今さら訊けないコンドルズ、人気の秘密
NHK連続テレビ小説『てっぱん』のオープニングダンスを手掛けて以来、一気に知名度が拡大中のダンスカンパニー・コンドルズ。ダンス公演というと、観る前から「ムズカシそう・・・」と敬遠されがちだが、毎年のように国内外でツアーを行い、活動歴は今年で15年目に突入。今や人気実力ともに日本を代表するカンパニーに成長したコンドルズが、国内外で受け入れられる理由はどこにあるのか。そんな疑問を解消すべく、主宰の近藤良平を迎え、彼らの魅力を徹底解剖。恒例の夏の全国ツアーを前に、知られざる魅力に迫ります!
1:コンドルズを主宰するのは、鬼才の振付師・近藤良平。
近藤良平。彼の生い立ちこそが、コンドルズの原点と言っても過言ではないだろう。幼少期をペルー、チリ、アルゼンチンで過ごし中学の時に帰国した彼は、慣れない言語と文化に戸惑うなかで、コンドルズの種とも言うべきモチーフに出合う。知らないことを馬鹿にされたYMOを全曲制覇すべく楽曲を聴き込む日々。そんな中、見始めたビデオクリップに、8ミリフィルムが趣味だった近藤少年は迷わずハマった。「歌以外に踊りとか色んな風景が出てくるのが面白くて。かなり今の活動にも繋がっていると思う」。一方、ダンスとの出合いは大学で訪れる。モテたいがために立ち上げたダンス部だったが、教科書通りでいまいちノリ切れない。そんな時、初めて観た海外のカンパニーに衝撃を受ける。「みんな逃げながら粉とか投げまくってて、凄かった! 急にダンスの幅が広がって…」。このとき、中学時代の思い出がリンクする。ボディーランゲージで“伝わる”あの感覚。「身体表現なら海外でもやれる」。近藤青年の中でダンス=訳の分からない興奮を伝える「世界共通言語」として認識された瞬間だった。
2:ダンス公演・・・なのに、なんでもありのオモチャ箱的演出。
粉を投げるダンスが存在すること知った彼らに怖いものはなかった。近藤が「面白いことをやる、それ以上でも以下でもない」と言い切るように、コンドルズの舞台は、ただその一点へ向かい構成される。ダンスから映像、生演奏、人形劇、コントまで。蓋を開ければメンバーが得意とするオモシロ要素がドバッと飛び出す、まるで玩具箱みたいなコンドルズ・ワールド。「幕が上がっている間は遊んでヨシ! まさに大人児童館」と自らのスタイルをそう表現する近藤。また「正解に向かって作るのがキライ」で、作品は感性の赴くままゴールを決めずに作り始める。最後は観客のテンションを受けて完成! というのだから、会場で味わう一体感はホンモノ。「ただここ5年ぐらいでメンバーの実力も上がり、やりたいことが明確になってきた。その分、作りたいものに向かって作る方法もありかと。マジメな話、この夏公演あたりから今よりワンランク上にいけそうな気がする」。声高らかに謳ってはいないが、今年で結成15年目を迎える彼ら。偶然とはいえ、今後の展開を示す集大成的作品となりそうだ。
3:国境も軽々と越える、独創的ビジュアル&開かれた世界観。
近藤が海外育ちということもあり、早くから目標の一つに掲げていた海外公演。その夢は結成わずか4年目に実現する。乗り込んだ先はショービズの本場ニューヨーク。ミレニアムの幕開けに目の肥えた観客を初笑いの渦に巻き込むと、かのニューヨークタイムズ紙も「バカバカしいほど素晴らしい!」と絶賛。以後、訪れた国は20カ国にも上る。「世界中どこにもないシーンを集めているから。デブツインの共演なんてコンドルズでしか観られない(笑)」。オレゴン州・ポートランドでは公演中にスモークで火災警報器が鳴り出し、駆けつけた本場のファイヤーマンにコント衣裳のまま対応したり。自分たちが日本のアニメフェスに呼ばれたことを現地のコスプレスタッフを見て初めて知ったコスタリカ公演では、本番後のロビーで思わぬ「コンドルズ!」コールに感激したり。さらにお隣ソウルではメンバーのつたない韓国語にしびれを切らした観客の一人が、親切心から本番中に同時通訳を始めたりと・・・。「ほんと鍛えられるよね(笑)」。こうして観る人を選ばない、全方位に開かれた舞台は完成するのであった。
4:ダンスは素人? メンバーの半分は実はインテリ社会人。
こんなに注目されているダンスカンパニーながら、メンバーの割合はダンス経験者と未経験者でほぼ半々(!)というのもコンドルズならでは。メンバー選びについて近藤は「愉快な人か否か」で判断するという。言い換えると一芸に秀でた能力のある人、ということらしい。「ひとつでも抜きん出たものがあると他を受け入れる余裕があるよね。15人もの違う体が集まるとそれだけで凄まじいし美しい。ダンサーらしからぬと言われるけど、僕のなかではすごく真っ当だし正当なこと」。そんなわけで横浜国立大卒の近藤を筆頭に意外に? 高学歴なヨガ講師からバー経営者、商社社長、クリエイティブディレクターまで多彩な顔ぶれが揃うコンドルズ。トレードマークの学ラン姿で流れる汗も気にせず踊り、跳ねる“普通の人たち”。そんな彼らと対峙すれば、多くの観客は気付くだろう。自分が日々どれほどつまらないしがらみに捕らわれていたのかを。「あ、いいんだ」とユルユルとほどけた心身にやがて満ちる底抜けにハッピーな感覚。この癒やしにも似た開放感こそ、コンドルズの最大の魅力なのかもしれない。
取材・文/石橋法子
【中心的役割を担う、主な創立メンバー】
石渕聡(いしぶち・さとし)
大東文化大学専任講師。文学博士。ギター、ヴァイオリンなど、あらゆる楽器を使いこなす。「サラリーマン体操」ピアニスト。
勝山康晴(かつやま・やすはる)
プロデューサー兼社長。作詞作曲、ラジオDJも手掛け、SPUR、サイゾーなどに連載多数。著書に「コンドルズ血風録」。
鎌倉道彦(かまくら・みちひこ)
コンテンポラリーダンサー。中国武術にも長けた肉体派。サントリーボスTVCM「シルキーブラック」などにも出演。
小林顕作(こばやし・けんさく)
劇団「宇宙レコード」作・演出家、俳優。オフロスキーとしても活躍。ジャニーズから阿佐スパ、劇団EXILEまで客演多数。
藤田善宏(ふじた・よしひろ)
ダンサー兼振付家。矢井田瞳、大塚愛PVなども手掛ける。Tシャツデザイナーとしても活躍中。「サラリーマン体操」出演。
Profile
コンドルズ(こんどるず)
朝日舞台芸術賞寺山修司賞にも輝く近藤良平を中心に、1996年秋に結成。世界20カ国以上で公演。ダンスを主軸にバンド活動も行い、2006年メジャーデビュー。日産、カルピスなどのTVCMにタイアップ。現在は「ストライク」に改名し定期的にライブハウスツアーを敢行中。2009年には人形劇団「コンど~るズ」も始動。また、外部活動も多彩で、上記で紹介したほか、NODA・MAP「パイパー」への出演や、小林がNHK「みいつけた」のオフロスキー役として出演、また、藤田が郷ひろみの新曲でダンサーを務めたり、布袋寅泰作詞作曲「笑顔にカンパイ!」のPV振付出演など幅広い。さらには、新人のぎたろーがメインキャストを務める前田哲監督映画『極道めし』も今秋公開予定。
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