小吹隆文撰・週末おでかけアート、3/9〜

2016.3.9 18:10

《富士遠望図・寒霞渓図》(右隻) 1905年 紙本着色 六曲一双 京都国立近代美術館蔵(後期展示)

(写真3枚)

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「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、巨匠と知られざる作家の回顧展、現代陶芸を紹介します。

約30年ぶりに巨匠の傑作が大集結
『生誕180年記念 富岡鉄斎展ー近代への架け橋ー展』
@兵庫県立美術館

近代文人画の巨匠、富岡鉄斎(1836〜1924)の生誕180年を記念して、大回顧展が行われます。

鉄斎は京都の商家に生まれ、幼少時より国学、漢学、仏教等の学問を広く修めました。幕末には勤皇学者として国事に奔走、明治維新後は神官の公職を得て、89歳で亡くなるまで文人画家として活躍しました。その作品は、山水画、人物画、神仙画、風俗画、花卉・鳥獣画など多岐にわたり、奔放な筆致、豊かな色彩感覚、壮大なスケールで知られています。この展覧会では、鉄斎の画業を5つのセクション・約200点の作品で振り返ります。終生学者を以て任じ、文人画家としての理想を追求し続けた富岡鉄斎。彼の日本近代美術史における位置を再考する重要な展覧会です。

前期:3月12日(土)〜4月10日(日) 後期:4月12日(火)〜5月8日(日)
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今後の日本陶芸界を担う逸材たち
滋賀県立陶芸の森開設25周年記念  公募展『マイヤー × 信楽大賞 伝統と革新─日本陶芸の今─』
@滋賀県立陶芸の森  陶芸館

本展は、滋賀県とアメリカ・ミシガン州の姉妹友好都市交流を契機とした公募展です。「滋賀県立陶芸の森」と「フレデリク・マイヤーガーデンズ&スカルプチャーパーク」の日米共同企画で、テーマは新たな転換期にある日本陶芸の未来像を探ること。

大賞 織田阿奴《金銀彩八角陶筥“笹音”》2014年(平成26年) 高13.8cm×幅21.0cm×奥21.0cm
大賞 織田阿奴《金銀彩八角陶筥“笹音”》2014年(平成26年) 高13.8cm×幅21.0cm×奥21.0cm

285点の応募から日米の審査員に選ばれた26点が展示されており、その3分の2以上を20代から40代の作家が占めます。作品は、伝統美を突き詰めたもの(大賞の織田阿奴)、装飾を哲学的な観点から捉えたもの(金賞の秋永邦洋)、釉薬や加飾性を生かして寓話的な表現をするもの(銀賞の大石早矢香)など実に様々。多用な様相を見せる作品を通して、現代陶芸の一断面を紹介、日本の陶芸の未来について考えます。

3月12日(土)〜6月12日(日)
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4つの人型から広がる無限の絵画世界
『宇佐美圭司回顧展 絵画のロゴス』
@和歌山県立近代美術館

大阪府吹田市に生まれ、12歳まで和歌山市で過ごした宇佐美圭司(1940〜2012)。彼は高校卒業と同時に上京し、独学で絵画制作を開始。1963年(昭和38)の初個展で彗星のごとくデビューしました。

宇佐美圭司《遺作・制動(ブレーキ)・大洪水》2012年 油彩、キャンバス 291.0×291.0cm
宇佐美圭司《遺作・制動(ブレーキ)・大洪水》2012年 油彩、キャンバス 291.0×291.0cm

1965年、雑誌『LIFE』で暴動の写真を見つけた彼は、そこから4つの人型を抜き出し、以後そのモチーフを描き続けるという異例の制作活動に乗り出します。たった4つのモチーフで一生描き続けるなんて無理。誰もがそう思うでしょう。しかし宇佐美は、驚異的な画力、構想力、精神力で前人未到の画家人生を全うしてしまうのです。本展は彼の没後、関西で初めて行われる回顧展です。この尋常ならざる画家の存在を、多くの人に知ってほしいと思います。

3月1日(火)〜4月17日(日)
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