アイヌ文化を継承、大阪で木彫家の展覧会

2018.1.8 09:00

藤戸竹喜《ふくろう祭り ヤイタンキエカシ像》2013年 鶴雅リゾート(蔵) 撮影/露口啓二

(写真4枚)

木彫りの熊に代表されるアイヌ工芸から出発し、やがて北海道を代表する木彫家となった藤戸竹喜(ふじとたけき/1934~)の業績を紹介する展覧会が、「国立民族学博物館」(大阪府吹田市)で1月11日からおこなわれます。

藤戸は、旭川を拠点に「熊彫り」を生業としていた父・竹夫の下で、12歳から木彫を始めました。1964年に阿寒湖畔に民芸品店「熊の家」を建てて独立。1969年には依頼を受けて「樹霊観音像」を制作し、正徳寺に納めました。以降、注文制作が増えるようになり、展覧会も、北海道立近代美術館や米国スミソニアン協会国立自然史博物館の企画展に参加するなど、国内外で活躍しています。

藤戸竹喜《樹霊観音像》 1969年 正徳寺蔵 撮影/露口啓二

彼の作品には、熊や狼、ラッコといった北の動物たちをモチーフにしたものと、アイヌ文化を伝承してきた先人たちの姿をテーマにしたものがあります。それらに共通するのは、繊細さと大胆さの共存、生命あるものへの深い愛情、卓抜したイメージ・構想力でしょう。そして他の追随を許さない生気溢れる写実表現が、彼の作品を唯一無二のものにしているのです。

藤戸竹喜《鹿を襲う熊と狼》1978年 藤戸竹喜蔵 撮影/露口啓二

本展では、動物たちの俊敏な動きを捉えた初期作品から、民族の歴史と威厳をモニュメンタルに伝える等身大人物像まで約90点を紹介し、藤戸の約70年にわたる創作活動を振り返ります。一部の作品は触ることもでき、木彫の魅力を手で味わえるのも嬉しい所。北海道まで行かずとも藤戸ワールドを満喫できる貴重な機会です。

文/小吹隆文(美術ライター)

アイヌ工芸品展 『現れよ。森羅の生命(いのち)ー 木彫家 藤戸竹喜の世界』

期間:2018年1月11日(木)〜3月13日(火)※2/15から一部作品入れ替え 
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)水曜休
会場:国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園10-1)
料金:一般420円、大高生250円、中学生以下無料(3/11は本館展示・企画展の無料観覧日)
電話:06-6876-2151

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