真風涼帆の異色な草食系ヴァンパイア

2016.5.5 17:25

マントを翻し妖艶に魅せる真風涼帆のヴァンパイア。格好良さが際立つ

(写真7枚)

宝塚歌劇団宙組男役スター・真風涼帆の主演公演『ヴァンパイア・サクセション』が、「梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で5月11日まで上演中だ。

昨年星組から宙組へ組替えとなり、ますます芸域が広がっている真風が、現代のニューヨークに甦ったヴァンパイア、シドニー・アルカードを実にユニークに演じている。黒い髪を少し後ろで束ねた長身の“アル”は、街を歩く女子も振り向く格好良さ。けれど700年の時の流れの中で人を襲うこともなくなり、日光に当たれば鼻血を出す「草食系ヴァンパイア」となっていた。「俺はヴァンパイア界のできそこないだ!」と嘆く姿で笑わせたかと思えば、ハロウィン・パーティーで“本物のヴァンパイア”に扮した彼がセクシーにタンゴを踊ったりと、様々な魅力を振りまく。

さらに少女時代に9.11のテロで両親を失ったルーシーと出会い、次第に恋に落ちる。ルーシーを演じたのは2年前に初舞台を踏んだ第100期生の星風まどか。パンチのあるロックも歌う現代的な女子大生を、心の葛藤を見せながら演じ切っている。

アルカードにネタをもらって小説を書いている、ちゃっかり者のヘルシング(愛月ひかる)とは無二の親友。いいコンビぶりを発揮
アルカードにネタをもらって小説を書いている、ちゃっかり者のヘルシング(愛月ひかる)とは無二の親友。いいコンビぶりを発揮

ヴァンパイア研究家の末裔でアルカードとほのぼのとした友情を見せるヘルシング(愛月ひかる)、天国の派遣社員で派手な衣装も着こなす妖しい魅力のカーミラ(伶美うらら)、ルーシーの元彼で瑞々しい若さが際立つランディ(和希そら)など、多彩なキャラクターが登場。ヴァンパイアの存在に気付いた科学者サザーランド(華形ひかる)との対峙も、大きな見どころだ。

冒頭で爽やかに踊るヴァンパイアのアルカード(真風涼帆)と、歯科医大生のルーシー(星風まどか)。二人の出会いは運命的で…
冒頭で爽やかに踊るヴァンパイアのアルカード(真風涼帆)と、歯科医大生のルーシー(星風まどか)。二人の出会いは運命的で…

誰かを真剣に愛し、愛されれば人間になれる…アルカードは幸せな生と死について、老女マーサ(京 三紗)にも教えられながら、次第に“永遠の命”を捨てて人間になることを望むように。物語には、マーサの心に響く歌をはじめ人生を真剣に見つめる眼差しが溢れ、ヴァンパイアものとしては異色のハートフル・コメディに仕上がっている。現代の社会問題をスパイスに取り入れた台詞や設定、青春映画のような爽やかさと甘酸っぱさ。そんな多様な味わいを、ヒューマンで愛に焦がれるロマンティストな真風ヴァンパイアが最後にグッと締める。

フィナーレはジャジーな雰囲気の男役群舞や、どこかメルヘンなデュエットダンスなど、これまた多彩な魅力を詰め込んだシーンが展開する。かなり盛りだくさんの充実の舞台だ。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇宙組 シアター・ドラマシティ公演 ミュージカル・プレイ『ヴァンパイア・サクセション』

日程:2016年5月3日(火・祝)~11日(水)
※時間は曜日によって異なる
作・演出:石田昌也
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
料金:全席指定7,800円
電話:06-6377-3888

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