山下敦弘監督「あの2人は鬼門ですよ」
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「聡みたいなキャラクターは初めて」(山下敦弘監督)
──佐藤泰志さんの小説のダメ男って、裏にあるものが重いですよね。
ほかの小説はちゃんと読んでないんですけれど、でも、ある種のロマンチシズムは感じてて。
───でもそれは、ダメ男のロマンチシズムですよね。自己憐憫みたいなものもたっぷり含まれている。
そうです。西村さんなんかはそこが相当ひねくれて歪んで、本当にグチャグチャなんですけれども、佐藤さんは意外にスッと入れたというか。『苦役列車』を撮った後というのもあったかも知れないですけれど。あと、やっぱりオダギリジョーという俳優が出てきたのが大きかったですね。これが山本浩司(※)だと、全然違う(笑)。
(編集部註:山下監督の初期作品『どんてん生活』『ばかのハコ船』で主演している。数多くの助演で、若くして名脇役としてポジションを確立)
──あはは、そりゃあ確かに別物になる(笑)。
だからキャストの力も大きく左右してるんじゃないかな、と。オダギリさんとは、BeeTVで『午前3時の無法地帯』(2013年)を一緒にやって、『深夜食堂』で何話かやっただけなんですけれども、同世代っていうのもあるし。オダギリさんも僕も相当数の現場を踏んできて、ある時期を過ぎた2人が主演と監督という立場でこうして組んで・・・なんか、意外に素直な感じでやれたなって言うのが僕としてはありました。
──『深夜食堂』といえば、あの渋~い主題歌唄ってた鈴木常吉さんが今回出てますね。
あ、そうですね。俳優デビューしてます(笑)。
──「このオッサン、いい味出してるけど誰?」と観てるあいだずっと思ってた(笑)。職業訓練校の生徒たちはみんな名が売れた俳優ばかりなのに、彼だけが分からない。
それがまず狙いで。そういう人が1人くらいいた方がいいんじゃないかって。

──ところでオダギリさんが演じた主人公の白岩という男、過去に自分がしでかしたことがどういうことだったのか、もうひとつ分かってませんよね。
そうですね、自覚がない男ですよね。
──で、どういう理由があったのか分からないけれど、ちょっと狂気の道に進み始めたような(蒼井優演じる)聡(さとし)にズバッと指摘されることで、白岩もやっと足を踏み出すことになる。なんといっても聡の造形が秀逸で、ま、この原作が収められている短編集の表題作でもある『黄金の服』のヒロイン像と合体されてるのは分かりますが、原作はほとんどヒント程度であって全然別物ですよね。
これはもう、脚本を書いた高田亮さんのオリジナルに近いですね。聡に関してももちろんモチーフにはしているんですけれども、でも完全にオリジナルと言っていいんじゃないかな。
──この映画はやっぱり、聡というキャラクターがいなかったら・・・。
それこそ何も動かない。多分、聡みたいなキャラクターは自分にとって初めてというか。聡がいなかったらいつもの山下映画っていうか(笑)。
──なにも動かないのが面白い、ってところもありますからね、山下映画には。
聡が原作以上に、事態をかき回すキャラクターになったので。ある程度予見はしてたんですが、こうも映画の核になったか、と編集して気づきましたね。白岩と聡が喧嘩するというか、言い合うところがあんなに破壊力のあるシーンになるとは自分でも思ってなくて。あれ、最終日に撮ったんですけれども。
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──え、映画の核みたいなあのシーンが最終日ですか!?
オダギリさんも蒼井さんも僕もボロボロで、家でガラスをバーン!って割るシーンが最終日なんですよ。蒼井さんなんか声が変わっちゃってて、蒼井さんとしても「これアフレコかなぁ」なんて言いながらやってて。本当にボロボロになって撮ったシーンがあれだったんですけれども、編集で観ていちばんスゴいシーンだなと。
──いや、声もそうだけど蒼井優がここまでやるか、ってくらいの。
そうなんですよね、結果的に。たぶん本人も僕も、あそこまで力のあるシーンになるとは気づいてなかったですね、編集まで。
──それにあの室内シーンから、ヨーロピアン・ビスタ(※)のフレームがすごく活きはじめた気がするんです(編集部註:画面サイズのこと、日本ではアメリカン・ビスタが主流)。
近藤くんがこの映画のちょっと前にヨーロピアン・ビスタをやったらしくて。「スゴく良かったからやってみていい?」って言われて、今回やったんですけれど。でも結果的に、この映画の世界観にはちょうど良かったな。函館自体も小さいし、話自体も本当に些細な狭いものなんで。横にちょっと長かったりするとさらに函館の感じは出たとも思うんですけれども、いい意味で圧縮されてキャラクターに焦点が絞られる感じでいいなぁと思って。
映画『オーバーフェンス』
家庭を顧みなかった男・白岩は、妻にも見限られ、東京から故郷の函館に戻ったが、実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。ある日、訓練校の仲間・代島に誘われ、キャバクラに行った白岩。そこで、鳥の動きを真似る風変わりな若いホステス・聡と出会う。どこか危うさをもつ美しい聡に、白岩は強く惹かれていく。
2016年9月17日(土)公開
監督:山下敦弘
出演:オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、ほか
配給:東京テアトル
テアトル梅田ほかで上映
© 2016「オーバー・フェンス」製作委員会
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