武田梨奈「歯が折れてもいい」

2016.1.13 14:16

大阪「第七藝術劇場」での舞台挨拶に登場した武田梨奈

(写真4枚)

山梨県都留市の「八朔祭」で行われる神事「獅子神楽(獅子舞)」を舞台に、父娘と地域の絆を描いた映画『かぐらめ』。母のいまわの際に、神楽を舞うことを優先した父(大杉漣)を許せないでいるヒロイン秋音(武田梨奈)が、父母の愛の真相に気づき、新たな道を歩みはじめるヒューマンストーリー。メガホンをとったのは、都留市出身の奥秋泰男監督。「伝統文化を次世代に繋げたい」という熱い想いから、初監督作と思えぬ層の厚いキャスティングを実現。昨年5月に他界した俳優・今井雅之の遺作ともなった。主演は空手歴14年の黒帯、「セゾン・UCカード」のCMで一躍脚光を浴びた女優・武田梨奈。大阪を訪れた彼女と奥秋監督に話を聞いた。

──「都留市制60周年」を掲げ、生まれ故郷の伝統文化が題材ですが、市から依頼を受けての企画だったのでしょうか?

奥秋監督「いえ、全然頼まれてません(笑)。勝手にやってます。キッカケは、以前、獅子神楽の舞手だった父が数年前に他界したこと。僕が小さい頃は身近だった神楽が、今はなくなっていることにふと気付いたんです。僕は18歳で親元を離れて、その技を継がなかった。それで、僕なりの形で伝承するには、映画を作るしかないと思ったんです」

──武田さんが森で神楽を舞うシーンは、思わず引き込まれてしまうほどの美しさ、荘厳さでした。あの重い獅子舞を、吹替えせずにご自分でやられたとか。

武田「あのシーンは、日照時間の関係でみなさん焦っていて、急きょ『吹替えでやりましょうか』となったんです。でも、どうしても自分自身で舞いたいという強い気持ちがあったので、監督にお話ししたところ、その気持ちに応えてくださいました。獅子舞は、頭の内側の支え棒を口でくわえて、すべての重みを歯で支えて舞うんですけど、歯が折れてもいいというくらい猛練習したので、それだけは絶対に譲れなかった。頭が傾いたり、まだまだダメなところも多いけど、すべてを出し切れたとは思います」

映画『かぐらめ』© 2015 『かぐらめ』 製作委員会
映画『かぐらめ』© 2015 『かぐらめ』 製作委員会

──「本来は男性の舞い」というのもそれを聞くと納得ですが、監督が女優の武田さんをキャスティングした決め手はなんだったんですか?

奥秋監督「武田さんが主演した2作、『ハイキック・ガール』(2009年)でのパワーと身のこなし、『祖谷物語 おくのひと』(2013年)で里山で生きる素朴な少女の佇まいを見て、脈々と受け継がれる日本人の精神みたいなものを表現出来ると感じたんです。年代的に神楽など関わったこともないだろうけど、そういう同年代の女性を演じながら、役と一緒に成長する人だと思った。元々空手に精通している武田さんは、『気を込める』とか、根本的に通じる素養を持ち合わせているんですよね。獅子神楽の指導をお願いした保存会の皆さんも、最初は『本当に出来るの?』って懐疑的でしたけど、次第に『この子なら大丈夫』と変わっていくのを感じました」

映画『かぐらめ』

2016年1月9日(土)〜15日(金)
監督:奥秋泰男
出演:武田梨奈、大杉漣、筒井真理子、ほか
配給:イーライフピクチャーズ
第七藝術劇場で上映

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