歌舞伎の襲名、実はポケモン進化と同じ

2016.11.30 14:00

右より八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助 写真/荒木大甫

(写真2枚)

大河ドラマをはじめ、映像分野の出演も多い歌舞伎俳優の三代目中村橋之助が、今年10月に八代目中村芝翫(しかん)を襲名。しかし歌舞伎をよく知らないと「なぜ改名でそんなに大騒ぎするの?」「名前って変える必要ある?」など疑問も持つ人も。そこで、古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動する木ノ下裕一さんに、初心者にもわかりやすいよう歌舞伎の襲名について解説してもらった。

古典芸能作品を現代流に演出する劇団「木ノ下歌舞伎」を主宰する木ノ下さん。襲名の盛り上がりをわかりやすく例え、「ポケモン進化の瞬間を、みんなで見届けてお祝いするセレモニーと考えてもらえれば。ポケモンと同じように、歌舞伎役者も経験を積んだら名前が変わってレベルアップするんだ、と」。本来の意味合いは、「日本古来の思想で考えると、名前を継ぐのは命を継ぐのに等しいことなんです。たとえば古事記には、クマソタケルが死ぬ前にヤマトタケルに自分の名を譲るくだりがある。それは自分が死んでもあなたの中で名前と共に生き続ける、ということ。歌舞伎の襲名についても、先祖代々受け継いできた命と芸を背負うことになるわけですから、単に名前を変えるのとは重みが全然違う」とも。

「話の結末や登場人物の正体などのネタバレを知ってる方が楽しめる。見に行く演目のあらすじと、見どころを3つぐらい頭に入れておくと、感動の量が随分変わるはず」と木ノ下さん
「話の結末や登場人物の正体などのネタバレを知ってる方が楽しめる。見に行く演目のあらすじと、見どころを3つぐらい頭に入れておくと、感動の量が随分変わるはず」と木ノ下さん

また「襲名披露は歌舞伎を初めて観るのに最高の機会。襲名する役者の得意な演目がかかるし、豪華な俳優がそろうので、歌舞伎のベストアルバム状態です。これを観ておくと確実にいいモノから入門できます。できれば全部観てほしいですが、1演目のみをお手頃な料金で観られる幕見席(当日販売のみ)もあります」とアドバイス。今回の公演であえて1本を選ぶなら「『勧進帳』ですね。男気にあふれた役が得意な芝翫さんが弁慶を演じるし、歌舞伎のエッセンスが詰まった傑作です」。襲名披露公演は10月・11月の東京「歌舞伎座」にはじまり、約1年にわたって全国で開催。次回は「大阪松竹座」(大阪市中央区)で来年1月2日から。チケットは一等席18000円ほか、専用サイトで12月5日より発売される。

取材・文・写真/吉永美和子

大阪松竹座新築開場二十周年記念『壽初春大歌舞伎』
演目:昼=『吉例寿曽我』『梶原平三誉石切』『新口村』、夜=『鶴亀』『口上』『勧進帳』『雁のたより』
出演:中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助、ほか

日時:2017年1月2日(祝・月)〜26日(木)・11:00〜/16:00〜
会場:大阪松竹座(大阪市中央区道頓堀1-9-19)
料金:1等18000円、2等10000円、3等6000円
電話:06-6214-2211(大阪松竹座)

木ノ下歌舞伎『隅田川・娘道成寺』
監修・補綴:木ノ下裕一
日程:2017年1月26日(木)〜29日(日)
会場:アトリエ劇研(京都市左京区下鴨塚本町1)
料金:前売=一般3000円、U-25 2300円、高校生以下1000円、当日=3300円

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