注目のDYGL、日本と海外で活動する理由
「自分たちの音楽に、好きな音楽の影響は感じられるのが自然かな」(Akiyama)
──そして2015年に『EP#1』をカセット、ネット・フォーマットでリリースをおこない、同年秋に渡米したんですね。日本で活動するより、海外の方が、自分たちに合ってると感じましたか?
Akiyama「単純に僕たちが『このサウンドは良い』とか『この質感は気持ちがいい』と共感できる人が日本には少なくて。海外でもカッコ良いなと思える人はやはり少数ですが、それでも目指している質感や美意識が近い人が多い分、凄く刺激を受けますね。そもそも自分が音楽を始めるきっかけになったバンドは海外のアーティストばかりですし。いざ海外に行ってみて、アマチュアでもこういう活動の仕方があるんだ、ライブハウスやレコード屋で流れているのはこういう音楽なんだという、小さな感動は沢山ありました。日頃のちょっとした気づきが沢山あって、自分たちの活動に役に立っている実感はありましたね」
──やりやすさもありましたか?
Kachi「ライブハウスやスタジオの機材は日本の方がちゃんと整備されてる場合が多いです。でも、レコーディングスタジオは海外の方が良いですね。エンジニアや機材などトータルで、自分達に合ってる気がします」
──感覚がすぐ伝わるっていう。
Akiyama「そうですね。言葉は通じないけど、音楽的な意味では通じることが多かったです」
──海外のバンドと日本のバンドってどういう違いがあるんでしょうか?
Akiyama「あらゆる点が違いますね。感覚的な問題なので説明するのがすごく難しいんですけど、これは洋楽、これは邦楽と、線引きするのも難しかったりして。バンドによっても違いますが、音の作り方、ライブの見方、楽器の選び方、歌詞の社会性、フレーズのタイプ、客が演奏に求めていること、何をとっても文化的に全く違っているように感じました」
Kachi「僕らが行ったアメリカはライブスペースや機会がとても多かったです。僕らのことなんて全然知らないと思うんですけど、『演奏させてくれ』といきなりコンタクトしてもステージに出させてくれるっていう機会がありましたし、ロサンゼルスに行ったときはホームパーティに呼ばれてライブしたり」
──確かに、海外の方が音楽と身近だなというイメージがあります。生活に根付いているというか。
Akiyama「日本では、どんなにちっちゃいショーでもバンドの登場前には照明落として、SEかけて・・・みたいに、やっぱりエンターテインメント的な風習があると思うんですけど、海外はステージがあればやるっていう人が多くて、仮に客が誰も聴いてなくてもライブが成立しているという感じ。もっとラフ。やっぱそれって、音そのものにもあらわれてるし、価値観の違いが音楽のあり方とか、ステージのあり方とか、どういう人が聴くのか、全部に影響してると思うので。どういう人間がどういう音楽やってるっていうのは必ずリンクしてて、だから日本人の音楽と海外の音楽は違う。逆に日本人的な外国人が音楽をやったら、Jポップになるかもしれないし、僕らはやっぱり映画や音楽も海外のものが好きなので、海外での音楽活動が合ってるんだと思いますね」
──で、DYGLは自分たちのルーツでもあるインディーロックを、今の時代に継承していると。
Akiyama「音楽に対する1番シンプルなモチベーションは、単に好きだからっていうただそれだけなんですけど。それでも何のルーツも無いファッションっぽい音楽よりは、その人が本当に好きでやっているっていうのが感じられる音楽が好きで。音楽が好きだったら、音楽を掘っていくと思うんです。だからその時その場限りの流行り物の中身のない音楽とかには、日本でも海外でも関係なく、ダセえなって思うこともありますし。自分たちが大切にしている音楽、自分たちが好きな音楽を聴いてるときに、受けた感情とか感覚が、自分たちの音楽にもあればいいなと思っているので、好きな音楽の影響は感じられるのが自然かなと。ただそれでも新しい音楽を作りたいとは思いますね。あと次の世代に伝えるとか、下の世代を育てるみたいな押し付けがましいのは好きじゃないので、自由に聴いてもらえたらいいし、ホントに好きでやっていることを、ブレずに続けていけたら良いですね」
──そして、ファーストフルアルバムですが、ストロークスのアルバートがプロデュースするというのにビックリしました。きっかけは何だったのでしょう?
