岩田剛典「夢がひとつ叶った瞬間」
「胸キュンポイントがあり過ぎた」(岩田剛典)
──料理というのはこの映画にとって、すごく重要なパーツのひとつですよね。そのあたりはすべてフードコーディネーターの方によるものかと思っていたのですが、かなり特訓されたとか。
はい。手元も全部自分のショットです。
──岩田さんって普段、料理は・・・。
普段はあんまりしないんですよ、正直(笑)。撮影当時は自宅でもいろいろ料理を作ってみたり。まあ、練習しましたね。
──1日で卵5パックを使って練習したとか。
そういう日もありました。やっぱり、すごく料理の腕がたつ役なので、そこは佇まいというか、料理を作る基本の所作を作ってから、撮影現場に入りたいですから。
──それは監督からの要望だったんですか?
いや、それは普通のことというか。こういう役ですから。
──映画のタイトルから想像するに、植物を観察する物語かと思いきや、わりと食べる比重が多かったのが意外でした。
そうですね。野草を食べることを映画にしている作品もあまりないので、そこはこの作品の良さでもありますよね。
──そして、食べるという行為が人にとってどれだけ大切か、それを改めて知ることとなりました。
そうなんですよ。食べる喜び、というか。自然なものを採ってきて、自炊して、それを好きな人と食べるという。そういう日常のなかにある、小さな幸せというものを表現しているので。そういうのを受け取ってもらって、次の日から家族にやさしくしようかな、とか、そういう風に思ってもらえる映画になったと思います。
──なるほど。今回、メガホンをとった三木康一郎監督は、テレビのバラエティ番組やホラー映画などを手掛けてきましたが、こういうタイプの映画は初めてですよね。三木監督はどんなことを話しましたか?
最初に、監督やプロデューサーと一緒に飲みながら話し合って。なに言われたかなぁ、そうだ、「好きになるポイントを決めといて」って言われましたね。それ以外は、「今日会った感じのまま現場に来て」って言われましたね。あとは「主題歌、どうする?」とかも話しましたよ。
──JUJUの『やさしさで溢れるように』、ですね。
会ったときに、「これ、いいと思うんだよ!」って。たぶん、その食事会で案が出たんですよね。『やさしさで溢れるように』の曲の2番の歌詞が、映画の世界観とばっちりはまるから、プロデューサーが「これがいいんじゃない!」って。もうその場で、「これでいきましょうよ」って感じになりましたね。劇中で流れるのが、すごくいいなぁと。
──ちなみに、監督が言われた好きなポイントとは?
樹がさやかのことを好きになるタイミングですね。本を読んでも、そこのヒントが書かれていないので、それを自分のなかで決めといてと。
──そこはネタバレなのであえてお聞きしませんが、岩田さんにとって印象的なシーンを教えてください。
いっぱいありました。カットされちゃったシーンもかなり印象的だったんですが・・・。
──どんなシーンだったんですか?
樹とさやかが雨のなかを相合い傘をして、アップルミントを探しにいくシーンとか。あと、川原にクレソンを取りに行って、そこでお姫様抱っこをして家に帰るシーンもあったんですが、カットされちゃいました(笑)。
──ちょっと寄り添いすぎたのかもしれませんね。
いっぱい胸キュンポイントがあり過ぎたので、山が多いと逆に感動ができないというか。作品としてのまとまりを、バランスよく見てくださって。カットされました、はい(笑)。
──結果としては成功してますよね。そして、原作者の有川さんもカメオ出演されてます。
そうなんですよ。最後のシーンで、出演してくださいましたね。有川先生は、ロケ現場にはほぼ来てくださいましたね。
──お話する機会もありました?
もちろんです。カメラが回っていないところで、いつもお話しさせていただいて。植物の話が多かったですね。このへんの土手はこういう植物があって、とか。さっき、何々がありましたとか。僕らが知らない、野草に関する知識をたくさん持ってらっしゃるので。さやかと花冠を作るシーンでも、有川先生、超手際よく花冠を作っちゃうんですよ。樹というのは、有川先生そのものなんですよね。野草が好きで、野草を採って、それを料理をして。料理もお上手で。だから現場で一番、リアルに樹を感じましたね。
──まさに主人公が原作者の分身というわけですね。
そうだと思いますよ。有川先生も、そうおっしゃってました。
──ちなみに有川先生の方からアドバイスなどはありましたか?
原作モノの映画化って、気負う部分もあるかもしれないけど、本と映画は違う作品だから、映画の樹を岩田くんが演じてくれれば、それはみなさんにとって樹になるからって。だから自由に、思いっきりやってくださいとおっしゃってくださって。原作者の方にそうおっしゃっていただけると、すごく気が楽になりました。
──やはり原作のファンなどに対する、プレッシャーも少なからずあったと?
まあ、そうですね。細かく気にしてる余裕もなかったんですけど。たしかに、原作があると、比べられたりとかあると思うんで。
──有川先生はプレスシートで、「道草の楽しさ美味しさがたくさん伝わってきました。都会の片隅にも、宝物のような『道草』はこっそり生息しています」とコメントされてますが、要するに、普段見過ごしがちなところにも幸せはあるということだと思うのですが。
まさにそうですね。やっぱり、この忙しい現代社会のなかで、忘れがちな、日常生活にある小さな幸せを改めて気づかせてくれる作品だと思います。そういうのに気づける自分でいたいなと思います。
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