中島裕翔主演作、行定勲監督「アイドルって振り切ってるから」
◆「『俳優・中島裕翔』と最初に話し合い」(行定監督)
──監督の作品からみると、『パレード』(2010年)以来ひさびさの青春映画になりますよね。
でも今回、加藤くんがまさに青春の中にいる人だとすると、僕はすでにアウトサイダーなんだな、ってことが自分で判りましたね。周囲の流れや境遇に抗って、とことんのたうち回ったりするのが青春の中にいる人たちで、アウトサイドに行くと、そういう愚かな姿すら美しいと感じ、肯定したいと思う時期に来てるんだなと思って。加藤くんの書いた人物は確かに美しいんだけど、僕はもっと奈落の底に落としたかったんですよね(笑)。だからモノクロになって以降のところが主力になってはいますね。
──まさにその、幕開けから62分のところで画面がモノクロになり、メタ映画に突入するわけですが(笑)、いわば映画内映画であるカラーの前半も「いわゆる青春映画」以上の素晴らしさなんですよね。
『釜山映画祭』で観た日本の知り合いが何人かいて、「行定さん、前半すっごく好きだったんですよ。後半、ちょっとムカつきました」とか、「面白かったんだけど、前半で終わらせるヴァージョンはないんですか?」とか。ないよ、そんなの!(笑)
──あと、菅田将暉くんの演技もやっぱり見逃せない。後半パートなんてほとんど、メフィストフェレス(編集部註:16世紀ドイツのファウスト伝説などに登場する悪魔)です(笑)。
まあ、そんな風になればいいとは思ってましたね。でも、ああいう存在が自分を見出すためには必要だって、常に僕は思っている。悪魔的な敵というか。でも人間ってね、とどのつまり、見えない敵と対峙してるんですよ。特に男の子は。「このラストシーンはどういうこと? こういう終わり方はアリなの?」って言われて。
「いやいや、見えない敵と対峙して、勝手に自分で勝ち負けを決めたんだ」と説明したんですけど。本当にいるわけでもない敵と戦って戦って。あいつが居ると思ったら居なくて、じゃあ、俺も首を吊ろうと思ったらあいつがいて、「あ!なんか見えた」っていう。「なんで俺はこんなことで悩んでいたんだろう、馬鹿野郎」って終わる話なんですけど。
──ある種、「ごっち」と「りばちゃん」はずっとそういう関係だったわけですからね。
でも、そんな関係がいるってことは、すごく重要だろうし、羨ましい。読んでても羨ましいし、作っていても羨ましい。また、この役者たちが本当に親友になっちゃったんですよね。ほとんど同い年で、全く異質なんだけれどすごくリスペクトしあってる。2人とも何でもできるんだけれど、なんでもできる具合が微妙に中島裕翔のほうがスマートで。
がむしゃらに何でもできるのが菅田将暉で。この2人がものすごく共鳴し合ってるんですよ。クールなのはやっぱり中島のほうで、菅田は関西人だっていうのが大きいのかも知れないけどワチャワチャしてる。でも2人とも才能あるなぁと思いますね。
──同窓会シーンからの流れの中に、2人の親密さは見事に表れてますよねえ。まあ、菅田くんの才気は最近爆発しまくってるからいいとして、中島くんの出演歴を眺めると、彼の出てたテレビドラマは結構観てるんですよ。でもイマイチ印象が薄かった。どちらかというとコメディ・リリーフ的な役を強いられてるところがあって。
多分、彼は役者をやってても「Hey!Say!JUMPの中島裕翔」であるっていうことを自分で勝手に守っていたと思うんです。今回はガチで「俳優・中島裕翔」として芝居をやるというから、最初に話し合いを持ちました。まず、「Hey!Say!JUMPをやっているときに恥ずかしくない?」って訊いたんです。そしたら、「そりゃあ恥ずかしいですよ」って。
──なんと。
だから、「でも、恥ずかしげもなくウィンクしたり投げキッスしたりしてるよね。歌ったりアピールしたりするよね?」って言ったら、「いや、まぁ、はい、Hey!Say!JUMPの中島裕翔なんで」って返事してきたとき、「君は自分でありながら、自分ではない人間を普段から演っているんだ。それは役者として一番重要だからね。自分でありながら、自分でない人間を演るっていうのが一番難しいんだよ」って話したら、「そんなハードル高いことやってますかねぇ?」って彼は言ってたんだけど(笑)。
──でも今再び、いちばん面白いのはアイドル映画だったりする時代ですからね。演技者たるべき基礎ができてるというか。
やっぱりね、アイドルって振り切ってるから。中島裕翔にとって初めてのアプローチだから、彼としてはまだ良いのかどうか分からないだろうけど、僕から見るとすごく良かったし、まず存在感がある。要は引き算すればいいだけなんですよね。後半になればなるほど、どんどん引き算させていって、かなり素に近いところまで追い込んでいく。単純な話ね、「もっと声出せ!もっと動け!もっと叫ぶんだよ!」とか。パンチ繰り出すシーンなんか何回やらせたことか。
──菅田くんとか喜びそう(笑)。
菅田なんかもう、やればやるほど狂喜乱舞してきて、「もう俺、血まみれになれてうれしい!」ってのが炸裂して (笑)。「菅田、お前そこもっとさぁ、もっと笑え」「え、もっと笑うんすか? 分かりました!」「相手をなんでもいいから傷つけまくれ。お前の笑顔とか言葉で」って。
(菅田の演技によって)中島裕翔が自然と追い込まれて、心身共にクタクタになるまでやって・・・。助監督に「明日もあるんで、そろそろヤバいです」と言われるまで、時間忘れてやらせたんですね、何度も、何度も。中島くんもすごく焦りというか、「初めて半分自分が出てしまった」みたいな顔してたんですよ。あ、こんなことになるんだ、映画って。
──ラストでカットアウトされた後、「しょうもな」って言葉が残るじゃないですか? あれは誰の声ですか?
あれは中島くんの声ですね。
──僕、どういうわけか菅田くんの声に聞こえたんですよ。あ、またネジれが生まれてメタ性を増して終わるんだと。ま、誤読の愉しみとして聞き流してください(笑)。
そうやった方が面白かったかもなぁ・・・(笑)。でも、そう聞こえたならそう聞こえたでいいんです。
映画『ピンクとグレー』
2016年1月9日(土)公開
原作:加藤シゲアキ(「ピンクとグレー」角川文庫)
監督:行定勲
出演:中島裕翔、菅田将暉、夏帆、岸井ゆきの、柳楽優弥
配給:アスミック・エース
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