Akiyama「着手するまで時間をかけてきた分、絶対に良いアルバムにしなければいけないと感じていたので、自分たちが持っているビジョンを純度100%で形にしてくれるエンジニアと仕事をしたいと願っていました。そこで自分たちの好きな作品に関わってきたエンジニアの候補を挙げて、1人ずつアタックしていこうと話を進めていました。そのなかの1人にドロウナーズやザ・ビューの作品を手がけたガス・オバーグという方がいたんですが、ひょんなことから僕らが連絡する前に、彼が日本のバンドと仕事をしたがっていると知り合い伝手に耳にし、連絡先を繋いでくださる機会があって。そこで自分たちのデモ音源を送ったら、気に入ってくださったんです」
──びっくりですね。
Akiyama「そしたら彼から、基本的にはアルバート・ハモンドJr.とチームとして動いているので、彼も一緒じゃないと仕事できないと言われて。『アルバート・ハモンドJr.って、あのザ・ストロークスのアルバートか!』とだいぶ驚きましたが、逆にアルバートほど成功をしたクラスの人だと、その人がやりたいようにしかしてもらえないんじゃないか、対等に仕事を出来ずに自分たちが思い描いていたビジョンを台無しにしてしまうんじゃないかと、うれしい反面ちょっと不安もありました。でもこれ以上の話はないだろうし賭けてみようと」
──すごいタイミングと縁ですね。
Akiyama「いざレコーディングをしたら、彼らは2人ともオープンな考え方の持ち主で、無名の僕たちを国籍や知名度、年齢に関わらずアーティストとしてきちんとリスペクトしてくれましたし、そのお陰で僕たちも気持ちよく仕事ができました。彼らが対等に話を聞いてくれるという安心感から、自分たちの考えに自信を持って、はっきり自分たちがどういう意図でこれをやりたいのか、という音楽的なコミュニケーションをとれたのはすごく良かったですね」
──では、自分たちの音楽をちゃんと評価してくれて、良いアレンジをしてくれたって感じですか。
Akiyama「そうですね。彼らが最初日本人のバンドをやりたかったっていうのは、興味本位みたいなところで実際誰でも良かったのかなと思っていたのですが、なんで僕らの仕事を受けてくれたのか、ずっと気になっていたのでレコーディング終盤、時間の余裕が出来た隙を見計らって聞いてみたんです。そしたら『デモ音源を送ってもらって、それが好きだったからだよ。それ以上でもそれ以下でもなくて、音楽が良いから仕事を受けた。それだけだよ』と言われて。それはほんと、音楽そのものを評価してくれたんだいうことで自信になりましたし、何よりDYGLの音楽をきちんと好きで仕事を受けてくれたというのは、正直かなりうれしかったですね」
──好きで影響を受けていたアーティストに認められるって、それは自信になりますよね。やっぱり、アレンジとか、すぐに感覚的な部分は伝わるんですか?
Akiyama「僕がザ・ストロークスを散々聴いていたというのもあって、彼らの美意識に僕は相当感化されてきたというのは否定できないと思うのですが、やっぱりアルバートもこういうフレーズが良いと思うんだっていう不思議なシーンが何回かあったり。逆にアレンジの指示を受けて『そこまで削る?!』みたいな場面も何回かあったんですけど、すごく画期的な切り口で、曲をより良くしてもらったポイントもたくさんあったので、本当に一緒に作ることが出来てよかったと思います」
──手応えを感じるアルバムができましたね。それを携えたツアーが5月からはじまります。日本全国22カ所(関西では大阪、京都、兵庫)、台湾やタイ、インドネシアなどアジア7カ所を回りますが、今後は日本での活動を増やしていくんでしょうか? 夏には『フジロックフェスティバル’17』にも出演しますね。
Akiyama「今年はライブの本数が、これまでにないほど多いですね。自分の音楽史上でも断トツのナンバーワンになりそうです。国内海外共にこれまで関わりがなかったバンドと一緒に演奏する機会も増えると思うので、骨太で純度の高い、素敵なバンドに出会えたら嬉しいです。何より良いライブをして、見たことない土地を旅できるのが楽しみです」
──初日5月13日は大阪「梅田シャングリラ」(※ソールドアウト!)です。
Kachi「楽しみです!」
DYGL『Say Goodbye to Memory Den Tour』
日時:2017年5月13日(土)・18:30〜
会場:梅田シャングリラ
ゲスト:GRMLN
料金:3000円(オールスタンディング、ドリンク代別途要、整理番号順)
電話:06-6535-5569(SMASH WEST)
DYGL『Say Goodbye to Memory Den Tour』
日時:2017年7月6日(木)・18:30〜
会場:京都MOJO
料金:3000円(オールスタンディング、ドリンク代別途要、整理番号順)
電話:0570-200-888(キョードーインフォメーション)
DYGL『Say Goodbye to Memory Den Tour』
日時:2017年7月7日(金)・18:30〜
会場:神戸VARIT.
料金:3000円(オールスタンディング、ドリンク代別途要、整理番号順)
電話:0570-200-888(キョードーインフォメーション)
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