奈良の新観光名所に、待望の旧居公開
奈良大和路の仏像や風景を撮り続けた写真家・入江泰吉(1905〜1992年)が、戦後から亡くなるまでを過ごした水門町(東大寺旧境内)の自宅が、3月1日から一般公開されています。
生前、全作品が奈良市に寄贈されたことから、1992年4月に[奈良市写真美術館]がオープン。その後、妻・ミツヱさんから寄贈されたこの自宅は、奈良市や市民による意見交換会(ワーキンググループ会議)を経て、入江泰吉の暮らしや人柄を偲ぶスペースとして、保存公開されることに。こちらは、入江の功績を後世に残したいという意見に加え、土塀や古い家屋が残る水門町を愛する人々の強い希望も生かされたことから、あえて写真展示スペースなどは設けず、生前に入江夫妻が過ごした空間がほぼそのままの形で残されています。
編集者や芸術家仲間を招いた客間、紅葉や椿、吉城川が見渡せるアトリエや書斎などの空間はもちろん、本棚に残された蔵書、夫妻が使っていた可愛らしい椅子や机などもそのまま。公開にあたって修理された部分も多くあるものの、入江が毎日触れていたであろう古い電源スイッチ、自然に時を止めていた時計などがそのまま残されているなど、そのマニアックな修復ぶりに市民からの深いリスペクトを感じることができます。
開館後は、オープン前に想定されていた入江ファンやカメラ愛好家だけでなく、「奈良が好き」という人や古い日本家屋に興味を持った通りがかりの観光客も多数来館。この旧居を訪れたことで、それまで知らなかった入江泰吉の人物や作品に興味を持ったという、うれしい反応も多くあるんだとか。毎週日曜には1日3回(11時、13時、15時)の無料ガイドツアーも開催、今後は様々なイベントも行われていく予定です。
取材・文・写真/小我野明子
「入江泰吉旧居」
2015年3月1日開館
住所:奈良市水門町49-2
電話:0742-27-1689
開館時間:9:30〜17:00(入館は〜16:30) ※月曜休(祝日の場合は翌日休)
入館料:200円(20人以上の団体は100円)
※入江泰吉の吉は、士に口ではなく、土に口です
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