城田優「俳優としての武器にしようと」

2014.9.16 00:00

ドラマ・映画で活躍を続けながらも、コンスタントにミュージカルの舞台に立ち続けている俳優、城田優。その彼が次に挑戦するのは、伝奇小説『オペラ座の怪人』を原作とした『ファントム』だ。映画化もされたA・ロイド=ウェバー版のミュージカルとは一味違う世界を作り上げるべく、絶賛稽古中の城田にインタビューした。

取材・文/吉永美和子 写真/バンリ

「稽古をしないと不安でしょうがない」

──先日のイベントでは流暢な関西弁を披露していましたが、もしや関西弁で取材を受けたりできますか?

いや、それでけへんわ(笑)。関西弁の友達が何人かいるので、勝手にうつっちゃうんですよ。やっぱり普通にしゃべろうとすると、エセ関西弁だとバレますよね。難しいです。

──『ファントム』の主役・ファントム(エリック)は、あの『オペラ座の怪人』のファントムとは対照的ですよね。“オペラ座に住む怪人”と呼ばれる男ながら、彼を怪人ではなく、ナイーブな等身大の人間として描き出し、ヒロイン・クリスティーヌとのロマンスもより切ないものとなっています。

『オペラ座の怪人』のファントムは、最初から最後まで「まさに怪人!」って感じですけど、こっちはいい子です(笑)。ただ他の人とは違う外見や育ちだったために、人としてちょっと欠落しているところがあるというだけで。そんな普通の人間が「怪人」になってしまったその所以(ゆえん)が、すごく鮮明に描かれています。ただのホラーやサスペンスだと思われがちな『オペラ座の怪人』が、リアリティと人間愛にあふれた切ない話なんだ、と理解できる舞台だと思います。

──クリスティーヌとの関係も、ロマンティックというより、結構シビアですよね。

ファントム(エリック)は、コンプレックスにコンプレックスでフタをすることで、どんどん腐っていくんですけど、芯にはキラキラした希望があるんです。それでクリスティーヌが登場したことで、思い切ってそのフタを取ってみるんですけど・・・そのままハッピーエンドになってもいいのに、人間はそんなに簡単じゃない、思いがけない展開になるところが、すごく現実味がありますよね。どの社会、どの世界でも置き換えられる話だと思います。

──意外にも、シングルキャストでの主演はこれが初だそうで。

ダブルキャストやトリプルキャストは、いろんな組み合わせで見られるのが面白いんですが、シングルの方が確実に、ギュッとまとまった芝居になるんです。ずっと同じメンバーだからこそ、毎回違うテンションの芝居が生まれてくるだろうし、芝居がどんどん凝縮されていくからこそ、何回観ても違う感触の舞台ができるのが魅力だと思います。ただダブルやトリプルは、もし僕に何かあっても、他の人が舞台を続けられるから大丈夫という安心感があるんですよね。今回はそういうわけにはいかないから、それは「怖いなー」と思ってます(笑)。

──やはりミュージカルは、自分のキャリアのなかでもかなり重要視していますか?

初ミュージカルは16歳のときでしたが、得意な歌を生かせるし、コンプレックスだった身長の高さ(190cm)や容姿も「舞台映えする」と褒められたんです。それでミュージカルを極めることを、俳優としての武器にしようと決めました。ドラマや映画にも出演をさせていただきながら、ハーフである外見や身長を生かすことのできるミュージカルは、城田優がほかの俳優さんたちとの違いを見せられる、唯一の武器なんです。でも最初はね、ミュージカルは苦手だったんですよ。観るのは大好きだけど、自分がやるのがね。

──どこに苦手意識を感じてたんですか?

プレッシャーがハンパないことですね。僕はすごく臆病なので、舞台の上に立って生で歌って芝居してっていうのが、本当に怖かったんです。でもその一方で「評価を上げなければ」という気持ちもあるから、自分で自分の首を締めるようなこともありました。でもたくさんの良き先輩や指導者と出会う中で、少しずつ恐怖心や苦手意識を克服して。今では心から「ミュージカルは本当に素晴らしいですよ」と言えます。だけどやっぱり臆病だから、稽古をしないと不安でしょうがないんですよ。こうして取材を受けてる今も「東京帰って稽古したいなー」と思ってるぐらいです(笑)。

──ヒロイン・クリスティーヌ役の山下リオさん、オペラ座のパトロン役の日野真一郎さん(LE VELVETS)ら、今回はミュージカルが初めての俳優が多いので、稽古場で積極的にアドバイスをされているそうですね。

僕自身、初舞台で何もできなかったという悔しさがありましたから、初めての人に対しては、僕が教えられることはできるだけ教えてあげたいんです。「筋肉部」というのを作って、一緒に身体を鍛えたりもしてますよ。さっきもリオちゃんに「ちゃんとやっとくんだよ」とメールを送りました(笑)。それに同じ舞台に立つ以上、全員のレベルを上げていかないと、お客様に対していいものは見せられない。たとえファントムが良くても、クリスティーヌがダメだったらこの作品は成り立たないし、その逆もまた然りですからね。

──『ファントム』はミュージカル俳優としての集大成にすると、宣言されてましたが。

特にミュージカルに関しては、毎回最後に出演したものを「集大成にする」と、絶対に決めて臨んでいるんです。もちろんお客様が観た時に、そう思ってもらえないと集大成にはならないですけどね。でもそこも含めて「城田くんのファントムは本当に良かった」と言っていただけるよう、終盤の稽古に励みますので、ぜひ劇場に足を運んでください。

この最後のコメント通り、作品ごとに新しい境地を開拓し、「これが彼の最高傑作」と常に言わせ続けてきた城田さん。ミュージカル『ファントム』もまた、彼の(現時点での)最高傑作の舞台となるはずだ。

ミュージカル『ファントム』

原作:ガストン・ルルー、作:アーサー・コピット、作詞・作曲:モーリー・イェストン、演出:ダニエル・カトナー
出演:城田優、山下リオ、日野真一郎(LE VELVETS)、マルシア、吉田栄作、ほか
日程:2014年10月5日(日)~15日(水)
会場:梅田芸術劇場  メインホール

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