森田剛の怪演、吉田恵輔監督「俺はジャニーズでこれをやる」

2016.6.14 20:00
(写真8枚)

「俺はジャニーズを使ってコレをやる」(吉田監督)

──そういう映画ですやん、監督の映画って。今回も前半は『さんかく』とか、あの辺の延長線上にありますよね。後半も実はそうなんですけど。女の子というと、今回非処女ヒロインを演じる佐津川愛美さんがものすごくいいですね、生々しくて。かなり吉田監督の趣味に寄せられてるな、という感じがするのですが(笑)。

もう完全に寄せるしかないなと思って。とにかく今回は芝居が上手い人を呼びたかったんですよ。前回の『銀の匙』では、芝居以外に苦手なことがいっぱいあったんです、動物だとか大自然だとか。今回もアクションがあったんで、とにかく信用できる役者にしたいと思っていて。俺のなかで佐津川さんは、抜群に上手い人なんです。オールマイティというか、どんな役でもこなせる。生々しさが欲しかったんですよ、牝(メス)感というか。俺の「男女あるあるネタ」をぶっこみましたから。

──純な見かけとのギャップで童貞の岡田が愕然とするのも納得できるという(笑)。

でも、海外に行くと幼女にしか見えないらしいですね。向こうは児童ポルノに厳しいじゃないですか。でも、彼女もいい年(27歳)ですからね。

© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

──確かに見かけはそうだし、日本人男子的にはだからこそ岡田に共感できる(笑)。演劇界では佐津川さんも森田さんも今、めちゃくちゃ光ってる存在ですよね。

めちゃくちゃ光ってるし、めちゃくちゃ評価されているんですけど、でも映画と舞台では結構壁があるというか、認識の違いがだいぶあって。「森田剛って、元からすごいよ」って言うしかないんだけど。これでその枠が払われたとは思いますね。でも、「俺がコレやった後、誰がどう使うんだ?」という(笑)。

──その罪は大きいですね(笑)。よくジャニーズがこれを了承したというか。もちろん、器が大きいのは承知してますが、それにしても(笑)。

オナニーシーンとかいろいろ描いちゃったけど、なんか「あ、やるんだ」みたいな。「お尻・・・あ、出すんだ」みたいな。森田くんが女性に、嫌な方のキャーって言われてるのを見るのはすごく面白くて。「お前、人生でこっちのキャーを受けたことないだろう」って。

──試写で途中で出ていった人もいるらしい。

イタリアでも中国人の女性の方が泣きながら出て行ったとか聞きましたね。だいぶ破壊力がある。これをジャニーズでお届けしますっていうのは、すごい罰ゲームみたいだから。森田くんは見たいけど、これは見たくないって。

──そもそもこれを森田剛で、というのは最初からのプランですか?

いや、だいぶ後ですね。今回も脚本を書き上げたのって『銀の匙』のクランクイン前ですから。最初は漫画のイメージで、23歳くらいで探したんです。でもその時から「23~4で森田剛みたいな奴いねぇかなぁ」みたいな話はにしてたんだけど。

──やっぱりそこで名前は出てくるんだ。

だって『ばしゃ馬さん~』のときも、「麻生(久美子)さんより若い、23~4歳の森田剛みたいなのいない?」ってずーっと言ってて。何故そのとき俺が森田剛がいいな、って思ったかって言うと、『学校へ行こう』ってバラエティ番組があったでしょう? あそこでモニターを見てケラケラ笑ってるイメージだったんですね。そしたらたまたま安田(章大)があのときの森田剛みたいな感じだったのでキャスティングしたんですよ。

──結局、今回は「23~4歳の森田剛」からだいぶ変わったキャラになったわけですね。

もう年齢なんて関係ないな、って。今回のキャラクターとしては、もっともいいように(俳優としての森田も)成熟してるからいいんじゃないかなと。

──監督は、サイコキラー的なものは映画としてお好きなんですか?

あ、好きですよ。今回オマージュしてるのは『悪魔のいけにえ』なんです。レザーフェイスにハンマーで殴られて足がびくびく痙攣するのをDVDで駒木根(隆介)くんに見せて、「お前、これより早く動かせるように練習してこい」って(笑)。

© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

──本当にトドメさされる前の肉体的な反応みたいなものが嫌悪感をもよおして、それがエポック・メイキングだったわけですからね。原作にもあるけれど、安藤がチェーンソウを買ってる、ってネタ振りもありますし。・・・それにしても映画ではみんな、原作より酷い目に遭いますよね(笑)。

そこは徹底してやろうと思って。なんか日本映画のヌルいというか、守りに入ってる感が・・・。なんだか壁ドンしか作ってないじゃないか、という感じがあって。

──でも『銀の匙』前後って、そんなオファーは来なかったですか?

ああ、いつも来てますよ。毎回断っちゃいますもん。本当にやりたいもの、自信があるもんじゃないと。「ほかの監督がやったほうがいいんじゃない?」って思うし、特に原作モノだと失礼になっちゃうなと。

──そこは回避して、森田さんでコレやっちゃうという(笑)。

俺はジャニーズを使ってコレをやるからね、というか。本来、これを作るなら、もっと低予算の単館系でちっちゃくやる感じなんだろうけど、それをジャニーズで、しかも手は抜かないからねって。そんな感じで勝負したいと思ったんですよね。

吉田恵輔(よしだ・けいすけ)
1975年5月5日生まれ、埼玉県出身。映画監督、脚本家。東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作、同時に憧れでもあった塚本晋也監督作品で照明などを担当。2007年、『机のなかみ』で映画監督デビュー。2008年には小説『純喫茶磯辺』を発表し、同年自ら映画化。2013年には『ばしゃ馬さんとビッグマウス』と『麦子さんと』と立て続けにオリジナル作品を発表。2014年には初の原作モノ『銀の匙 Silver Spoon』を手掛けた。

映画『ヒメアノ〜ル』
2016年5月28日(土)公開
監督:吉田恵輔
出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、ほか
配給:日活 R15+

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