中島かずき×いのうえひでのり 独占対談
「活劇は厳しい」ってなったら新感線じゃない
──新感線は35周年ですが、実は中島さんは入団30周年なんですね。
中島 「新感線がオリジナルの本をやるようになってから、参加しました。『星の忍者』(注5)(1986年)でハマったんだよね?」
いのうえ 「そうそう。『舞台で漫画のような活劇をやる』という方向性が、お互い合致したんです。それに僕は基本的に書く方はあまり好きじゃないので、ちょうど『ほかに誰か書いてくれんかな』と思ってたから(笑)」
──最近は新感線でもほかの作家の本を上演したり、中島さんも他所への書き下ろしが増えるなどの変化が出ていますが。
いのうえ 「僕のやりたいことが、要素として増えてきてますからね。やってるうちに『あれもできる』『これもできる』という発見が、自分の中で出てくるんです。かずきさんの壮大な話もいいけど、たまには個人的な恨みで人を殺す的な、チマチマしたチャンバラもやってみたい。だったらそういう話が得意な人に書いてもらう方がいいな、ということです」
中島「 僕の場合は、演劇以外にも書ける場所が広がったのが大きいですね。より漫画的なことっていうのは、アニメでできるという。でも新感線という幹があるから、ほかに葉っぱを伸ばしていけるんですよ。あと国と国との戦争のような大きなドラマって、実は映像より舞台の方がやりやすい」
いのうえ 「『蒼の乱』(注6)(2014年/現在『ゲキ×シネ』で上映中)をキチンと映像化しようとしたら、日本じゃ無理だよね」
中島 「ハリウッド級の絵が求められる話だから。でも舞台だと、説得力のある役者さんが、説得力のある言葉で語ってくれたら、それだけでお客さんには壮大な絵が見えるわけですよ。それがやっぱりね、舞台の…新感線の面白さです」
──35年やってきて、特に大変だったことは?
いのうえ 「いや、全部大変といえば大変でしたよ。楽な芝居はない(笑)」
中島 「ただ外的には、結構大変な目にあってますよ。本番中に主役が逮捕されたとか、上演中に催涙スプレーをまかれたとか」
いのうえ 「あったあった。相当いろんなパターンのトラブルがあったよね」
中島 「ただそれも、演劇の神様からの『こんな目にあっても芝居続ける?』という試練じゃないかと(笑)。それに対していのうえ君が『はい、続けます』って答えてきたから、35年もやれたという気がします。でもおかげ様で、いまだに動員が落ちない…しかも自分たちのやりたいことだけやってるのに、ずっと付いてきてくれる人たちが大勢いるというのは、本当にありがたい話ですよ」
──そして35年目以降も、このままの形で走り続けると。
中島 「そうじゃなければ、多分新感線の看板を下ろすでしょう?」
いのうえ 「まあ、ねえ。『活劇は厳しい』ってなったら新感線じゃない。肉体的な衰えとともに、ごまかしながらいろいろやっているけども、今はまだ大丈夫ですよ」
中島 「それで活劇ができなくなったら、その時は『劇団☆各駅停車』に変わるわけですからね(一同笑)」
【新感線を知るためのプチ解説】
劇団☆新感線とは?
1980年11月、いのうえら大阪芸術大学舞台芸術学科の四回生を中心にしたメンバーで、つかこうへい作品『熱海殺人事件』にて旗揚げ。劇団名は、当時のメンバーが実家に帰省する際、新幹線を使っていたというだけのいい加減な理由だった。当初はつかこうへい脚本の芝居を上演していたが、いのうえが作・演出を務めた『宇宙防衛軍ヒデマロ』(1984年)を機に、オリジナル路線に転向。現在ではその独特の個性が『新感線イズム』として確立、演劇界に話題を提供し続ける存在に。
※注1 『五右衛門ロック』
稀代の大泥棒・石川五右衛門が活躍する新感線流ROCK活劇。生バンドが演奏する圧倒的な迫力のロックに乗せ、歌あり踊りあり、笑いも涙もてんこ盛り、全てが迫力満点の舞台を繰り広げ話題に。
作:中島かずき、演出:いのうえひでのり
出演:古田新太、松雪泰子、森山未來、江口洋介、川平慈英、濱田マリ、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、北大路欣也、ほか
※注2 橋本じゅん
1985年より劇団☆新感線に参加。以来、看板俳優として古田新太と劇団を引っ張る。当たり役の轟天シリーズをはじめとする奇想天外なキャラが人気。
※注3『直撃!ドラゴンロック~轟天』
風魔忍法を操る剣轟天が、その技を駆使して数々の強敵に立ち向かっていくおバカな格闘モノ。劇団☆新感線の「ネタもの」シリーズの中でも最高峰の呼び声が高い作品。
作・演出:いのうえひでのり
出演:橋本じゅん、橋本さとし、高田聖子、こぐれ修、逆木圭一郎、ほか
公式サイト
※注4 『レッツゴー!忍法帖』
忍術使いの阿部サダヲに、妖術使いの古田新太が立ちはだかる、「ネタもの」爆笑忍者活劇。なお「ネタもの」とは、同劇団の作品の中でも、ネタ重視、とにかく笑い追求系のもののこと。
作・演出:いのうえひでのり
出演:古田新太、阿部サダヲ、馬渕英里何、入江雅人、高田聖子、橋本じゅん、粟根まこと、ほか
※注5 『星の忍者~THE STRANGE STAR CHILD』
スケールの大きな世界観でケレン味の効いた演出など、笑いや活劇の要素をふんだんに盛り込んだ『いのうえ歌舞伎』を最初に銘打った作品。
作:かずき悠大、演出:いのうえひでのり
出演:白石恭子、内田あんこ、猪上秀徳、古田新太、枯暮修、竹田団吾、ちーぱっぱ小徹、逆木圭一郎、橋本潤、ほか
※注6 『蒼の乱』
渡来衆の女性リーダーと東国の若武者を中心に、新しい国づくりを目指す人々の希望と陰謀が渦巻く物語。天海祐希&松山ケンイチというぜいたく極まりないW主演が話題に。現在ゲキXシネとして梅田ブルク7で上映中。
作:中島かずき、演出:いのうえひでのり
出演:天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、梶原善、森奈みはる、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、平幹二朗、ほか
2015年劇団☆新感線35周年 オールスターチャンピオンまつり 「五右衛門 vs 轟天」
2015年5月27日(水)~6月30日(火)
シアターBRAVA!
2015年劇団☆新感線35周年 オールスターチャンピオンまつり 「五右衛門 vs 轟天」
劇団☆新感線
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