瀬田なつき監督「すれ違いが好きかも」
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「好きなのかもしれない、空間や時間のすれ違い」(瀬田なつき)
──この映画はあと数分で世界初上映となるわけですが、(このインタヴューは3月12日、『大阪アジアン映画祭2017』のクロージング上映の直前に敢行)、実は今年の映画祭には『七月と安生』『姉妹関係』という2本の香港映画でシスターフッドな関係が大きく扱われていたんです。特に前者はメタ的なところも共通する。作られた時期も多分同じなので、汎アジア的に共時的に響き合っているのも映画祭の観客にとっては興味深いはずです。
そうなんですか? 私も観てみたいです。
──ところで、この映画でメインとなる3人の音楽的立場ですが。トキオは音楽をやっているけれど、ラップとかエレクトロとか今のものにしかあまり興味がない。一方、純は音楽的な知識はそんなにないけれど、ギターはそこそこ出来るし、卒論のためもあって60年代文化を調べることは調べている。で、ハルは音楽はあまり判らないけど、ただひとり過去とコンタクトしている。
そうですね、集約するとそういうことになりますね。

──トキオもハルも、オリジナル曲を作った人たちの子孫だけど、そのなかで、ハルだけが過去とチャンネルを合わせられるって設定ですよね。結局、音楽って知識とかテクニックじゃなく、もっと感覚的な共感こそが大事なんだと言ってるようにも思えたんですが。
3人が途中までしか聴けない50年前の曲を再現するわけですけど、それが本当に再現できたかどうかなんて誰も分からない。そう思ったとき、「じゃあ、過去も描こうかな」と。でも、回想やフラッシュバックで入れるのは面白くない。だったら直接、ハルが過去にフラッと行けばいいんじゃないかって(笑)。フラッと行って、なぜか馴染んでしまってて、過去のことを現代に伝えるっていう役割にしたんです。そういうことができる設定でもあるので。永野さんがそういう瞬発力で、うまくフワッと演じてくれたので、アンリアルな設定に良い塩梅で説得力を持たせてくれました。
──キャスティングは、まだ脚本を書き上げてない状態だったそうですね。永野さんは実際に素晴らしいんですが、でも今ほどそんなに露出多くなかったじゃないですか。『俺物語!!』(主演:鈴木亮平)くらいですよね?
そうです、『俺物語!!』。わたしも、ちょうど観ていて。オーディションでお会いしたときに、「演技、演技」っていう役作りでもなく、等身大で自分の延長線上で役を掴む力があるような雰囲気だったので、自分の演出にも合っているのかなと感じてお願いしました。この場面も脚本を読んだら疑問が湧くんじゃないかと思ったんですけど、すごく柔軟な対応で、役のことをすごく考えて、すぐにその瞬間の空に溶けこんで演じてくださって。
──橋本さんの演技性とはまた違いますね。
どうなんでしょう? 橋本さんは、私がどういうものを求めているのかをすごく掴む力があって。演出の意図を一言言ったらすぐに「あ、そういう方向ですね」と、具体的なことを言わなくても、見事に「それです!」を掴んで演じてくれました。純という役を、橋本さんのなかから一緒に探っていく感じでした。
──わりと理知的というか。
そういう印象でした。演じることを考えて、橋本さんだけにしか演じられない純を作っていく印象で、とても真摯で真面目でした。
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──で、この3人以上に主役なのが「井の頭公園」ですよね。タイトルがこれだし、最初に「井の頭公園100年」と出ますし、やはり観る者は「場」を意識すると思うんです。
その場所をなるべく、そのまま撮ろうと。人止めなどはできなかったので、公園の使用者を邪魔せずに。ささやかに「カメラの後ろ側を通ってください」くらいの誘導はしましたが(笑)。照明をがっちり作ったりなどもせずに小さい規模で、街にカメラが入り込む感じでさっと馴染んで撮るようにしました。最後のシーンも、実はいろんな人が写り込んでいます。
──そのシーンはまさに「オープン・ザ・パーク」で、過去の人物と現代の人物がすれ違って交差する。もっともミュージカル的なシーンであるだけでなく、縦の線と横の線が交じり合うのがとても音楽的で。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』もそうですが、監督は「交差」するのがとてもお好きですよね。
そう言われるとそうかもしれません。編集していて「あ、交差!」って(笑)。カットバックなども含めるとずいぶん⋯。
──意識的ではないんですか?
そうですね。すれ違いが好きなのかもしれないです。空間や時間のすれ違い。撮ってるときはそこまで意識しなかったです。ロケーションを立体的に捉えたいと思っているので、自然に縦横の交錯が多くなるのかもしれません。
──2009年の『大阪アジアン映画祭』でも上映された瀬田監督の作品、『彼方からの手紙』や『5windows』もそうですが、監督は街の空間を地図のように把握して撮られるのもお好きですね。
街自体は自由に撮れますし、良い風景をいろんなアングルで、動線が判るように切り取れれば街が立体的に見えてくる。特に今回はそのあたり、位置関係もリアルになるように、地図的に大切に撮りました。
──純が住んでたアパートも実際にあるんですか?
誰も住んでない、結構ぼろぼろなアパートがあって。今後も誰も使わないから屋内を好きにしてもいいということで、美術の方が結構作りこんでくれました。まず過去の60年代のシーンを撮って。で、またそれを洋風にしたり外観を塗り替えて現代のシーンを撮りました。今は綺麗になったままで一応残ってますが、撮影から1年経っているのでそれなりの老朽化が進んでます。まだ、あの場所にあるので、観た人は行っていただけるとまた違う楽しみがあるかもしれません(笑)。
映画『PARKS パークス』
2017年4月22日(土)公開
監督:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽衣、染谷将太、ほか
配給:boid
シネ・リーブル梅田(5/6)、京都シネマ(未定)、神戸国際松竹(5/13)にて上映
© 2017本田プロモーションBAUS
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