考古資料から「大坂」に迫る展覧会

2015.5.15 18:46

大坂城下を描いた屏風

(写真2枚)

豊臣秀吉が築き、大坂の陣を経て、江戸時代には「天下の台所」と呼ばれる繁栄を誇った近世都市・大坂。その実像に、市中で発掘された考古資料から迫る展覧会が行われています。

展覧会は6章構成ですが、本稿では前半と後半に分けて紹介します。前半は、大坂城築城以前から、豊臣秀吉の時代、徳川幕府による城下町の復興までをフォローしています。出品物は、豊臣家の家紋「五七桐」や徳川家の家紋「三葉葵」の浮彫が入った屋根瓦、武家屋敷と町家から出土した陶磁器、地図、豊臣秀吉の肖像画、大坂城下を描いた屏風など。この前半で、近世大坂の歴史を概観してください。

続く後半は、陶磁器のオンパレードです。織部、志野、瀬戸黒といった茶碗に始まり、国内各地の陶磁器、さらには、中国・朝鮮・東南アジア、ヨーロッパの器までもがずらりと並び、当時の活力に満ちた生活文化が伝わります。鎖国していた江戸時代にも、海外の器がこれほど広範に流入していたとは知りませんでした。当時の大坂はとても国際色豊かな都市だったようです。また、豊臣期から19世紀までの供膳具の変遷を伝える展示も興味深いものがありました。

あらゆる動物の土人形
あらゆる動物の土人形

そして何より驚いたのは、人形、ままごと道具、箱庭道具といった玩具から、灯火具、掘り炬燵枠、湯たんぽ、化粧道具など、生活のあらゆる場面で陶器が用いられていたことです。プラスチック製品が無かった時代、陶器は現在よりもずっと身近で欠かせない道具でした。日本人と陶器の長くて深い関係を知る上でも、本展は意義深いと思います。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

大坂の陣400年 特別展『大坂ー考古学が語る近世都市ー』

期間:2015年4月18日(土)〜6月8日(月)
時間:9:30~17:00(金曜~20:00) ※入館は閉館30分前まで、火曜休
会場:大阪歴史博物館
料金:大人600円、大高生400円
電話:06-6946-5728

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