小吹隆文撰・おでかけアート、5/11〜

2016.5.11 21:00

©Jun Fujiyasu

(写真3枚)

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「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、新たな視点のポートレイト写真、軽やかな彫刻、そして戦争、テロ、環境破壊などについて考える展覧会を紹介します。

写真ファン必見の若手グループ展
『I Only Have Eyes For You』
@中之島バンクス de sign de>(大阪市北区)

本展のタイトル『I Only Have Eyes For You(あなただけしか見えない)』は、1935年にミュージカル映画で紹介され、その後多くの洋楽歌手がカバーしたスタンダード・ナンバーです。本展では楽曲の「あなた」の部分にちなみ、気鋭の若手写真家たちによるポートレイト作品を紹介します。

出展作家は、浦芝眞史、倉谷卓、藤安淳、横山大介、田中ヒロの5名で、テーマは、セクシュアリティー、家族や故郷との関係、アイデンティティー、コミュニケーション、タイムズスクエアでのスナップなど実に様々。従来のポートレイト写真の枠組みとは異なるアプローチから、それぞれの「あなた」を問いかける試みです。

2016年5月17日(火)〜6月5日(日)
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詩的な響きを感じる石彫作品
『privé(静かな静寂)の中に・・・。 クボタケシ展』
@あさご芸術の森美術館(兵庫県朝来市)

兵庫県朝来市といえば「天空の城」として名高い竹田城跡が有名ですが、そこから約7キロ南にある多々良木ダムのすぐそばに、「あさご芸術の森美術館」があります。豊かな緑に囲まれた同館で、彫刻家・クボタケシの個展が行われます。

クボタケシ《ノンシャランな森…》 Travertino Romano Classico 2016年
クボタケシ《ノンシャランな森…》 Travertino Romano Classico 2016年

クボは大理石を用いた彫刻作品で知られています。彫刻といっても何かの形を作るのではなく、素材と対話し、ほんの少しだけ手を加えるのが特徴です。立方体をくり抜いた空洞、渦巻き模様、幾何学形態、極薄のパーツなどからなる作品を見ていると、彫刻とは思えぬ軽やかさ、透明感を感じるでしょう。「石のエトス(性格、習性、理性的な特徴)」と題され、新作6点が披露される本展で、その豊かな世界を堪能してください。

2016年5月14日(土)〜6月26日(日)
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今がどんな時代かを考える展覧会
『百年の愚行展』
@京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ(京都市左京区)

本展は2冊の書籍、『百年の愚行』(2002年刊行)と『続・百年の愚行』(2014年刊行)を基にした企画で、昨年の東京展に続く開催となります。

9・11米国同時多発テロ事件/©Neville Elder/Corbis/amanaimages
9・11米国同時多発テロ事件/©Neville Elder/Corbis/amanaimages

同書では、20世紀に人類が犯した戦争、暴力、環境破壊、経済格差などの愚行、「9.11」に始まり「3.11」を経てなお拡大する21世紀の愚行が、2冊合わせて150点の写真でまとめられています。本展では『百年の愚行』から原画およそ94点、『続・百年の愚行』は動画で48点の写真を紹介。併せて、ドイツのゴアレーベンで繰り広げられた核廃棄物最終処分場反対運動のポスターを展示しているほか、複数のトークイベントも予定されています。世界各地で戦争やテロが続発し、民主主義の危機が叫ばれている今だからこそ、見ておきたい展覧会です。

2016年4月29日(祝・金)〜5月22日(日)
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