手塚治虫メモから着想「トイレのピエタ」

野田洋次郎と杉咲花
漫画の神様・手塚治虫が、死の直前に綴ったという12行のアイデアメモから着想を得た映画『トイレのピエタ』が絶賛公開中だ。主演は、メディア露出が少ないことでも知られるRADWIMPSのボーカル&ギター・野田洋次郎。演技初挑戦ながら”生と死にあえぐ男”の生き様をスクリーンに塗り込めた傑作となっている。死を宣告された28歳のフリーター男と、世のすべてに不満をぶつける女子高生の出会いから始まる物語。メガホンを取ったのは、ドキュメンタリーや短編劇映画でこれまで数々の賞を受賞してきた松永大司監督。長編劇映画デビュー作となった本作に懸ける想いを聞いた。
──役者デビューとなる野田洋次郎と実力派若手女優・杉咲花のタッグ。新鮮で完璧でした。
主人公・宏役が洋次郎に決まってから、彼のスケジュールが空くまでの1年間、ヒロイン・真衣のオーディションのために若手30〜40人見せてもらったんです。そして最後の数人に絞ったところで、洋次郎に「見学しない?」と声をかけて、最終オーディション。最初が杉咲花だったんだけど、「ちょっと彼女の横に座って」って洋次郎を引っ張り出して、そのまま「即興やってみよう」って(笑)。最初は「ええっ?」ってなってたけど、紙にそれぞれの設定を書いて始めたら、杉咲が打って出た。その瞬間、洋次郎のスイッチもグワッと入って爆発したから、「この2人いいな」と。
──喧嘩のシーンはどれも印象的でした。もうすぐ死ぬ人に「死んじゃえ」って言うヒロインは衝撃的です。
真衣という存在は、僕の理想像かな。自分が死ぬと考えたとき、腫れ物に触るように扱う人じゃなくて、赤ちゃんみたいに欲求や感情をストレートにぶつけてくる人がそばに居たら、救われるなって。このキャラクターができた背景には、東日本大震災があって、たくさんの人や物が津波にのみ込まれる映像を見ながら、「死ぬということを”絶対的な哀しみ”だけで終わらせたくない」って思ったのがきっかけ。その死が、誰かの生きる力になれば、そこに希望が生まれるなって。
──隣りのベッドのリリー・フランキーさんもまた、シーンの空気を制御する不可欠なピースでした。ラストまで、あんなに活躍するとは(笑)。
こういう感覚は初めてだったんだけど、シナリオ書いてたら、頭の中でリリーさんが喋って動くんですよ。まったく面識ないのに(笑)。で、「横田役はリリーさん以外ありえない」と思って、想いを伝える手紙とシナリオを送りました。最初はただの、エロいカメラおやじって構想で始まったけど、「あ、最後のシーンでこれは使えるな」とか、どんどんアイデアが湧いてきて。一番人間味があって、共感しやすいかもしれない。
──主人公の職業が、高層ビルの窓拭き人という設定も秀逸ですよね。「落ちたら死ぬだけ」と言ってた男が、病床で死の恐怖を目の当たりにする。ちなみに、監督自身も窓拭きのバイトをしていたとか?
8年くらいやってたかな。ある日、新宿でふと空を見上げたら、高層ビルにぶら下がって作業してる人たちが目に飛び込んできてさ、「普通の生活では一生行くことのない場所だなぁ」。「よし、やってみるか!」って(笑)。だから、10年前に手塚治虫さんの原案メモを読んだときから、僕の中では”窓ふきの男”が主人公だった。
──あと、細かい話なんですけど、宏のTシャツが”Jesus”とか”Life”とかプリントされてて、かなり作為的だなと。
ハハハ(笑)。宏は”お気に入りの服をローテーションで着回すタイプ”っていう設定なんだけど、本人は特に意味もなく着てるシャツが、周囲から見ると滑稽に映る。そういう無意識の残酷さっていっぱいあると思うんだよね。”生きる”ことを24時間意識してる人なんていないし、”生きる”って、”世の中”って、実際はかなり残酷。宏の場合は映画としてたくさんの人に見てもらって、知ってもらって、まだ幸せですよね。

──手塚治虫の遺作アイデアを形にするっていうプレッシャーも大きかったのでは?
覚悟は必要だなって。でも、”手塚さんが何を作りたかったか?”は「かも」でしかない。だから、「こう考えたはず」と分かった気になってやるんじゃなくて、手塚さんの残した”浄化と昇天”というテーマを借りて「いかに自分のものとして作れるか」が重要だと思った。気に入らない人もいるかもしれないけど、真っ正面から向き合って、持てるものすべてを出し切って、身を削りました。
予定の時間を過ぎても、熱く熱く語ってくれた松永監督。不器用な人々が死を前に描くのは、絶望なのか、希望なのか?この死に賭けたひとりの男の挑戦は、涙なくしては見ることができない。
取材・写真・文/hime
映画「トイレのピエタ」
2015年6月6日(土)公開
原案:手塚治虫
監督:松永大司
出演:野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、市川紗椰、大竹しのぶ、宮沢りえ、ほか
配給:松竹メディア事業部
2時間00分
大阪ステーションシティシネマほかで上映
©2015「トイレのピエタ」製作委員会
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