上半期、抜群に面白かった外国映画

2017.8.23 18:00

左からミルクマン斉藤、田辺ユウキ、春岡勇二の座談会メンバー

(写真1枚)

「縦移動で面白い演出ができれば、俄然強くなる」

田辺「乗り物酔いで思い出したんですけど、主人公の一人称視点のみで描いた『ハードコア』。僕、映画館で観たんですけど、初めて酔ってしまって。ものの30分で劇場出たんですよ。ホンマにダメになって。でも、その30分間が抜群に面白かったんですけど。ちょっと吐き気が耐えられなくなって」

斉藤「僕、だいぶ前にYouTubeで映画の元となった短編映像を観ててさ。映画でまったく同じようなシーンがあるから、『ああ、あの短編を長編作品にしたのか!』って途中で気づいて。まあ確かにものすごく酔うよな」

田辺「あれはちょっと酔いますね。酔った、ほんまに酔った。人生で初めて劇場出た(笑)。でも面白いんですよね」

斉藤「アイディアのつるべ打ちやもんな、次から次へと。シューティング・ゲーム的なビジュアルやけど、よく設計されてるのよ。ルートがちゃんと計算されていて、横だけじゃなくて縦にも移動する。それも高速かつ自然に。だから酔うんやけど(笑)」

春岡「それはいいな。だいたい映画って当たり前だけど横長の画面でさ、一番の弱点は縦移動なのよ。その縦移動で面白い演出ができれば、俄然強くなるよ。横移動はみんな出来るわけだから」

斉藤「カーチェイスもスゴイよな。あれを90分とかやるんやから大した力量やと思う、イリヤ・ナイシュラー監督って」

田辺「『ハードコア』はクリエイティブな驚きがありましたね」

春岡「俺はやっぱり、『沈黙−サイレンス−』が今年一番いい映画だったと思う。アカデミー賞でまったく無視されたのが腹立たしいくらい。イッセー尾形とか、助演でエントリーされてもおかしくないのに」

※窪塚洋介インタビュー「今、新たなステージを再認識」

斉藤「ほんまそうですよね。塚本晋也さんもスゴかったけどね。アカデミー賞って基本的に、あんまりマーティン・スコセッシ監督のことよく理解してませんよね。そういうところで頭の悪さがよく出てるんだけど」

春岡「だいたいスコセッシって、俺の認識でいえば、アンチハリウッドのニューヨーカーのひとりだったからさ。『グッドフェローズ』(1990年)でやたらハリウッドが持ち上げられちゃったじゃん。でも、もともとはジョン・カサヴェテス監督(アンチ・ハリウッド、ニューヨーク派の先駆け)以降に出てきた人なんだから」

斉藤「いまだに彼が知性的な映画作りをすると、平気で知らん顔するようなところがあるね」

春岡「だから、ハリウッドと対立するのは当然なんだけど、スコセッシに対して、『グッドフェローズ』で認めてますよって言ったわけじゃん。それなのに、今回の『沈黙−サイレンス−』の無視の仕方はひどかったな」

斉藤「主演のアンドリュー・ガーフィールドも入らんかったしね。まあ、『ハクソー・リッジ』ではノミネートされてるし、確かにすごく良かった!神狂いの不気味さもあって(笑)」

春岡「ホント、『スパイダーマン』から『ハクソー・リッジ』まで何でもやるよなぁ。それにしても、『良心的兵役拒否者』って、あんなのあるんだって思った」

斉藤「日本ではありえへん。ただの非国民や(笑)。ただ、宗教的信念でそういう行動を取っているから、周囲はいじめながらも分かってやろうとする。そこらへんがメル・ギブソン監督らしいところやねんけど」

田辺「メル・ギブソンは監督作で、外しが1本もないですね」

斉藤「『ブレイブ・ハート』の第二次世界大戦版という感じ。飛びまくり、ちぎれまくり」

春岡「実際観てみると、そんなにグロテスクじゃないけどね。飛び散ってるけど」

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