柄本明「我々は残念ながら生きてる」

2013.9.5 15:00

合同インタビューに登場した李相日監督(左)と俳優・柄本明

(写真3枚)

クリント・イーストウッドが監督・主演したかの名作を、『フラガール』『悪人』の李相日(り・さんいる)監督がメガホンをとった日本版、新生『許されざる者』(出演:渡辺謙、佐藤浩市、柄本明、ほか)。その公開を前に、李監督、柄本明の2人が来阪。合同インタビューをおこなった。

国内の映画賞を総なめにした『フラガール』(2006年)はアカデミー賞・外国語映画部門にエントリーされ、2010年の『悪人』はモントリオール世界映画祭で上映されるなど、国内外で高い評価を得ている李相日監督。本作は、オリジナルと同時期である明治時代初期の蝦夷地を舞台に、かつて「人斬り十兵衛」と恐れられていた男が、再び戦いに身を投じていく姿を描いている。

映画『許されざる者』の一場面 © 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
映画『許されざる者』の一場面 © 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

「北海道をロケ地に選んだのは、『悪人』をやる以前から、北海道の開拓時代を背景に何かできないかとは思っていたんです。イーストウッドの『許されざる者』で強い映画体験をさせてもらった想いが、『悪人』を経たことで自分の中でより大きくなって。それが今回、その両者が組み合わさったというか。そこに目を向けなければ、『許されざる者』を日本映画化しようとは考えなかったと思います。北海道に舞台を移すことで、コピーではなく、日本映画のオリジナルとしてできる思い込みが持てましたね」(李)

今回、主演の釜田十兵衛を演じるのは、日本が誇るハリウッド俳優・渡辺謙。そして、その相棒には、李監督とは『スクラップ・ヘブン』(2005年)、『悪人』に続き、3作目の共演となる柄本明。なかなかOKを出さないと有名な李監督の現場だが、この『許されざる者』に対する2人のコメントからは、お互いの、そして映画に対する並々ならぬリスペクトに溢れている。

「俳優としてのタイプはもちろん、フィールドも違うところを歩んでこられた渡辺さんと柄本さんが並んだとき、どういう化学反応が起こるのか。映画という戦場において、僕よりも全然長く生き抜いてこられているので、2人にしか見えない到達点とか空気感が出るといいなと。それとはまた別に、柄本さんと向き合うことの、体が覚えている緊張感は、3度目だからと言って決して楽にはならないですね」(李)

柄本明(左)と渡辺謙 © 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
柄本明(左)と渡辺謙 © 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

「監督が言ったように、慣れないです。でも監督の現場では、毎回何かを探すということに、ある種の期待感があって。あえて残念という言葉を使うけど、我々は残念ながら生きてるんです。そのとき、そのときの感情は揺れ動くし、それを止めることはできない。映画というものはその瞬間を切り取っていくわけで、それを探すと言うことは大変なこと。その、探そうという意志に巡り合えるのは、李監督に限らず、今平(今村昌平)さんや相米(慎二)さんとか、俳優の僕としては光栄なことで。その瞬間を共に考えられるというか。共にっていうと、生意気なんだけどね(笑)」(柄本)

現在開催中の、第70回ベネチア国際映画祭に特別招待作品として出品されているほか、第38回トロント国際映画祭の特別上映部門にも正式出品が決定。早くも世界的に注目を集めている日本版『許されざる者』は9月13日、「大阪ステーションシティシネマ」ほかで公開される。

映画『許されざる者』

2013年9月13日(金)公開
監督:李 相日
出演:渡辺 謙、佐藤浩市、柄本 明、ほか
製作・配給:ワーナー・ブラザース映画
2時間15分
PG12
大阪ステーションシティシネマほかで上映

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