関西唯一の戯曲賞、大賞に高橋恵さん

2015.11.30 12:45

左から『ひなの砦』に出演した三田村啓示(空の驛舎)、高橋恵

(写真2枚)

関西で活動する劇作家を対象とした戯曲賞「OMS戯曲賞」。その第22回受賞式&公開選評会が11月29日に行われ、最終ノミネート11作品から、大賞に高橋恵(虚空旅団)『誰故草(たれゆえそう)』、佳作にくるみざわしん(光の領地・虚空旅団)『ひなの砦』が選ばれた。

大賞の『誰故草』は、共同生活を営む女性たちの日常生活から、絶望的な状態の近未来の日本を浮かび上がらせた、現代への警鐘とも言える作品。高橋は「今はとにかく驚いていますが、後から(実感が)ジワジワ来ると思います。こういう作品が出てくるような状況が何とかなってくれたら」と挨拶した。

佳作の『ひなの砦』は、医学生たちが集う部屋を舞台に、現代の医局の病理を赤裸々に描いた群像劇。地方公演中のくるみざわからは、「30歳を過ぎてから芝居を始め、この先どうなるかと思っていたけど、受賞を励みに前に向かいたい」とコメントが届いた。

左から司会の小堀純、OMS戯曲賞選考委員の生田萬、佐藤信、鈴江俊郎、鈴木裕美、渡辺えり
左から司会の小堀純、OMS戯曲賞選考委員の生田萬、佐藤信、鈴江俊郎、鈴木裕美、渡辺えり

選評会では選考委員たちが意見を述べ、『誰故草』は「女性の価値とは何か? ということと、原発や安保法案などで危うくなってきた世の中にマヒしつつある現代の恐ろしさを描いてる」(渡辺えり)などの評価が。一方『ひなの砦』には「医局という世界に上手にアプローチされた上、生きていく上での希望も提示した」(鈴木裕美)という感想が上がった。渡辺が立ち上がって熱く語る場面があったり、統括して「誰も処方箋を持ってない今の時代は、若い世代にはチャレンジの機会。既成のものにとらわれず可能性を広げてほしい」と佐藤がエールを送るなど、例年より熱量が高かった授賞式&選評会。この場に立ち会った作家たちが、来年以降どういう作品を生み出すかに注目だ。

取材・文/吉永美和子

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