演劇ブームを関西から再び!

2014.12.30 10:00
(写真13枚)

「東京って、うまみあるの?」

劇団に元気がないわけではなく、そのパワーをアピールし切れていないのではという意見が多かった。また、エルマガジンやぴあなどカルチャー情報を発信する雑誌媒体が次々となくなっていき、情報収集の術がネットに移行していったのもそう感じる原因ではないか、とも。一転、東京での演劇シーンはどうなのか、東京を中心に活動することにどんな意味があるのか尋ねてみた。

hime:東京公演をやることはあっても、東京を拠点に遷すとなると、かなり思い切った決断。関西を捨てた(笑)子供鉅人としては、東京進出にどんな未来を見いだしたの?

益山:さっき大洋さんも言ってたけど、僕ら“小劇場”が戦うべき相手って、もう同じ土俵の人たちじゃなくて、お笑い芸人だったり、アイドルだったりするわけですよ。そいつらと互角に戦うなら、東京しかない。“演劇”ってガラパゴスだし、情報が少ない。僕がやってるバーに来るお客さんに10年間、「小劇場って見たことあります?」って聞き続けたけど、9割以上が「ない」。その内の98%の人が「え?関西に劇団があるの?」「HEP?観覧車のとこ?へぇぇ」って感じ。なんばグランド花月や、NMB48の劇場は知ってても、小劇場は、ジャンルとして認識すらされてないんですよ。もはや僕らは居ないことになっている。ロスト・イン・オーサカ!!

西岡:全国の都道府県で、公共劇場を持っていないのって「大阪府だけ」らしいね。

吉永:「そういう場を設けよう」という話は昔からチラホラあったけど、H知事が就任した辺りからすっかり聞かなくなっちゃった。

益山:ブームにならないまでも、まず、マイナスイメージが強すぎる。「盛り上がってるらしいね」より「大変らしいね」って話が先行するもん。

西岡:文化的には最悪だもんなぁ、大阪。でも、ポテンシャルはあると思うよ。Hさんだって話せばわかるんじゃない?

hime:次の会は、現H市長をゲストに呼びましょう(笑)。で、気になるのは「子供鉅人はナゼ東京へ行ったのか」ですよ。

益山:うーん。ぶっちゃければ、「金もコネもある」かなー。関西とは量が違う。客席にキャスティングの人が観に来てて、その場で映画出演が決まるんです。僕には、付いて来てくれる役者たちを、いいエサ場に連れて行ってあげる責任がある。キレイに言えばそんな感じかなぁ。29歳、ノルマ8万円!なんて人生、悲しすぎるでしょ。

中村:大阪って、なんか「巨大な授業参観」になりがちだよね。身内しか来ない。

益山:そういう意味でうれしい誤算だったのは、東京に移住してからの大阪公演って、めちゃめちゃレスポンスいいんですよ!「たまにしか会えないから観に行ったろー」って感じかな。でも東京の人は、そういうのに関わらず、万障繰り合わせて観に来てくれる。

笠原:うん。東京以外は、大阪も含めて一地方都市なんだよね。全国の優秀な人が集まるのが“東京”だからおもしろいのが当たり前。観客もいいものを見慣れてるし。だから、私は逆に、演劇に余り触れていない“前のめりで見てくれる客層”がおもしろくて、札幌、福岡、長崎・・・って地方都市にこだわって展開してきた。でも、先日ある作品を東京に持って行ったら、業界的に“力”のある人たちが押し掛けてくださって、東京のおもしろさも目の当たりにしてしまった。

益山:集まる名刺の量が違うでしょ。活字でしか見たことなかった名前の人に、たくさん会えちゃう。

川下:僕は、東京じゃないところで盛り上がりたいなぁっていう、ちょっとアンチ東京な考えがあるんだけど。今、関西って、劇団を生かしていくだけの“必要最低限の観客数”を、割り込んでしまってるんじゃないかなって恐さがあるよね。東京は、それを満たしてる。

吉永:確かに動員はケタ違いだけど、それでもコアなお客さんは1,000人レベルじゃないかな。結局は、東京も大規模な授業参観というだけで、一般を巻き込めてるわけではないと思う。

星川:あと、関西の問題は、京阪神それぞれが分断されてるってことじゃないかな。近いのに遠い・・・。

池浦:京都の俺らとしては、大阪公演するより、東京公演する方が収穫がある。大阪のテレビ局の人たちも小劇場を見に来てるって聞くけど、即決で仕事に結びつく実感はない。東京は動きが速いのがいい。でも、東京に住んで「京都から来た劇団」ていうアドバンテージ無くすのは恐いから、移住はないかな。

吉永:私、“東京”を目指した子供鉅人は「つまらんなー」って思った。パリの劇場を拠点にしてる山海塾みたいに“海外”から逆輸入とか、やって欲しかった。

西尾:音楽シーンもそうだけど、関西にしかない独特のものって多いんですよ、ノイズとか。映画でいうと、河瀬直美監督が奈良で作った物を、まずカンヌ国際映画祭に持って行って、アーティストとして認められて日本に帰って来る・・・とか。芝居の世界には関西の独自性ってあるのかな?

吉永:以前、劇団維新派の松本さんと「もし東京が拠点なら違うスタイルになってましたか?」って話をしたら、「もっとアート系に寄って、大阪ならではの“祝祭感”が失われたかもしれない」みたいなことを言ってた。“らしさ”や“独自のカラー”を失った劇団は、東京に飲まれて潰れちゃうという危険性もある。

益山:最近、そういうの実感した!大阪帰って来たら「東京っぽくなったね~」って言われて、東京では「やっぱ大阪ですね~」って言われて。俺たちはどこに居るんだ??ってね(笑)。

西岡:「大阪背負ってる」って感覚、あるの?

益山:どうでしょう?少しはあるかな。世阿弥が「土地土地の水に合わせろ」って言ってるんですけど、芸能って、元来“二枚舌”なものでしょ。例えば、アーティストが四大ドーム公演をして、「大阪サイコー!」「福岡サイコー!」て言うじゃないですか。

吉永:結局、背負わせたいのは観客の方かもね。「大阪の劇団が東京を席巻してる」という満足感。

益山:いま、日本で芝居で食えてるのって、テレビ俳優含めて3,000人だって。テレビのテロップでは、役者で食えてる人は「俳優」、食えてない人は「劇団員」。役者ですらない(笑)

川下:んー。「小さい劇場でやるからこそのおもしろさ」が小劇場だからなー。「それで食えるかどうか」って観点でいうと、大きい劇場でやらなきゃいけないけど、それはもう小劇場じゃない。

西尾:そもそも「小劇場で活動したい」人もいれば、メジャー志向の人が、「足掛かりとして小劇場から始める」場合もあるから、先に見えてる物も違いますもんね。

野口:助成金を出す財団としては、お金出すだけじゃなくて、「何が足りないのか」「何があればいいのか」っていう話をみんなと意見交換したいです。そして、3年をめどに助成金を必要としない自立した存在になって欲しい。

吉永:Lmaga.jpも、それを支える場所になったらいいね。

hime:[HEP HALL]や[in→dependent theatre]にも、いろんな企画を立ち上げてもらって。

星川:ぎゃー。お金ないー!

野口:ご相談ください(笑)。個人的には大阪か東京かじゃなくて、地球規模で行き来するグローカルな活動に興味があります。海外すら飛び出すようなリスキーな企画が見てみたい。

hime:宇宙公演!?(笑)やりましょう!!!

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