生瀬勝久が挑む、舞台「鉈切り丸」
メインのストーリーに決して水を差さないのに、いつの間にか忘れがたい印象を残して去っていく──舞台でも映像でも、そんな味のある脇役を数多く演じてきた生瀬勝久。そんな彼が、いのうえひでのり(劇団☆新感線)が満を持して挑む、日本版『リチャード三世』=『鉈切り丸』に、主人公の兄・源頼朝という重要な役で登場する。その公演を前に、実はこれが初めてとなるいのうえ演出への期待や、「役作り」に対する独自の考え方などを、いろいろ語っていただきました。
取材・文/吉永美和子 写真/バンリ
生瀬勝久といのうえひでのりといえば、90年代の関西小劇場界で切磋琢磨し合い、空前のブームの立役者となった者同士。古くから知る間柄だけに、いのうえの舞台には何度も出ていたのでは・・・と思ったら、実は今回の舞台『鉈切り丸』が初めてなんだとか。
「夢が叶ったという気分です。ずっと一緒にお仕事をしたいとは思ってましたが、新感線の舞台に自分は必要か? という気持ちもあったので、これが試金石だと思ってます。今回出演しない古田(新太/劇団☆新感線劇団員)の位置に僕が求められると思うけど、善良で社会性のある自分が、どこまで彼に近づけるか(笑)。自分の悪の部分を捻り出していきたいと思います」
その小劇場ブームの頃、生瀬は「劇団そとばこまち」で座長を務めていた。そとばこまちは特定の作・演出家 を置かず、その時々で外部の人材を招いたり、役者自身がやりたい芝居を自分で作るというスタンスを取っていた。それゆえ彼も、数多くの作品の脚本や演出を担当。どんな物語のどんな役柄でも、まさに「適材適所」の絶妙なバランスで演じられるのは、演出として外から芝居を見続けた経験があってこそだろう。ちなみに今でも、演出家として舞台に招かれたり、明石家さんまとの演劇公演に脚本を書き下ろしたりしている。
「演出を経験したことで、やはり“今、この芝居はどこを見せるべきか”を、ちゃんとわかって演技できるようになったと思います。人の邪魔はしません、という(笑)。それと現場でのチームワークも、すごく考えます。どんな現場でも思ったことが言えないと、ストレスもたまるし、流れもとどこおる。いろんなことが言える状況は誰かが作らなきゃいけないし、そういう役割は・・・年齢的なことも含めて、自分が担っていかなきゃいけないのかなと思っています」
それだけ芝居の現場のことを真摯に考える人だけに、さぞ役作りの方も抜かりはないだろうと思っていたら、「役作りは基本やらない」という意外な言葉が。
「僕はどの作品に参加する時も、前勉強をあまりしない人間なんです。それよりも作家さんがもっと勉強して書いたはずの、脚本を中心にして考えるようにします。あまり自分が予習してきたものを加味すると、違う方向に行ったりしますからね。むしろ演出家の考える、キャラクターのイメージがあるじゃないですか? そこに自分を近づけるのが、ものすごく好きなんです」
さて今回生瀬が演じる源頼朝は、あの鎌倉幕府を開いた実在の人物。脚本を読む限りでは、どんなキャラクターなのだろう? また、いのうえ演出といえば、ロック調の歌と華やかな踊りが最大の持ち味だけど、生瀬も歌ったり踊ったりするのだろうか?
「歌とダンスはなくて、殺陣があるだけです。でも、その分しゃべり倒してますね。他の人の3倍しゃべって笑わせる役です(笑)。その台詞を、いかに表現するか・・・まずは表層から入って、そこでいのうえさんにバランスを取ってもらうというスタンスで挑もうと思っています」
演出のいのうえも会見で、「前半は結構笑えるけど、ただ面白いだけじゃない深みを、生瀬さんの力でねじ伏せて、説得力を出してもらえれば」と期待を寄せている、生瀬演じる源頼朝。十八番とも言えるマシンガントークを武器に、時にコメディ的な役割を背負い、時に場をビシっと占める。生瀬にしか演じられず、しかもいのうえの理想に限りなく近づいた“将軍様”を拝むことができるはずだ。
profile
生瀬勝久(なませ・かつひさ)
1960年生まれ、兵庫県出身。同志社大学在学中の1983年に「劇団そとばこまち」に入団し、1988年に4代目座長に就任。その頃から『TV広辞苑』などの深夜バラエティ番組に出演し、関西小劇場を広く知らしめる牽引役の一人となった。2001年にそとばこまちを退団。以降は変化自在のキャラクターを生かし、舞台から映像まで幅広く活躍する。主な作品に『TRICK』(TV・映画)『サラリーマンNEO』(TV・映画)など。現在、NHK大河ドラマ『八重の桜』に勝海舟役で出演中。スピンオフ企画も好評の警部補・矢部謙三役として出演する映画『TRICK -劇場版- ラストステージ』は2014年1月11日公開予定。
いのうえシェイクスピア 『鉈切り丸』
原作:W・シェイクスピア『リチャード三世』より
脚本:青木豪、演出:いのうえひでのり
出演:森田剛、成海璃子、秋山菜津子、渡辺いっけい/麻実れい/若村麻由美、生瀬勝久 ほか
日程:10月12日(土)~26日(土)
会場:オリックス劇場
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
大阪クリスマスケーキまとめ2024年、百貨店から高級ホテルまで
NEW 2024.11.20 10:00 -
滋賀のホテルで優雅に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.11.18 14:00 -
関西から北海道旅。おすすめは大自然×ワイン×グルメ[PR]
2024.11.15 10:30 -
神戸のホテルで贅沢に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.11.14 14:00 -
京都のホテルで楽しむ、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.11.14 12:00 -
インタビューまとめ【芸人編】
2024.11.12 16:30 -
ホテルで甘いものを満喫、関西スイーツビュッフェ・リスト
2024.11.12 15:00 -
ホテルで贅沢に…大阪アフタヌーンティー2024年完全版
2024.11.12 14:00 -
京都クリスマスケーキまとめ2024年、百貨店から高級ホテルまで
2024.11.12 12:00 -
大阪から行く高知のおでかけ・グルメ2024最新版
2024.11.6 15:50 -
神戸クリスマスケーキまとめ2024年、百貨店から高級ホテルまで
2024.11.5 12:00 -
大阪&京都で1カ月限定「酒祭2024」が開幕![PR]
2024.11.1 10:00 -
論争巻き起こるチキン南蛮問題、本場で徹底検証![PR]
2024.11.1 07:00 -
淡路島の観光&おでかけ&グルメスポット、2024年最新版
2024.10.31 19:45 -
スマホを落としただけなのに…本当にあった話にゾッ[PR]
2024.10.25 17:00 -
石川の旅は星野リゾートのホテルへ。伝統文化を体験[PR]
2024.10.24 09:00 -
お得に鉄道旅! 今話題の「北陸エリア」へ[PR]
2024.10.23 13:15 -
「淡路島の海」を自分の手で…旅をアートで持ち帰る[PR]
2024.10.19 08:30 -
奈良のホテルで贅沢に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.10.7 11:00 -
映画評論家・ミルクマン斉藤氏を悼んで インタビューまとめ
2024.9.30 08:00 -
2024年は開業ラッシュ!大阪・梅田の新商業施設まとめ
2024.9.25 11:00