井口奈己監督「女性は常に現実的です」

主演の竹野内豊をはじめ、尾野真千子、成海璃子、木村文乃、本田翼、麻生久美子・・・稀に見る豪華キャストが集結した映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』。メガホンをとるのは、『人のセックスを笑うな』から約6年ぶりとなる井口奈己監督。その洗練された作品は、絶妙なキャスティング、独特の長回しによるカメラワーク、なかなかカットをかけない演出術・・・とよく言われるが、その実、監督の映画への情熱と探求によるものにほかならない。そんな井口監督に映画評論家・ミルクマン斉藤氏が直撃インタビュー。他メディアでは聞けない貴重なお話がたっぷりと披露されました。
取材・文/ミルクマン斉藤 写真/バンリ
「溝口健二やサシャ・ギトリを参考に構成した」(井口監督)
──初めましてですが、8ミリ版の『犬猫』(2001年)から大好きなんです。
「ホントですか!? ありがとうございます!」
──監督の作品は、日本では珍しいとても洗練されたセックス・コメディだと思うんです。ヤるヤらないの話だけじゃなく、この世はジェンダーの闘争であるというのが如実に示されていて。でも今回のように、ひとりのオトコが核になった・・・いわば「二シノユキヒコを巡る女性たちの世界」を描くという構造は初めてだと思うのですが。
「すごく大変でした。脚本を書いているときは(彼女たちを)捌ききれるかなというのがあって。誰のエピソードをやってるのか分かんなくなっちゃったりとか」
──でも映画では、それぞれの女性のキャラクターが見事に立っていますよね。
「今までの作品もですが、キャスティングが決まった時点で、その本人に寄せてっちゃうんです。やっぱり(具体的な)一人の人間が演じてくれると判るとブレなくなってくるというか」
──僕は作品を観てから原作を読んだのですけど、もう竹野内さんのイメージを払拭して読めないんですよ。
「そう、私も竹野内さんに会ったときに、彼しかいないと思いました。実はこの企画が動くのに5年くらいかかったんですけど、それは竹野内さんに会うための5年だったんだって納得できましたね」

──ということは『人のセックスを笑うな』(2008年)を撮り終えてすぐに着手していたわけですね。
「そうです。世界の経済事情にちょっぴり翻弄されました。でもアベノミクスの幻覚で、急に昨年撮れるようになって(笑)・・・幻想だと思いますけどね。でもみんな一斉に動き出したので、今度はスタッフがいなくなっちゃって。スタッフの取り合いです。現在も役者さんが取り合いになっていますね」
──特に今回のキャストはその争奪戦の先頭に立ってる人ばかり(笑)。
「キャストが決まったのは撮影の直前、2013年の5月とか6月くらいだったんですけど、こんな状態になるとは実はあまり意識していませんでした。狙って、というよりか役に合わせてキャスティングしていったら、最終的に豪華になってしまいました」
──とりわけ尾野真千子さんと木村文乃さんは、去年から今年にかけて映画、テレビ問わず出演本数が激増してますもんね。
「尾野さんと木村さんがサザエさんの実写版(2013年11月29日放映『長谷川町子物語~サザエさんが生まれた日~』)で姉妹をやっていたのもびっくりしました。あれはこの映画を撮った後なんですけどね」
──そんな豪華女優陣が取り囲むニシノユキヒコは、物語の中心のくせして実態がはっきりしない存在です。やたら女性には好かれるんだけれど、同次元で犬や猫にもやたら好かれる妖精的な側面もある。また、彼を経由することで、女性たちそれぞれの本性を浮かび出させる装置でもあります。
「映画を作る前にたくさん過去の映画の参考試写をするんです。今回は溝口健二監督の『歌麿をめぐる五人の女』(1946年)という映画を観て。中心にいる主役は空洞のようで、周りの女の人たちが事件を起こしていくという」
──なるほど、『ニシノユキヒコをめぐる七人の女』ですね(笑)。今回はいっぱい女性が出てきますけれども、結局のところはニシノの元カノ・夏美(麻生久美子)の娘である・・・でも、ニシノとは子供の時に会ったことがあるだけで血のつながりも何もない少女・みなみ(中村ゆりか)の視点で描かれる。
「そうですね」
──しかもニシノの過去は、彼のことをよく知ってはいるが肉体関係はなかった稀有な女性(阿川佐和子)から、みなみちゃんが昔語りを聴く、という形をとっています。原作は全然違いますよね。そういう構造にされたというのは・・・。
「原作を読んだ時に、これはどうしたらいいんだろうと。普通にそのままやると、オムニバスか三部作にするしかないんじゃないかと思って。原作からは(フランソワ・トリュフォーの)『恋愛日記』(1977年)や『アントワーヌ・ドワネル・シリーズ』を想起したんです。まあ、ドワネルものも5本くらいあるから連作にしようかとか。でも私たちがやらなきゃいけないのは1本の映画で、しかも2時間以内くらいのものを作んなきゃいけない。その枠に嵌めるにはどうしようっていうふうに考えて・・・。それで溝口とかサシャ・ギトリの『とらんぷ譚』(1936年)とかを参考に、こういう構成にしたんです」

井口奈己(いぐち・なみ)
1967年生まれ、東京都出身。自ら脚本・演出を手掛けた8mm映画『犬猫』が、PFFアワード2001で企画賞を受賞。8mm作品としては異例のレイトショー公開で話題を呼び、日本映画プロフェッショナル大賞・新人賞を獲得。2004年に『犬猫』のリメイクで商業デビュー。第22回トリノ国際映画祭で審査委員特別賞、国際批評家連盟賞、最優秀脚本特別賞の3部門を受賞。2008年には長編2作目となる『人のセックスを笑うな』が公開され、スマッシュヒットを記録。今もっとも注目を集めている女性監督。
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