麻生久美子「そのイメージは困る(笑)」

2013.11.5 16:00

吉田恵輔監督(左)と主演の麻生久美子

(写真2枚)

シナリオライターとしてデビューを目指す男女の姿を描いた映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』。この映画のメガホンをとった吉田恵輔監督、主演の麻生久美子が大阪市内で記者会見をおこなった。

本作のポイントは、いい歳になってもなお夢を諦めきれない「あがき」、そして自分の平凡さを受け止めて夢を捨てるという「人が挫折する瞬間の生々しさ」である。一流の才能をもってトップのステージに上れるのは、ほんのひと握り。多くの人は、自分の望み通りの人生を歩めるわけではない。吉田監督、麻生はいまや映画界のキーマンではあるが、今でも「行き詰まること」に対する恐怖心を抱いているのだろうか。

「僕は大体『もう、いいや』となることが多く、映画監督に関しても『なれる』と思っていなかった。一生のうちで1本でも撮れたら、それで死んでもいいと思えるくらいだった。だから今は『余生』という感じで、それほど恐怖心は持っていません。そんな中で、麻生さんが出演する映画を2本も作ることができたし(本作と『純喫茶磯辺』)、もう思い残すことはない(笑)」(吉田)

「私は恐怖心はずっと持っています。だから、私が今回演じた馬淵みち代にもすごく共感できました。役者というお仕事は、誰かに求められないと続けることはできない。いつそれがなくなるのか・・・と思うと、正直すごく怖いです。(ここで吉田監督に「まあ、君は大丈夫だ!」と声をかけられ)そんな無責任な(笑)!」(麻生)

映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』© 2013「ばしゃ馬さんとビッグマウス」製作委員会
映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』© 2013「ばしゃ馬さんとビッグマウス」製作委員会

麻生演じる馬淵は、男性関係でも挫折する。印象的なのは、元カレと再び一線を超えそうになる場面。そこで「私、また(あなたのことを)好きになるかも」と言い、そこで相手の手が止まる。麻生は『モテキ』然り、男性にすがりつき、男を躊躇させるキャラクターが最近よく似合う。

「そのイメージは困ります(笑)。でも『モテキ』のときも言っていたのですが、結構、過去の自分に近いところがあるんです。だから馬淵もそうなのですが、何だか昔の自分を見ているみたいで嫌なんです(苦笑)。気持ちが分かりすぎます」(麻生)

吉田監督は12月に『麦子さんと』の関西公開も控えている(これがまた傑作!)。本作含め、いよいよメジャー級のステージへと主戦場が変わりつつある。

「でも、自分が描くものは変わりません。恋人、親子間など人間の距離間。最終的に、人と人との距離感が微妙に違ってみえるところに出口を作る。考え方が大きく変わるわけではなく、前進するにも一歩半くらい進んでいるような。僕は小さな人間なので(笑)、それくらいのちっちゃな変化しかきっと撮れないんですよ。でも僕としては、それがすごく大きなドラマに思えます」(吉田)

取材・文・写真/田辺ユウキ

映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』

2013年11月2日(土)公開
監督:吉田恵輔
出演:麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、清水優、ほか
配給:東映

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