフ多め。現在、「WE♥酒場」をキャッチフレーズに、酒場にまつわるエトセトラを12カ月連続で特集中。毎月1日発売。

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