演劇界の巨星が集った舞台「レミング」
観る(読む)者を挑発する作品を多数遺し、今なお影響を与え続けている寺山修司の逝去から30年。その関連企画の中でも、とりわけ注目されているのが、寺山の最晩年の戯曲を維新派の松本雄吉が演出し、少年王者舘の天野天街も共同脚本で参加した『レミング~世界の涯(はて)まで連れてって~』だろう。東京ではすでに大きな反響を巻き起こしているその舞台を、松本雄吉の言葉も交えながら詳しく紹介。「様々な壁が消えた街」と「世界の涯」へ、いざ!
取材・文/吉永美和子 写真/谷古宇正彦(舞台)、本郷淳三(松本雄吉)、吉永美和子(天野天街)
【レミングとは・・・その1】母子の話を軸に、魔都・東京の姿を描き出す
“一番最後でいいからさ 世界の涯まで連れてって・・・”
寺山のダンディズムを象徴するようなテーマ曲に続き、舞台上に黒衣の人々が登場。彼らが刻む足音に乗って、東京の大きさと孤独を暗示するコトバが次々と紡がれていく・・・今回の舞台が、寺山修司のセンチメンタルな言葉が詰まった本を、維新派の「ヂャンヂャン☆オペラ」スタイルで再生する貴重な場だということを、実感させる幕開けだ。
「『レミング』は寺山さんならではの都市の見方を、モンタージュのようにつなぎ合わせた作品。それを言葉尻だけで理解した舞台にするのではなく、シーンひとつひとつをしっかり作り込むことで、“わかる”とは違う楽しみを探す世界にしようと思いました」(松本)。
タロ(八嶋智人)とジロ(片桐仁)が住む四畳半の部屋から壁が消えたのを発端に、ごっこ遊びを治療に取り入れた精神科の人々、映画の中で永遠に生きる女優(常盤貴子)など、様々な“壁”の向こうに隠されていたモノたちが出現。そしてタロもまた、自室の畳の下で母親(松重豊)を飼っていたことが判明する。
「この母子のやりとりは漫画みたいやけど、全体の中で一番説得力がある。だから戯曲の改訂も美術も何もかも、この2人の話を軸に考えました。あれを難解と言う人には、この芝居はまったくあかんやろうね(笑)」(松本)
「レミング ~世界の涯まで連れてって~」
作:寺山修司、演出:松本雄吉(維新派)
上演台本:松本雄吉、天野天街(少年王者舘)
出演:八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊、ほか
日程:2013年6月1日(土)・2日(日)
場所:イオン化粧品 シアターBRAVA!
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