小吹隆文撰・週末アート、9/21〜

2016.9.21 23:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、近代女性画家の回顧展と、滋賀で開催の現代アートを紹介。深まる秋のお出かけにどうぞ。

 

美術界の扉を開いた女性画家の先駆者
『メアリー・カサット展』
@京都国立近代美術館(京都市東山区)

19世紀後半のパリで活躍したアメリカ出身の女性画家、メアリー・カサット(1846〜1926)。彼女の画業を紹介する、日本では35年ぶりの回顧展が行われます。

《母の愛撫》 1896年頃 油彩、カンヴァス 38.1×54.0cm フィラデルフィア美術館蔵Courtesy of the Philadelphia Museum of Art,Bequest of Aaron E. Carpenter, 1970
《母の愛撫》 1896年頃 油彩、カンヴァス 38.1×54.0cm フィラデルフィア美術館蔵Courtesy of the Philadelphia Museum of Art,Bequest of Aaron E. Carpenter, 1970

21歳のときに父の反対を押し切ってパリに渡った彼女は、エドガー・ドガとの運命的な出会いから印象派展に参加、明るい色彩と軽やかな筆致で家庭の情景を描きました。特に母子像は多くの共感を呼び、「母子像の画家」として彼女の名を不朽のものにしました。本展で は、カサットの初期から晩年に至る油彩画、パステル画、版画の代表作を展覧。また、ドガやベルト・モリゾなど交流のあった画家の作品、彼女が愛した日本の浮世絵版画などを合わせた約110点が見られます。

2016年9月27日(火)〜12月4日(日)
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歴史ある町並みと現代アートの競演
『BIWAKOビエンナーレ2016 見果てぬ夢』
@近江八幡旧市街10会場(滋賀県近江八幡市)

近世に豊臣秀次が築いた城下町を基礎とし、近江商人の一大拠点として隆盛した近江八幡旧市街。江戸期の建物が軒を連ねるその町並みは、国の重要伝統的建造物保存地区にも指定されています。しかし近年は空き家が目立つようになり、その保存と活用が大きな問題となってきました。

三木サチコ《みえないくらい大きなものと、みえないくらい小さなものについて》 旧中村邸
三木サチコ《みえないくらい大きなものと、みえないくらい小さなものについて》 旧中村邸

2001年から始まった「BIWAKOビエンナーレ」では、長年放置された町家や工場などの古建築を活用し、国内外から集結したアーティストたちが空間を生かした作品展示を繰り広げます。今年の参加アーティストは約60組。風情のある通りや建物を散策しながら現代アート作品を楽しむ絶好の機会です。また、会期中にイベント、ワークショップ、コンサートも多数開催予定です。

2016年9月17日(土)〜11月6日(日)
展覧会情報はこちら

 

アートと遊びの境界を超えた作者たち
『楽園の夢』
@ボーダレスアートミュージアムNO-MA(滋賀県近江八幡市)

上記で紹介した『BIWAKOビエンナーレ』の会場、近江八幡旧市街で、もうひとつ要注目の展覧会が行われています。それが『楽園の夢』です。

デイヴイッド・デュバル=スミス《naka naka nakama》 2010〜2016年 photo/大西暢夫
デイヴイッド・デュバル=スミス《naka naka nakama》 2010〜2016年 photo/大西暢夫

本展では、自らの夢見るようなイメージを具現化している6名の作者を紹介しています。たとえばデイヴィッド・デュバル=スミスは、遊びともアートともつかない自由な境地で制作を続けています。松浦萌は、色とりどりのビニールテープをプレゼントされたことをきっかけに、小さなオブジェを大量に作るようになりました。また、山﨑利幸は、鉛筆の芯を削った小さな彫刻作品を、勤務後の夜や休日に作り続けています。他には、東健次、桜水幸一、岩瀬俊一が出展。創造と生きることの原点について考えさせれらる展覧会です。

2016年9月3日(土)〜11月27日(日)
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