映画ファン待望、風間志織監督の新作

2015.2.3 18:11

10年ぶりとなる新作を制作した風間志織監督

(写真4枚)

犬になりたい女子高生と、誰かを殺したかった青年。漠然とした不安や憤りを抱えたふたりが出会い、フェデリコ・フェリーニ監督になぞらえ、映画撮影の旅に出掛けるひと夏の抒情詩。この映画『チョコリエッタ』でメガホンをとったのは、高校時代にぴあフィルムフェスティバルで入選(1984年)し、「天才少女の出現!」と騒がれた風間志織。映画ファンが根強くその動向を追っていた監督の、10年ぶりとなる新作だ。

この映画のヒロインは、チョコリエッタと母親に呼ばれていたベリーショートの16歳・宮永知世子。監督のキャストへの条件は、「頭を坊主にしてくれる女優」だったという。

「この条件で集まってくれた女優陣でオーディションをしたんですけど、とにかく『変わった子だな』と目を引いたのが、森川葵。面接のとき、坊主になれる?と聞いたら、ほかの多くの子たちは『大丈夫です!頑張ります!』て顔を強ばらせながら答えるのに、森川はあっけらかん。『1回坊主にしてみたかったんですよね〜』だって(笑)。演技の上手い下手なんか関係なく、ありのままで『変』な感じが、チョコリエッタそのものだと思った」

チョコリエッタこと宮永知世子を演じる森川葵と映研OBの青年・正宗を演じる菅田将暉
チョコリエッタこと宮永知世子を演じる森川葵と映研OBの青年・正宗を演じる菅田将暉 © 寿々福堂/アン・エンタテインメント

対する、映研OBの青年・正宗役には、『共喰い』『そこのみにて光輝く』『海月姫』など、今や日本映画界には欠かせない若手俳優となった菅田将暉をキャスティング。「彼は『考え抜いて作り上げる』タイプ。違うと思うことがあれば、『僕はこう思います!』とハッキリと意見をぶつけてくるから、刺激もあって面白かったな」と、監督は振り返る。

実は、この『チョコリエッタ』。映画化は2007年頃から持ち上がっていたものの、当時は条件が揃わず立ち消え、ネタの1つとして頭の奥へ押しやられていたんだという。

「でも、東日本大震災が起きたときに、急にこの作品が腑に落ちたんです。当時子どもはまだ5歳で、『放射能から我が子を守るにはどうすればいい?』って毎日考えてた。でも、政府は情報を隠すばかりで、誰のことも守ろうとしてない。そう思ったら、例えようもない不安と憤りに襲われて・・・”ああ、これって『チョコリエッタ』の若者たちが抱えてる、”モヤモヤ”と同じだ”って。そこでカチッと嵌まったんです」

そこで、舞台設定を少し先の2021年に設定。シーンの背景に放射能や原発のイメージを忍ばせた。「それは、『未だ福島の余波が拭えない世界』かも知れないし、『福島の教訓を生かせずに、2度目の惨事が起きた世界』かもしれない」とは風間監督。ヒロインたちの人生の未来への不安は、そのまま日本の未来。そう考えると、青春の暗部を描いたこの作品は、決して他人事でないかもしれない。

取材・文/hime 写真/江口由美

映画『チョコリエッタ』

2015年1月31日(土)公開
監督:風間志織
出演:森川葵、菅田将暉、市川実和子、村上淳、須藤温子、地曵豪、中村敦夫、ほか
配給:太秦 PG12

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