岩井俊二監督「人は分かり合えない、だから分かり合いたい」
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「本当の幸せをみすみす捨てていることの絶望ですね」(岩井監督)
──まさに今回の映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』のテーマに直結していますね。
まあ、自分のなかではそうなんです。まったく違う、永遠に分かり合えることなんかない奴らがひとつの丼に盛られて、なんとか手探りで共通項がないか、分かり合えるところはないかと足掻くという。でも、結局そんなのは幻想であって。だけど、そもそも人なんてそんなものだし、分かり合えたからみんなが幸せになれるわけでもなくて。
分かり合えなくても、世代が違っても、人種が違っても、喜怒哀楽のなかでお互い認め合って、まぁ、笑い合うしかないんじゃないのかな、と。実際は物語って、荒ぶる獰猛な、なんかウナギみたいなもんですから、自分ではなかなかコントロールできないですけど、結果的にできあがった作品をみると、そういう自分の心象風景が映りこんでるなあと思いますけどね。
──本当の意味で人と人とは分かり合えない、っていう監督の諦観みたいなものは、『Love Letter』(1995年)であるにしろ『リリィ・シュシュのすべて』(2001年)であるにしろ、幸せにみえる『四月物語』(1998年)や『花とアリス』(2004年)であるにしろ、通底しているような気がします。
昔からそうですね。まあ、分かり合えないから分かり合いたいっていうか。『スタンド・バイ・ミー』(1986年)を観たときに一番違和感を感じたのが、主人公2人が分かり合えてるっていうシチュエーションで。そこだけがすごい違和感があって。子ども同士ってもっと残酷だし、突き放してるし、だからこそ、一瞬一瞬がかけがえのないはずなのにと。
──なるほど。
少年漫画なんかでも仲間とかよく出てきますけど、あんまり自分のなかではフィットしてなくて。ウルトラ兄弟とかね(笑)。怪獣1匹相手に、弱いものいじめになるじゃんか、という。そういうところから『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993年)を作ったというのもありますし、『リリィ・シュシュのすべて』も結局「リリィ・シュシュ」という名前に引き寄せられて集まってきた、実は全然分かり合えていない虫とか蛾みたいな連中の話だったりと、常に意地悪な話ばっか考えるわけですけど(笑)。
──それ、すごくよく分かります(笑)。
仲間を作っていくことは、決して自分たちを強くしていってるわけじゃなくて、弱くしていってるという側面もある。自分の物語作りのなかではたぶん、仲間が増えていくほど人は弱っていく構図が描かれているんだと思うんですよ。
だから、孤立していくほど眠っていた細胞を呼び覚まされて、なんとか自分で生きていこうっていうエネルギーが満ちあふれていく、自立していくっていうようなものになってしまう。まあ、やっぱなんか、孤高なものが好きなのかも知んないですけど。

──この映画が不思議に魅力的なのは、七海の人生は下降線を描いているようで、最後まで観てしまうと決して堕ちていたわけではなかった、と感じられるところです。非常にスペクタクルなひとりの女性の冒険物語といってもいい。とはいえ、Coccoさんが演じる真白が言う「この世界は、ほんとは幸せだらけなんだ」というたまらなくポジティヴにも、どうしようもなく絶望的にも聞こえる世界観がこの映画を統べていると思うんですけども。
あれは真白というより、Coccoさんだったらと書いた台詞だったんですよ。Coccoさんスピリットを自分に憑依させて。本人も「何で私の思ってることが分かるの?」っていう感じだったそうですけど。決して手放しで「幸せだらけだ」と言っているわけではなくて、むしろ絶望的で。
言われて癒やされる言葉じゃないんですよ。(幸せを)受け止めきれない病にみんなが冒されているから、日本が今こうなっているんだっていう。実はみんな空回りしてて、自分たちの本当の幸せをみすみす捨てていることの絶望ですね。
──みすみす捨てている絶望!
そう。やっぱり自分のなかの震災後の影響も大きかったでしょうし、(真白役が)ほかの女優さんだったら、あそこでセリフそのものがなかったかも知れないですね。クライマックスでああいう長台詞っていうのは今までやったことがなかったんですが、無事うまくいったなという実感があります。
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