小吹隆文撰・おでかけアート、4/27〜

2016.4.27 21:00

冬瓜大香炉 村上盛之 明治39年頃 清水三年坂美術館蔵

(写真3枚)

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「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は近代大阪工芸に近代版画、明治の名陶を紹介します。

歴史に埋もれていた大阪の凄腕職人たちを再評価
『近代大阪職人(アルチザン)図鑑 ーものづくりのものがたりー』
@大阪歴史博物館(大阪市中央区)

明治維新以後、日本の工芸は東京を中心に語られ、海外でも高い評価を受けるようになりました。その一方、大阪の作り手や作品の中には、世に知られないままのものが少なくありません。その状況に一石を投じるのが本展です。

天下茶屋に住み、様々な色を発する金属の組み合わせと彫金技術で花や虫を生き生きと表現した村上盛之、粉浜を拠点に活動し、通常は金属で作られる自在置物(関節が自在に動く動物・昆虫などの置物)を木彫で制作した穐山竹林斎、刀工の月山貞一、漆芸の三好木屑(弥次兵衛)、木彫の山本杏園など、優れた職人たちが残した仕事約170点を紹介し、忘れられていた近代大阪工芸の実力と実像を明らかにします。

2016年4月29日(祝・金)〜6月20日(月)
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驚愕必至! これぞまさしく超絶技巧
『没後100年 宮川香山』
@大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区)

花瓶にへばりつく蟹を見て、剥製と勘違いする人もいるのでは。この超絶技巧の持ち主であり、明治時代に大活躍した陶芸家・宮川香山(1842〜1916)の業績を振り返る回顧展が行われます。

重要文化財 褐釉高浮彫蟹花瓶 1881(明治14)年 高36.5cm、口径39.8×19.5cm、直径16.5×16.3cm 東京国立博物館蔵 TNM Image Archives
重要文化財 褐釉高浮彫蟹花瓶 1881(明治14)年 高36.5cm、口径39.8×19.5cm、直径16.5×16.3cm 東京国立博物館蔵 TNM Image Archives

香山は京都出身の陶芸家ですが、明治政府が外貨獲得の手段として陶磁器の輸出を振興すると、輸出港がある横浜に移住。「真葛焼」と称して、京焼の伝統を踏まえた作品や、画像の蟹のように緻密な装飾を施した作品(高浮彫)を海外の万国博で発表し、絶賛を博しました。後年は作風を一変し、釉薬や中国古陶磁の研究に基づく作品を制作しています。とにかくもう、唖然とするほどの腕前です。彼を知らなかった人はこのチャンスにぜひ、実物をご覧ください。

2016年4月29日(祝・金)〜7月31日(日)
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日本の近代版画を牽引した、抒情的な抽象世界
『恩地孝四郎展 抒情とモダン 版に重なるこころ』
@和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上)

江戸時代の浮世絵をはじめ、日本の版画は長く豊かな歴史を誇ります。そして、近代日本版画を代表する巨匠であり、抽象表現のパイオニアとしても知られているのが恩地孝四郎(1891〜1955)です。

恩地孝四郎《海の見える窓》1940 木版、紙 養清堂画廊
恩地孝四郎《海の見える窓》1940 木版、紙 養清堂画廊

竹久夢二との出会いから画家を志した恩地は、1914年に田中恭吉、藤森静雄と共に版画雑誌『月映』を刊行、同誌で1915年に発表した作品「抒情『あかるい時』」は、日本の抽象表現の先駆けと言われています。その後も様々な版画の可能性を追求し、戦後はもっぱら抽象版画の連作を手掛けました。20年ぶりの本格的な回顧展となる本展では、海外からの里帰り作品を含む版画243点を中心に、油彩、素描、写真、ブックデザインなど約400点もの作品が一堂に並びます。

2016年4月29日(祝・金)〜6月12日(日)
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