中田秀夫監督「ロマンポルノに若い作家は必ず刺激される」

2017.3.24 19:00
(写真4枚)

「若い作家は必ず刺激されるでしょう」(中田秀夫)

インターネットでアダルト動画を簡単に楽しめるこの時代。男性は性欲解消が第一目的なので、「絡みのパートだけ」という人が以前より多くなっただろう。3分程度のサンプル動画で事足りる状況。はたまた、ドラマ部分をカットし、特定の女優やシリーズのセックスシーンだけを集めた「総集編もの」が大量生産されているのは、そういった背景もある。しかし感動できるエロスは、登場人物の職業、心情、相手との関係性、シチュエーションなどが深ければ深いほど膨らんでいく。たとえそれが演技(仕込み)であっても、だ。

「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1本『ホワイトリリー』 © 2016 日活
「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1本『ホワイトリリー』 © 2016 日活

「おもしろい絡みというのは、女や男の生き様、人間としてどう生きているのか、それがラブシーンのなかからこぼれ落ちるもの」。そう語るのは、『リング』『仄暗い水の底から』『クロユリ団地』といったホラー映画で人気を集め、『L change the WorLd』『MONSTERZ モンスターズ』など娯楽大作まで手がける中田秀夫監督。1985年、中田監督は日活ロマンポルノに憧れて、「にっかつ撮影所」に入社。小沼勝監督に師事し、1988年のロマンポルノの製作終了まで携わった。

「今の映像作品はパソコンやスマホ向けになって、ショートムービー的な作品も多いです。サイズがどんどん小さくなっています。スマホで観るのが悪いとは全然思いません。でも、大きな画面とは、画面から伝わってくるものの差が出てきます。ロマンポルノの価値はそこにあります。曾根中生監督・荒井晴彦脚本の『新宿乱れ街 いくまで待って』(1977年)、小沼勝監督・大工原正泰脚本の『さすらいの恋人 眩暈』(1978年)など時代を越えてもすごいと思えるものは、街に巣食う人々の様が大画面から訴えかけてきます」(中田監督)

「真摯に作品を受け止める力があれば驚くことが多いです」と中田秀夫監督
「真摯に作品を受け止める力があれば驚くことが多いです」と中田秀夫監督

男も女も、あがいているからこそエロい。喜んだり、悲しんだり、嫉妬したり、そういった感情の交わりが、そのまま肉体の結びつきへ繋がる。お手軽なAVに慣れ切った世代だからこそ、ロマンポルノの濃度は逆に新鮮な興奮を得られるのではないだろうか。

「ロマンポルノは、アーティスティックな作品だけでも、神代辰巳監督、田中登監督、曾根中生監督、加藤彰監督など、すぐに50本くらい挙げられます。映画作りを志す人たちが観れば、目から鱗の作品ばかりです。『ポルノ映画でしょ?』と思っていても、真摯に作品を受け止める力があれば驚くことが多いです。45年の時を経たとは思えません」(中田監督)

「(これはロマンポルノではないのですが)田中登監督・佐治乾脚本の『妖女伝説’88』(1988年)は、現在のようにパソコンで映像が送れるなんて一般的にはあり得ない時代に、ウェブ上に生きる女を描いていました。あと神代辰巳監督・荒井晴彦脚本の『赫い髪の女』(1979年)は、『自分もこういう作品を撮ってみたい』と若い作家は必ず刺激されるでしょう。『映画を作れば、この先にもっと何かがあるんじゃないか』と可能性を抱かせるような作品です」(中田監督)

映画『ホワイトリリー』

2017年3月25日(土)公開
監督:中田秀夫
出演:飛鳥凛、山口香緖里、ほか
配給:日活
R18+
シネ・リーブル梅田ほかで上映

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本