映画「杉原千畝」、もうひとつの顔

2015.12.28 18:00

チェリン・グラック監督

(写真3枚)

現在、公開中の映画『杉原千畝 スギハラチウネ』。杉原は大戦前夜のヨーロッパで、ナチから逃れようとする多くのユダヤ人に、日本の通過ヴィザを独断で発給した外交官として知られているが、本作は彼の持つ知られざる「もうひとつの顔」を追った意欲作だ。監督は日本生まれのアメリカ人であり、国際派感覚を身に付けているチェリン・グラック。来阪した監督に話を訊いた。

──ご出身は和歌山だそうですね。

和歌山市で生まれました、父親が和歌山大学で教授をしていましたから。小学校に入る頃に神戸に引っ越して4年生になるまで居たのですが、そのあと考古学者で美術評論家でもあった父にくっついてイランに行きました。3年で帰ってきて神戸のアメリカン・スクールに通い、大学はロスアンジェルスに行きました。

──小学生の頃に考古学者の父親と一緒にイランに行くというのは面白そうですね。

面白かったですよ。発掘にもついていきましたから、インディ・ジョーンズみたいでしたし(笑)。ペルセポリス(イランにある紀元前の世界遺産)で遊んだりもしました。

──映画製作の最初の関わりになる、寺山修司監督の『上海異人娼館』(1980年)に参加されたのは、どういったきっかけだったのですか?

父親が大学の卒業祝いに、当時パン・アメリカン航空が発売していた「80日間世界一周チケット」をくれたんです。それを使って友人と香港に行ったら、サマータイムに切り替わったのに気づかなくて飛行機に乗り遅れてしまい、それで父親に連絡したら、ちょうど香港で寺山さん率いる「天井桟敷」が映画の撮影をしているはずだって教えてくれて、スタッフの森崎偏陸さんに連絡してみたんです。

──「天井桟敷」とは以前からつながりがあったんですね?

高校生のとき、夏休みを利用してイランに行き、そのときちょうど開催されていたシラーズ国際芸術フェスティバルで通訳のバイトをしていたんです。そこに「天井桟敷」が『阿呆船』で参加していましたから。

──いまCD付きで、そのときの模様を記録した本も発売されている、「天井桟敷」と寺山修司の名を世界に知らしめた公演ですね。

そうです。あそこでバイトをしていたんです。それで数年後の香港で偏陸さんに連絡したら、「お前2、3週間時間とれるか」と訊かれて、「何ですか?」って訊き返したら「助監督が必要なんだ」って(笑)。そんな経緯です。

気さくでユーモアあふれるチェリン・グラック監督
気さくでユーモアあふれるチェリン・グラック監督

──面白いですね。そこから映画の道に入られたわけですか?

いや、興味はあったのですが当時僕は俳優志望だったので、ロスに戻ったあと俳優を目指してニューヨークに出たんです。いくつかオーディションを受けたりしているうちに、日本とアメリカでイベントを開催したり、映像作品を製作したりしている会社を紹介されて、そこで働き出して作る方に回っていった感じです。

──その後、『ブラック・レイン』(1989年)や『トランスフォーマー』(2007年)などの大作の助監督をされたわけですね。

ジョディ・フォスター主演の『コンタクト』(1997年)でも助監督をやりました。日本では小日向文世さんと生瀬勝久さん主演の『サイドウェイズ』(2009年)で監督デビューをしましたが、その前後に『ローレライ』(2005年)や『太平洋の奇跡~フォックスと呼ばれた男』(2011年)でアメリカ・ユニットの監督もしています。

映画『杉原千畝 スギハラチウネ』

12月5日(土)公開
監督:チェリン・グラック
出演:唐沢寿明、小雪、ボリス・シッツ、小日向文世、ほか
配給:東宝
2時間19分
TOHOシネマズ梅田ほかで上映

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