維新派・松本雄吉を偲ぶ 怒涛の上映会

2016.10.30 08:00

「シネ・ヌーヴォ」で企画された『松本雄吉』追悼特集のチラシイメージ

(写真3枚)

10月24日に最終野外公演『アマハラ』を終えたばかりの維新派。その主宰で、今年6月に逝去した松本雄吉の関連映像を集めた上映会『松本雄吉追悼特集』が11月5日から14日間、「シネ・ヌーヴォ」(大阪市西区)で開催される。

内容は大きく分けて、維新派公演の舞台映像、維新派を主題にしたドキュメンタリー、松本個人が出演した舞台&映像作品の3つ。維新派の作品は『十五少年探偵団 ドガジャガドンドン』(87年)から、昨年奈良・曽爾村で上演した『トワイライト』までの代表的な作品12本を上映。ドキュメンタリーは、井筒和幸(当時は和生)監督がメガホンを取った『足乃裏から冥王まで』などの4本。そして出演作品は、主演の野外劇『高丘親王航海記』(演出:天野天街)と、20年近くに渡って松本の創作活動を追った記録映像『特別編集版~松本雄吉さんと歩く』(日本初公開)の2本が上映される。

1979年冬公演(天王寺野外音楽堂)を記録した『足乃裏から冥王まで』(監督:井筒和生)
1979年冬公演(天王寺野外音楽堂)を記録した『足乃裏から冥王まで』(監督:井筒和生)

いずれも必見の映像だが、あえて的を絞るなら『十五少年探偵団~』のような90年代以前の作品と、2010年以降の作品を見比べることをオススメする。役者たちが延々と嘔吐するなどの過激な行為が売りだった昔の作品と、ミニマムな美術と振付によって背後の風景と溶け込むような世界を作っていた近年の作品。とても同じ劇団の、同じ演出家のものとは思えないほど真逆に振り切れた舞台を見れば、松本雄吉が常に時代の最先端の表現を追い続け、そのためには変化をまったく恐れなかった潔さを実感できるだろう。料金は、一般1,400円、学生1,200円、シニア1,100円、ほか。

会場に設営された献花台。松本雄吉を偲び、多くの人が手を合わせた
会場に設営された献花台。松本雄吉を偲び、多くの人が手を合わせた(13日、平城京跡)

新作の取材の時は、まさに新しい遊びを発明した子どものように、いつも楽しげに構想を語っていた松本。そして公演が終わって、私が屋台村で興奮気味に芝居の感想をまくし立てる間も、「そうかそうか」と、いたずらに成功した子どものような笑顔を見せていたことを思い出す。この上映会の会場でも、自分が考えた歴代の「新しい遊び」に観客が目を輝かせている姿を、きっとどこかで眺めてニコニコしていることだろう。

文/吉永美和子

『松本雄吉追悼特集』

日程:2016年11月5日(土)〜18日(金)
会場:シネ・ヌーヴォ(大阪市西区九条1-20-24)
料金:一般1,400円、学生1,200円、シニア1,100円、ほか
電話:06-6582-1416

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