名古屋の奇才の舞台 関西で始まる

2016.2.22 15:59

少年王者舘『思い出し未来』 写真/羽鳥直志

(写真5枚)

名古屋の奇才・天野天街が主宰する劇団「少年王者舘」の新作『思い出し未来』が、「アイホール」(兵庫県伊丹市)で2月26日から始まる。

漫画家のしりあがり寿が、代表作を二人芝居にした『真夜中の弥次さん喜多さん』を絶賛するなど、多くの才人たちにリスペクトされる天野。プロジェクションマッピングを演劇に取り入れた先駆者でもあり、舞台というより「宇宙」と言われるほど唯一無二の世界観を誇る。新作はSF的な香りがするタイトルだが、全体を包むムードはむしろレトロでノスタルジックな作品だ。

廃工場のような場所にたたずむ少年の前に、彼の履く靴に執着する少女たちや、現在を悲観する男たちなどの一団が次々に現れ、堂々めぐりのやりとりをしてはフッと消えていく。こんな奇妙なシーンが、同じ動画を何度も再生するように繰り返されるが、それが少しずつ形を変えるに連れ、彼らと少年の関係性がおぼろげに明かされていく。ストーリーではなく、様々なシーンを矢継ぎ早かつランダムに見せていく舞台は、頭で理解しようとすると「無理!」ってなりそう。だけどシュールな絵画の数々を、パラパラ漫画の要領でバーっと見せるようなものと思えば、無心でも楽しめるはず。

少年王者舘『思い出し未来』 写真/羽鳥直志
少年王者舘『思い出し未来』 写真/羽鳥直志

さらに今回は「時間の流れ」という、揺るぎないほど当たり前に思われる現象を疑わざるを得なくなるような言葉やシーンが随所に織り込まれて、それに引っかかったが最後「本当に未来は過去の後に来るの?」など、普段疑問にすらしない物事について考え続けることになりそうだ。

そんな時間感覚や「私」とは何なのかといった哲学的な思考を、強烈にかき回されることは確実。先日名古屋公演を終え、関西公演ではさらにシーンを加えるそう。より厚みを増した「箱庭の中の宇宙」とも言える舞台の到来を、心待ちにしてほしい。

取材・文/吉永美和子 写真/羽鳥直志

少年王者舘『思い出し未来』

作・演出:天野天街
出演:夕沈、虎馬鯨、白鷗文子、雪港、ひのみもく、小林夢二、宮璃アリ、水柊、池田遼、る正和、ほか

日程:2016年2月26日(金)~28日(日)
会場:アイホール(伊丹市伊丹2-4-1)
料金一般3,000円、学生2,000円、(当日はそれぞれ+500円)
電話:070-1624-5884(少年王者舘)

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