鉄道芸術祭、京阪電車の駅地下で

2017.12.1 12:00

右奥:立花文穂《川の流れのように》、右手前:立花文穂《レノル》、左奥:仲條正義《IN AND OUT》、左手前:藤丸豊美《網編》

(写真6枚)

京阪電車「なにわ橋駅」地下1階という独特のロケーションで知られる「アートエリアB1」(大阪市北区・切符を買わなくても入れます、念のため)で、『鉄道芸術祭vol.7「 STATION TO STATION」』が、2018年1月21日までおこなわれています。

『鉄道芸術祭』は「アートエリアB1」が2011年度から毎年行っている企画展で、鉄道にまつわる歴史や文化を多角的に捉え直し、クリエイティブな表現として発信することをテーマにしています。7回目となる今回は、アーティスト、グラフィックデザイナーであり、不定期刊行物『球体』の責任編集者である立花文穂をメインアーティストに迎えました。彼のディレクションのもと、19組の作家が参加しています。

左:高山なおみ《ポルトガル日記》、右:荒木信雄×ナイジェルグラフ《キオスク》

会場に入ると、車窓風景の映像が目に入ります。立花がポルトガルの鉄道で撮影したものです。その隣では、荒木信雄がポルトガルのアズレージョ(装飾タイル)の青に着色したキオスクを模した小屋に、ナイジェルグラフがペインティングを施しています。反対側に目をやると、ワタナベケンイチの童画のようなドローイングやワークショップの成果(線=線路をテーマにしたもの)があり、駅前広場でケンカまがいのダンスを繰り広げるcontact Gonzo(コンタクト ゴンゾ)の映像、葛西絵里香の時刻表版画、レコードの溝が線路を連想させる齋藤圭吾の写真、鉄道が登場する文学を原作とする長崎訓子のマンガなどが続きます。

ワタナベケンイチ《でんしゃになってみよう》(ワークショップ)

鉄道をテーマに多様な表現が並んでいる。まずはその事実に驚かされます。同時に見慣れた美術展とは異なる手触りが感じられ、不思議な気持ちになりました。作品を目で追いながら、追憶や寂寥感、旅先で感じる不安と好奇心みたいな感情が、うっすらと脳裏をよぎったのです。それはむしろロードムービーを見ている時の感覚に近いのかもしれません。

立花はこの展覧会を、自身が発行する書籍『球体』の最新号としてディレクションしたそうです。だから見慣れた美術展と違うのか。ひとりで勝手に納得し、ほくそ笑んでしまいました。心のショートトリップを体験したい人に、7回目の『鉄道芸術祭』をおすすめします。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

 

『鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」』

期間:2017年11月10日(金)〜2018年1月21日(日)
時間:12:00~19:00(12/14〜24は21:00まで) 月曜休&12/28~1/3休 ※1/8開館、1/9休館 
会場:アートエリアB1(大阪市北区中之島1-1-1 京阪電車なにわ橋駅地下1F)
料金:無料(一部有料イベントあり)
電話:06-6226-4006(12:00~19:00)

『鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」』

『鉄道芸術祭vol.7 イベントプログラム 電車公演「電車と食堂とコントと」』
日時:12月3日(日)乗車 14:25〜16:08(受付 13:30〜14:00)
出演者:高山なおみ(料理家、文筆家)、テニスコート(コントユニット)
会場:京阪電車貸切電車内
参加費:前売3,000円/当日3,500円(特別切符、限定冊子付)
定員:120名(要事前申込・先着順)

『鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」』

『トーク「車窓の旅 〜ポルトガル編〜」』
日時:12月3日(日)16:30〜18:30
ゲスト:荒木信雄(建築家)、石田千(作家)、高山なおみ(料理家・文筆家)、立花文穂(鉄道芸術祭vol.7 メインアーティスト)
会場:アートエリアB1
参加費:無料
定員:50名程度(当日先着順・入退場自由)

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