大阪で、近未来のモノづくり展

2017.2.15 19:00

ニューロウェア「COTOREES」2016年/人の声で働く鳥の形をしたかわいいコンピュータ。まるでスマホのアプリが現実世界に出てきたかのよう

(写真10枚)

初心者にも扱いやすいPCソフトやツールが登場し、オープンイノベーションやクラウドファンディングなど、従来にはなかった社会の仕組みが整いつつある今、これからのモノづくりを示唆する興味深い展覧会が、大阪でおこなわれています。「グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル The Lab.みんなで世界一研究所」(大阪市北区)の『InduSTORY〜私たちの時代のモノづくり展〜』です。

同展はナレッジキャピタルとオーストリア・リンツに拠点を置く世界最高峰のクリエイティブ・文化機関「アルスエレクトロニカ」とのコラボ企画です。7回目となる今回は、「東京大学・山中俊治研究室 プロトタイピング&デザイン・ラボラトリー」と、「ニューロウェア」の2組が出展しています。

東京大学・山中俊治研究室「Apostoroph」2014年/ゆるやかなアーチを描く骨格と2つの回転する関節を持つ構造体。プログラムされたモーターにより、ユニークな動きを見せる
東京大学・山中俊治研究室「Apostoroph」2014年/ゆるやかなアーチを描く骨格と2つの回転する関節を持つ構造体。プログラムされたモーターにより、ユニークな動きを見せる

山中俊治研究室の作品は、工学とデザインを高度に融合させたもの。たとえば作品「Flagella」、「Apostroph」、「READY TO CRAWL」は、まるで生き物のように滑らかな動きで観客を驚かせます。これらは、生命体の器官の動きを参照し、全体の制御をせず、3Dプリントの弱点である造形精度の低さを逆手に取るといった、斬新な発想で作られているのが特徴です。

ニューロウェア「mononome」2014年/「目」は、モノと人とのコミュニケーションツール。食べ過ぎるとしかってくれる冷蔵庫、時間通りに取り出すと喜ぶ薬箱など
ニューロウェア「mononome」2014年/「目」は、モノと人とのコミュニケーションツール。食べ過ぎるとしかってくれる冷蔵庫、時間通りに取り出すと喜ぶ薬箱など

一方、さまざまな分野から集結したメンバーによるプロジェクトチーム、ニューロウェアが見せてくれるのは、センサーに表情豊かな目を付けてモノの感情を可視化した「 mononome」、音声でコミュニケートできるペットのようなコンピュータ「COTOREES」、瞑想の初心者のためのサポートデバイス「Onigillin」です。彼らが提案しているのは、人とモノの新しいコミュニケーションの形。人間と機械が、まるで家族や友人のようにおつきあいできる世界です。

本展の展示物はプロトタイプであり、点数も全8点と決して多くはありません。しかし、それらが示唆するモノづくりのあり方は、大きな刺激と変革に満ちています。ちょっと先の未来をのぞきたい人、自分の価値観を更新したい人に本展をおすすめします。期間は5月7日まで、入場無料。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『InduSTORY〜私たちの時代のモノづくり展〜』

期間:2017年2月9日(木)〜5月7日(日) 
時間:10:00〜21:00 ※2/19休
会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル The Lab.みんなで世界一研究所(大阪市北区大深町3-1)
料金:入場無料
電話:06-6372-6427

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