小吹隆文撰・週末アート、11/23〜

2016.11.23 09:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、明治、大正期の日本のアート、工芸やマンガ、アニメなど、知られざるアーティストを紹介。

 

関西にこんな凄いマンガ家がいたとは
『再発見! 小寺鳩甫展』
@伊丹市立美術館(兵庫県伊丹市)

兵庫県伊丹市に居を構え、戦前戦後の関西マンガ界を支えた小寺鳩甫(1889〜1962)の展覧会が「伊丹市立美術館」で開催中です。

屏風《うきよ地獄》伊丹市立美術館所蔵
屏風《うきよ地獄》伊丹市立美術館所蔵

大正から昭和初期に活躍した小寺は、「週刊朝日」や「コドモアサヒ」の連載により生活漫画のジャンルを確立。各種の新聞雑誌に、マンガや挿絵などを寄稿し、紙芝居も熱田十茶名義で手掛けていました。またマンガ誌「大阪パック」では、大正14年から昭和13年まで主筆となり、すべての絵を担当しています。これほどの活躍を見せた小寺ですが、活躍時期が戦前戦後の変動期だったこともあり、現在では知る人ぞ知る存在に甘んじています。彼の業績をたどる日本初の個展となる本展では、代表作や新出作品など約80点を展覧。関西が生んだ巨匠の再評価をアピールします。

2016年11月12日(土)〜12月18日(日)
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本物を超えた!? 究極の技術に感動
『驚きの明治工藝』
@細見美術館(京都市左京区)

超絶技巧を凝らした細密・写実的な表現で、近年人気を博している明治時代の工芸品。その一大コレクションである台湾の「宋培安コレクション」が来日。

《自在龍》 宗義
《自在龍》 宗義

金工、漆工、陶磁、七宝、染織などの名品100件以上を紹介する展覧会が京都で行われています。たとえば「自在置物」とは、鉄や鋼などで生き物を写実的に再現した置物で、胴体や足などが自由に動かせます。本展では全長3メートルもの巨大な龍や、カマキリ、伊勢エビなどが見られます。また、陶芸家・宮川香山が作り上げた本物そっくりのオシドリ、平井汲哉や小林盛良らの根付など、驚異的な作品がズラリ。古の名工が作り上げた究極の工芸を体験する絶好の機会です。なお、本展は全作品が撮影OKです。

2016年11月12日(土)〜12月25日(日)
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日本の近代美術を影で支えた功労者
『動き出す!絵画 ペール北山の夢ー モネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち』
@和歌山県立近代美術館(和歌山県和歌山市)

大正初期に大きな転換点を迎えた日本の美術を、影ながら支えた人物がいました。和歌山市出身の北山清太郎(1888〜1945)です。彼は美術雑誌「現代の洋画」や「現代の美術」を出版して西洋美術の動向を伝えるとともに、岸田劉生や木村荘八ら若い洋画家の活動を、展覧会の開催やカタログ出版などを通して支えました。

ピエール・ボナール《葡萄を持つ女》1911–12年 宮崎県立美術館蔵
ピエール・ボナール《葡萄を持つ女》1911–12年 宮崎県立美術館蔵

その篤い支援に感謝した画家たちは彼のことを、ゴッホら多くの画家を支援した画材商ペール・タンギーになぞらえて「ペール北山」と呼んでいます。本展では、北山の活動を軸に当時の西洋と日本の近代美術を紹介。また、北山は後に日本初のアニメーション作家の1人となりますが、その作品を含む貴重な大正期のアニメも見られます。

2016年11月19日(土)〜2017年1月15日(日)
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