森村泰昌の自画像作品集大成、大阪で

2016.4.12 17:00

「森村泰昌:自画像の美術史」会場風景

(写真2枚)

現代日本を代表する美術家の一人、森村泰昌。彼の大規模な個展『森村泰昌:自画像の美術史ー「私」と「わたし」が出会うとき』が国立国際美術館(大阪市北区)で行われています。

森村の作品の特徴は、自分自身が絵画の登場人物に扮して作品の中に紛れ込むことです。ほかには、美術家、映画女優、20世紀の偉人に扮した作品もあります。「それってコスプレじゃないの?」と思う人もいるでしょう。確かにそんな一面もあるかもしれません。しかし、彼の作品には美術史への批評的な眼差しが必ず含まれています。また、他人に扮することで自分を振り返る視点、つまり「私とは何者か」を問い続けているのも特徴です。

本展は、森村が作品の登場人物や美術家に扮した「自画像シリーズ」の集大成で、代表作に新作と未発表作を加えた132点が出展されています。若き森村が参加した伝説的な展覧会「ラデカルな意志のスマイル」(1985年)の再現や、長編映像作品(約70分)も注目です。

「森村泰昌:自画 像の美術史」会場風景
「森村泰昌:自画像の美術史」会場風景

ちなみに、サブタイトルにある「私」とは、美術家の森村や作品の一部になった森村を指し、「わたし」はプライベートの森村を指しています。世間には、表向きの自分と素の自分を使い分ける人がいますが、森村もまた芸術活動の中で2つの自分を行き来しているのです。そう考えると、彼の作品が身近に思えてきます。

最後に作家本人がおすすめする本展の鑑賞法を教えましょう。まず15分ほどでざっと展示室を1周し、続いて長編映像作品を見ます。同作では登場人物(=森村)が作品や作家について独白を行っており、作品理解にとても役立ちます。その後再び展示室に戻り、改めて1点1点の作品と向き合うのです。この方法なら美術史に詳しくない人でも、より深く作品を楽しめるでしょう。

文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『森村泰昌:自画像の美術史ー「私」と「わたし」が出会うとき』

期間:2016年4月5日(火)〜6月19日(日) 
時間:10:00〜17:00(金曜〜19:00) ※入場は閉館30分前まで 月曜休 ※5/2開館
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
料金:一般1,300円、大学生900円、高校生500円、中学生以下無料
電話:06-6447-4680(代)
※会期中に関連イベントあり。詳しくは公式サイトにて

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