岩井俊二監督「人は分かり合えない、だから分かり合いたい」
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「この時代においては最高のシミュレーション」(岩井監督)
──3.11の影がより濃く、ダイレクトに感じられるものでは、脚本を書かれたテレビシリーズ『なぞの転校生』(2014年)がありましたね。
あのなかで描かれた、滅んだ人たちがこの世界にやってきて「こんな美しい世界を自分たちが滅ぼしちゃったんだ」と嘆くという、あっちの方がより具体的にフィジカルに震災が描かれているような気がします。僕が企画・脚本・編集・予告をやって、友人の長澤雅彦くんが現場に行くという二人三脚でやったんですけど、終わってみたら自分のなかでもすごく重要な作品になっていて。
わりとあそこから世界観がつながっていて、(『リップヴァン~』は)姉妹的な作品という気がしますね。6時間かけて描き上げたあのドラマが、このひとつ前にあったのは大きかったし、今回の映画が3時間と長くなったのも、あのときの6時間というスケール感が残ってたのかも知れないですね。
──連続ドラマというと、先日からBSスカパー!で、『リップヴァンウィンクルの花嫁 serial edition』が始まりました。全6話ですが、第1話を観たら話の起点からして映画とも小説とも違いますよね。
やっぱ『なぞの転校生』の6時間は、最初はしんどかったんです。まぁ、周りには三谷幸喜さんとか北川悦吏子さんとかいるし、たとえば大河ドラマだと45分×50話っていう驚異的な量なわけで、それでいうと6時間なんてどうってことない話ですが。だけど、そこでやり切れたこともあって。
『リリィ・シュシュ~』も『ヴァンパイア』も、小説ではもっと長いんですけど、今までなら映画にするとき半分諦めるんですよ、潔く。全部描くとダイジェストになっちゃうので、ちゃんと描くべきところを選ぼうってことになる。『リップヴァン~』は宮川(朋之)プロデューサーと相談して、(小説としてまとめた物語を)全部撮っちゃうから、なんか別のアウトプット考えてもらえませんか、って。
──映画作りに対する考え方が、テレビシリーズを手掛けることで、少し変わったということですかね。
これはさすがに2時間とかじゃまるで収まらないわ、と思ったんで。(宮川Pが)「じゃあ、やりましょう」というのもあって、ドラマ枠ってのを考慮してもらって。そしたら「もっと撮ってもいいっすよね」ってなって、さらに書き足したりまでして(笑)。
──第1話から映画版にはないシーンがありますよね。
出だしはそんなに変わってるわけじゃないですけど、後半がお楽しみで。『~serial edition』全体で4時間半あるんですけど、意地悪なことにドラマ版では全部観たことにならないという(笑)。ひとつの話ではあるんですけど、見せ方が違う。しかもWEB用の2時間版も作れという話にもなっちゃった。
その前に、海外では2時間じゃないと展開できないからと作らされた、ある種ギュッと圧縮したような2時間版もあるんですけど、それとも違うものです。解禁されると3時間版もWEBで流れるんですよ。だったら、これはまた(劇場版とは)別のものにしようと、テイストからなにから全然違う編集をして。わざと音楽を使わなかったり、より淡々とさせたり、いろいろ楽しませてもらいましたけどね。
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──そのすべてをひっくるめて、『リップヴァンウィンクルの花嫁』だってことですね(笑)。
お客さんがそこまで求めるか判らないけど、提供する側がいろんなヴァージョンを出すわけだから、もう全部楽しんでくださいと。5年前と比べても映像を見せるプラットフォームが増えすぎて、それぞれ細っていっちゃうんじゃないか、と僕も危機感を持っていて。
でも漫画の世界は、連載読んだ後にコミック買いますからね。それが本来あるべき姿のひとつであって、観客のハートを掴みさえすれば、どんどん潜りこんでくれるんじゃないかと。クリエイター側の想像力が負けちゃうと非常に惨めな結果になっていくので、自分なりにひとまず戦ってみたっていう感じはありますね。
──日本で上映されてる劇場版を観た限りでは、この世界にもっといたい。七海と一緒の時間をずっと過ごしたい、という感情に至らしめる映画なんですよね。映画って登場人物に同化させればそれでいいというものでは全くないですが、この作品のそうした強度は異常なほどです(笑)。ですから、上から見るか横から見るかで、違う視点の別ヴァージョンがあれば、ずっと飽きずに浸っていられるかもしれない。提供されれば提供されるほど、この映画が持つ、完結しているようで完結していない本質が露わになってくるな、と。
そうなんですよ。スピンオフ作品という手もあるんでしょうけど、そっちにカロリーを消費しちゃうよりは、追体験させていくっていうか。どんどん拡大していくプラットフォームとどう向き合うかなので、まずはしっかり映画館に来てもらって、でも我慢できなくて、もう1回映画館に行って。
で、映画も終わっちゃって、もう1回観たいなと。そういう、いろんなところを(作者の側からも)広げていくような、それがこの時代においては最高のシミュレーションかな。そうなってくれるかどうか、ちょっと今は分からないですけれども、願っている感じですね。
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