神戸で、版画を超えた横尾流「HANGA」

2017.9.8 12:00

《Lisa Lyon in Izukogen, March 23, 1984-Ⅱ》1986年 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託)

(写真4枚)

美術家、グラフィックデザイナーとして縦横無尽の活躍を続けてきた横尾忠則(1936〜)。彼が手掛けてきた版画作品を、従来の枠を超えた「HANGA」と捉え直し、再定義する展覧会『横尾忠則 HANGA JUNGLE』が「横尾忠則現代美術館」(神戸市灘区)で9月9日からおこなわれます。

横尾が最初に版画を制作したのは1968年です。その契機となったのは、「第6回東京国際版画ビエンナーレ」でポスターとカタログをデザインしたことでした。1970年代前半には楽園や精神世界をテーマにした作品を制作、制作の比重を絵画制作に移す「画家宣言」(1982年)以降も版画制作は続けられました。

《キリコ−その永遠性》1990年 町田市立国際版画美術館蔵
《キリコ−その永遠性》1990年 町田市立国際版画美術館蔵

1984〜86年には女性ボディビルダー、リサ・ライオンをモチーフにした作品を手掛け、1980年代後半には、カラバッジョ、ルーベンス、キリコ、ピカビアなど西洋名画を引用した作品を発表しています。そして1990年代以降は自分の旧作を引用・反復した作品が大きな特徴となっています。

《聖シャンバラ 火其地》1974年 町田市立国際版画美術館蔵

今回の個展では、新作6点を含む横尾忠則の全版画約230点と、これまでポスターと見なされてきた版画作品約20点の計約250点が展示されます。展示方法もユニークで、展示室の壁面を、まるで植物が生い茂るジャングルのように作品で埋め尽くします。横尾作品の今日的意義を検証するのはもちろん、現代版画の未来まで予見する野心的な展覧会です。料金は一般700円ほか。

文/小吹隆文(美術ライター)

「横尾忠則現代美術館」では、先般の台風18号により展示室の一部などに雨漏りが発生、改修工事のため9月28日から1カ月程度休館することになりました(展示作品に被害はありません)。再オープンは10月末を予定しております。今後の詳細は、公式サイトでご確認ください。なお、美術館1階のオープンスタジオとミュージアムショップ、同4階の休憩・閲覧コーナーは、通常通り無料で利用できます。

『兵庫県政150周年先行事業 開館5周年記念展  横尾忠則 HANGA JUNGLE』

期間:2017年9月9日(土)〜12月24日(日)※月曜休 ※9/18・10/9開館、9/19・10/10休館
時間:10:00〜18:00(金・土曜〜20:00)※入場は閉館30分前まで 
会場:横尾忠則現代美術館(神戸市灘区原田通3-8-30)
料金:一般700円、大学生550円、70歳以上350円、高校生以下無料
電話:078-855-5607(総合案内)

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