美食の追求が生み出した魯山人の器

2015.6.26 12:00

会場風景

(写真3枚)

今、和食が世界中で高い評価を受けています。2013年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。そうした現代の和食を語る上で欠かせないのが、書家・篆刻家・陶芸家であり、稀代の食通として知られる北大路魯山人(1883~1959)の存在です。

魯山人は自身が経営する古美術店で古陶磁に料理を盛ってふるまうサービスを行い、大正から昭和初期には[美食倶楽部]と[星岡茶寮]で顧問兼料理長として活躍、従来の和食にはなかった独自のもてなしの世界を切り開きます(それらは現代の和食店にも継承されています)。そして、美食にふさわしい器を求めて本格的に作陶活動を始めました。

《色絵金彩椿文鉢》 1955年 京都国立近代美術館
《色絵金彩椿文鉢》 1955年 京都国立近代美術館

本展では、彼の代表的な陶磁器を中心に、漆器、墨画、資料など135点が展示されています。古陶磁に倣いつつ大胆なアレンジを施した器が並ぶ様は圧巻。なかでも色絵金彩の大鉢や俎板(まないた)皿の作品群は見応えがあります。他にも、尾形乾山へのオマージュというべき絵皿、織部の鉢・桶・花器、備前や信楽の焼き損じに銀彩を施して新たな価値を与えた陶器、加賀の一閑塗の技法を用いた漆器などがあり、どれも見逃せません。

また本展では、京都の料亭(瓢亭、菊乃井、京都吉兆)と現代の写真家(上田義彦、広川泰士、蓮井幹生)がコラボした写真と映像、東京・銀座の鮨店[久兵衛]で板前が握り、接客する様子を真上から捉えた映像も出品。料理、器、接客、空間による総合芸術としての美食の世界を多角的に体感できます。

魯山人は「器は料理の着物」という言葉を残しています。彼が残した名品を堪能しつつ、果てなき美食の道に思いを馳せるのはいかがでしょうか。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

「北大路魯山人の美 和食の天才」

期間:2015年6月19日(金)~8月16日(日)
時間:9:30~17:00(金曜~20:00) ※入館は閉館30分前まで、月曜休(7/20開館、7/21休館)
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町 岡崎公園内)
料金:一般1,400円、大学生1,000円、高校生500円
電話:075-761-9900(テレホンサービス)

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